短期入所のBCP(業務継続計画)研修。自然災害と感染症、2種類の策定義務と減算3%。

短期入所のBCP(業務継続計画)研修。自然災害と感染症、2種類の策定義務と減算3%。 短期入所

短期入所の基準は、業務継続計画(BCP)について、計画の策定・研修・訓練・見直しを義務にしています。研修は国の解釈通知で年1回以上、訓練も年1回以上とされています。BCPは自然災害と感染症の2種類の策定が必要です。この記事では、短期入所のBCP研修・訓練の義務の根拠・回数・内容・未策定減算をまとめました。

BCPの義務の根拠は基準第33条の2、短期入所には第145条で準用される

業務継続計画(BCP)に関する規定は、基準(平成18年厚生労働省令第171号)第33条の2に定められており、短期入所には第145条の準用でこの条文が当てはまります。基準は次の事項を義務にしています。

  • 感染症や非常災害の発生時に事業を継続するための計画(業務継続計画)の策定
  • 計画に従い必要な措置を講じること
  • 定期的な研修・訓練の実施
  • 定期的な計画の見直し

解釈通知(障発第1206001号)は、研修の回数について次のように示しています。「従業者教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.59)

訓練の根拠も解釈通知に示されています。「感染症や災害が発生した場合に実践する支援の演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。」(出典:同上 p.59)

BCPは自然災害・感染症の2種類を策定する

BCPは、自然災害用と感染症用の2種類を策定します。自然災害が起きたときの業務継続と、感染症が流行したときの業務継続は、それぞれ状況が異なるため、別の計画として整備します。

種類 主な想定事象 研修・訓練の回数(解釈通知)
自然災害BCP 地震・洪水・台風・土砂崩れなど 研修 年1回以上・訓練 年1回以上
感染症BCP 新型インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症など 研修 年1回以上・訓練 年1回以上

表は当方が解釈通知の原文を整理したものです。出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)

BCP研修・訓練を合計すると、最低でも年2回(BCP研修1回・BCP訓練1回)が必要です。感染症対策の研修・訓練(年2回以上・別途義務)と合わせると、BCP関連だけで年4回程度の実施が想定されます。

短期入所のBCPでは、宿泊中の利用者の安全確保と家族連絡が核心になる

短期入所は、利用者が施設に宿泊するサービスです。自然災害や感染症が発生したとき、宿泊中の利用者を安全に確保し、家族に連絡し、必要に応じて引き渡しを行う手順が、BCPの中核になります。

厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(令和3年3月)は、事業所が計画に盛り込むべき事項として次のものを挙げています。

  • 緊急連絡先の確保(利用者・家族・行政・医療機関)
  • 緊急時の意思決定者(誰が指揮するか)
  • 事業継続の優先業務(宿泊中利用者の安全確保・服薬管理)
  • 施設の安全確認と避難手順
  • 代替施設・協力施設との連携
  • 復旧計画

感染症BCPでは、宿泊中に利用者が発症した場合の個室隔離・医療機関への連絡・他の利用者への感染拡大防止手順が中心になります。短期入所の利用者は医療的ケアが必要な方もいるため、医療機関との連絡体制を計画に盛り込んでおくことが重要です。

BCPの策定・見直しを「配布のみ」で終わらせると、不適切な事例として指摘される

高知市の集団指導資料は、BCPについて不適切な事例として「業務継続計画の周知(配布や回覧)のみで研修を実施したと認識している。」を挙げています。(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」 p.10)

研修は、配布や回覧で計画を知らせるだけでは「研修を実施した」とは認められません。具体的な状況を想定して職員が考え、手順を確認する機会が必要です。

訓練については、解釈通知が「感染症や災害が発生した場合に実践する支援の演習等」と表現しています。実際の場面を想定した演習(シミュレーション)で、職員が手順を体得することが訓練の目的です。例として次のようなシナリオが考えられます。

  • 夜間に大地震が発生した場面で、宿泊中の利用者の安全確認・避難・家族連絡の手順を確認する
  • 宿泊中の利用者に発熱・嘔吐の症状が出た場面で、医療機関への連絡・隔離・記録の手順を確認する

BCPを策定していないと、所定単位数の3%(施設・居住系)が減算される

業務継続計画を策定し、計画に従い必要な措置を講じていない場合、業務継続計画未策定減算が適用されます。短期入所は施設・居住系に当たり、減算は所定単位数の3%です(訪問・通所系は1%)。

減算の対象は「計画を策定していない」または「計画に従い必要な措置を講じていない」場合です。計画はあっても訓練を実施していない、見直しを行っていないといった状況も、「措置を講じていない」として減算の対象になり得ます。所在地の指定権者の案内で確認してください。

BCP研修で確認すること

短期入所のBCP研修では、次の内容を確認するとよいでしょう。

  • 自然災害BCP・感染症BCPがそれぞれ策定されているか
  • 宿泊中の利用者の安全確保と家族への連絡手順
  • 夜間帯の少人数体制での対応手順と指揮命令系統
  • 医療的ケアが必要な利用者への対応(医療機関との連絡体制)
  • 代替施設・協力施設との事前の取り決め
  • 定期的な見直しの時期と担当者

BCP研修・訓練の記録は、5年間の保管が必要です。記録には実施日時・参加者・実施内容・欠席者への周知方法を残してください。

BCP研修と訓練の記録については、短期入所の研修義務の一覧もあわせて確認してください。感染症の研修・訓練については短期入所の感染症対策研修に詳しくまとめています。

当方の法定研修・訓練キット(短期入所版)では、BCPテーマの研修資料・確認テスト・訓練記録・受講記録を作れます。自然災害BCPと感染症BCPの両方の訓練記録に対応しています。

この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(令和3年3月)、高知市「令和7年度 集団指導資料」の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内もあわせて確認してください。作成:fufumumu_design

この記事の出典

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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