通所介護(デイサービス)の採用、どう集めるか。人員基準を満たすスタッフの確保。

通所介護(デイサービス)の採用、どう集めるか。人員基準を満たすスタッフの確保。 福祉事業の開業と運営

通所介護(デイサービス)の開業・運営において、人員基準を満たすスタッフを継続的に確保することは、収益の安定と直結する経営課題です。

介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職全体で「人手が不足している」と答えた事業所の割合は65.3%(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)にのぼります。通所介護(デイサービス)も例外ではなく、特に介護職員・看護職員の採用は年々難しくなっています。

この記事では、通所介護の採用の現状と、各職種ごとの採用ポイント、採用チャネルの選び方、定着・離職防止の考え方を整理します。

通所介護の採用が難しい理由は「人材不足」だけではない

介護業界の人材不足は全般的な問題ですが、通所介護の採用には固有の難しさがあります。

一つは、勤務時間帯の問題です。通所介護のサービス提供時間は朝8〜9時に始まり夕方17〜18時に終わる場合が多く、「朝早く・夕方まで」という勤務形態になります。一方で早朝・夜勤の手当がないため、時給が高い入居系施設(特養・有料老人ホーム)と比べると賃金で見劣りすることがあります。

もう一つは、職種の多様さです。通所介護の人員基準(平成11年厚生省令第37号)では、管理者・生活相談員・看護職員・機能訓練指導員・介護職員の5職種の配置が必要です。このうち看護職員や機能訓練指導員は資格要件が厳しく、候補者の母数が限られています。

通所介護の採用難易度(職種別)
職種 採用難易度 難しい主な理由
介護職員 やや難しい 業界全体の競争が激しい。資格なしで応募可能だが、経験者は取り合いになりやすい
看護職員(看護師・准看護師) 難しい 医療機関との競合。通所介護は夜勤なしが多い点は有利だが、給与水準が医療機関より低いことが多い
機能訓練指導員 難しい〜かなり難しい PT・OT・STは求人が多く人材不足。柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師は非常勤で対応できる場合がある
生活相談員 中程度 社会福祉士・ケアマネ等の資格が必要。都道府県によって要件が異なる点に注意
管理者 内部登用が多い 資格要件は原則なし。開業者本人または経験者が就任することが多い

この表は一般的な傾向の整理です。地域・時期によって採用難易度は変わります。

介護職員の採用:資格の有無より「人柄と定着性」を見る方が多い

通所介護の中核となる介護職員は、資格がなくても応募できます(初任者研修・実務者研修の取得は入社後でも可)。そのため採用のハードルは他職種と比べると低い一方、離職率の高さが課題になりやすい職種です。

介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職員(訪問介護員・介護職員の合計)の離職率は14.9%(令和5年度)です。通所介護単体の離職率の公表はありませんが、業界平均と同程度かそれ以上の離職率が発生している事業所は少なくありません。

介護職員の採用チャネル

介護職員の採用チャネルには以下のものがあります。

介護職員の主な採用チャネルと特徴
チャネル 費用の目安 特徴
ハローワーク 無料 費用がかからない。シニア層・ブランク有の求職者も多い。採用までに時間がかかることがある
介護専門の求人サイト(カイゴジョブ・きらケア等) 1名採用ごとに30〜80万円程度(成功報酬型の場合) 介護職を積極的に探している求職者にリーチできる。費用が高い
Indeed・スタンバイ(求人検索エンジン) 無料掲載から・クリック課金有料あり 広く掲載できる。介護専門サイトより単価が低い場合がある
紹介(現職スタッフからの紹介) 低コスト(紹介料・謝礼を設ける場合は別途) 定着率が高い傾向がある。制度を整えると継続的に機能する
養成校・実習受け入れ 実習受け入れの対応コスト 介護福祉士養成校からの採用。実習経験があるので即戦力になりやすい

採用チャネルの選択は、事業所の規模と採用の緊急度によって変わります。費用をかけず時間をかけられる場合はハローワーク、早急に採用したい場合は専門サイトの利用が現実的です。スタッフからの紹介(リファラル採用)は定着率が高い傾向があり、制度を整えておく価値があります。

看護職員の採用:「夜勤なし・日勤のみ」の強みをアピールする

看護職員(看護師・准看護師)は、通所介護において「健康管理・医療的ケアへの対応」を担います。サービス提供時間帯に1名以上の配置が必要ですが(平成11年厚生省令第37号 第93条第1項第2号)、医療機関との連携で充足できる場合もあります。

看護師・准看護師の有効求人倍率は介護職員より高く、採用競争は激しい状況にあります。ただし通所介護には「夜勤なし・日勤のみ・土日休み」という条件を提示できる場合があり、これは特に育児中・家族介護中の看護師には魅力的な条件になり得ます。

看護職員の採用のポイント

  • 「夜勤なし・日勤帯のみ・定時退社しやすい」という条件を正面から打ち出す
  • 子育て中・家族介護中で夜勤免除を希望している看護師が応募しやすい雰囲気・制度を作る
  • 准看護師(看護師より採用競争が低い)も対象に含める
  • 機能訓練指導員との兼務ができるため、それを込みにした求人で採用しやすくなることがある

看護師専門の派遣会社や求人サイト(ナースプラス・ナースJJ等)への掲載も選択肢の一つですが、費用は高くなります。地域の看護師学校・准看護師学校の卒業生を採用する経路も長期的には有効です。

機能訓練指導員の採用:非常勤・兼務で対応する事業所が多い

機能訓練指導員は、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・一定の実務経験を有するはり師・きゅう師のいずれかで1名以上の配置が必要です(平成11年厚生省令第37号 第93条第1項第3号)。

PT・OT・STの常勤採用は競争が激しく採用コストが高くなりがちです。一方、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師は、整骨院・整体院等で勤務している人材が午前中の時間帯等に非常勤として勤務できる場合があり、通所介護の機能訓練指導員として採用される事例も多くあります。

機能訓練指導員の採用のアプローチ

機能訓練指導員の職種別・採用アプローチ
職種 採用のアプローチ
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師 地域の接骨院・整体院と業務委託・兼務の契約を結ぶ。午前だけ・週2〜3日等のパート・非常勤採用
PT・OT 理学療法士・作業療法士の専門の求人サイト(PTOTSTワーカー等)。費用は高い。地域のリハビリ養成校からの採用も有効
看護師(機能訓練指導員と兼務) 看護職員として採用し機能訓練指導員も兼務してもらう形。基準を満たすかどうかは都道府県の解釈による

機能訓練指導員は非常勤・複数名の組み合わせで基準を満たすことも認められています(常勤換算での配置ではなく「1名以上」が要件)。地域の接骨院・整体院との業務委託契約を結ぶことで安定した確保ができている事業所もあります。

採用コストの現実:1名採用に30〜80万円かかることもある

専門の求人サイト(成功報酬型)を使って介護職員1名を採用した場合、採用コスト(紹介手数料)として30〜80万円程度かかることがあります。看護師・PT・OTではさらに高くなる場合があります。

これに対してスタッフからの紹介制度(リファラル採用)は、紹介した本人への謝礼(1〜3万円程度が多い)で済むことが多く、費用対効果が高い採用方法の一つです。定着率も高い傾向があります。

ハローワークは無料ですが、掲載後の対応に時間がかかること、「ハローワークに来る人」のプロフィールが事業所のニーズと合わない場合があることは押さえておく必要があります。

採用コストの目安比較
採用方法 介護職員1名のコスト目安 特徴
ハローワーク 0円(求人票・対応の人件費除く) 無料。時間がかかることが多い
リファラル採用(スタッフ紹介) 1〜3万円(謝礼) 低コスト・定着率が高い傾向
求人検索エンジン(Indeed等・クリック課金) 1〜10万円程度(応募数次第) 幅広くリーチ可能
介護専門求人サイト(成功報酬型) 30〜80万円程度 介護職を探している人材に直接リーチ
看護師専門求人サイト(成功報酬型) 40〜100万円程度 看護師の採用競争が激しい市場向け

採用コストは求人サイトの契約内容・時期・地域によって大きく異なります。上記は一般的な目安です。

離職を減らすことが、採用コストを下げる最も確実な方法

採用コストを下げる最も確実な方法は、採用した人材が長く続けてくれることです。毎年1〜2名が辞めると、その採用コスト(+1名で30〜80万円)が繰り返し発生します。

通所介護で離職が発生しやすいタイミングは、入社後3〜6か月の「なじめない」時期と、1〜2年目の「成長感がない」時期です。

定着率を上げるための主な取り組み

  • 入社後の丁寧なフォロー:入社後1〜2週間は担当者を決めて細かく状況を確認する。「分からないことを聞きにくい」環境が早期離職につながる
  • 仕事の見通しを示す:研修・習得ステップを明確にして、成長が実感できる仕組みを作る
  • 資格取得支援:初任者研修・実務者研修の費用を事業所が負担する制度は、採用の動機にもなり、定着促進にも効果がある
  • 残業・休日取得の実態を求人に正確に書く:実態とのギャップが入社後の離職の大きな原因になる

介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」によると、スタッフが離職した理由(法人調査)として「職場の人間関係」「賃金の問題」「仕事内容の問題」が上位に挙げられています。職場の雰囲気・賃金水準・業務の明確化は離職防止の三本柱です。

処遇改善加算の取得が採用・定着に直接影響する

介護職員の賃金を上げることが採用力・定着力に直結します。通所介護では処遇改善加算の取得によって、介護職員の賃金を月単位で上乗せする財源を確保できます。

令和6年度の介護報酬改定から、従来の処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算は「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。加算率はサービス・区分によって異なりますが、通所介護のⅠの加算率は基本報酬の14.8%(令和6年4月〜)です。定員20名・稼働率80%の事業所であれば月あたり30〜40万円程度の加算が見込まれ、これを職員の賃金に分配します。

処遇改善加算を取得していない事業所と取得している事業所では、賃金水準に差が出やすく、採用・定着の両面で不利になる可能性があります。新規開業の場合は、開業時から加算の計画・届け出を進めることをお勧めします。

出典:介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」(事業所調査・労働者調査)、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第93条・第95条・第97条。

外国人材の採用も選択肢の一つ

慢性的な人材不足への対応として、外国人介護人材の採用が広がっています。通所介護で外国人スタッフを採用する際の主な在留資格・制度は次のとおりです。

通所介護で働ける外国人材の主な在留資格・制度
制度・在留資格 概要 注意点
介護(在留資格) 介護福祉士国家試験合格が要件。日本語能力が高い人材が多い 採用までのルートが長い
特定技能1号(介護分野) 介護技能・日本語の試験合格または技能実習2号修了が要件 直接雇用・通所介護でも利用可
EPA(経済連携協定) フィリピン・インドネシア・ベトナムからの受け入れ 国の受け入れ調整機関を通す必要がある
技能実習(介護) 2027年に育成就労制度に移行予定 受け入れ事業所に常勤介護士・常勤指導員の配置等の要件あり。通所介護(デイサービス)でも受け入れ可能ですが、入所系施設と同様の体制要件が課されます。所管の都道府県・監理団体に事前に確認が必要

外国人材の採用には、在留資格の手続き・日本語支援・生活支援など、通常の採用に加えた対応が必要です。専門の支援機関や登録支援機関(特定技能)を活用する事業所が多くなっています。

採用の前に、開業の収支計画を確認する

スタッフの採用コスト(求人広告費・紹介手数料)は開業初期の費用に含まれます。また人件費は通所介護の収支の最大の変動要因です。開業前に人件費の目安と稼働率の見通しを試算しておくことは、採用計画の精度を上げることにもつながります。

通所介護(デイサービス)の開業向け収支シミュレーター(https://fufumumu-design.com/tsuusho-keikaku/)では、定員・地域区分・人件費・稼働率などを入力して、開業後の収支の見通しを試算できます(無料)。採用計画・人件費の試算の一つとしてご活用ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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