令和6年4月1日から、保育所・認定こども園にもBCP(業務継続計画)の策定と、職員への研修・訓練の実施が義務づけられました。
「BCPという言葉は聞いたことがあるが、何を書けばいいのかわからない」「どこまで作れば基準を満たすのか」という施設は多いです。
この記事では、保育所のBCP義務の根拠・作成すべき内容・研修と訓練の進め方を整理します。
根拠条文は第6条の4
BCP義務の根拠は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第6条の4です。令和6年4月1日施行の改正で追加されました。
条文の要旨は次の3つです。
- 感染症や非常災害が発生した場合でも、必要なサービスを継続的に提供できる体制を整備する
- そのためのBCP(業務継続計画)を策定する
- BCPの内容について、職員への研修と訓練を定期的に実施する
令和6年4月の施行から施設に義務が生じているため、令和6年以降に運営指導を受けた施設では必ず確認されます。「令和6年から義務になったのを知らなかった」という理由は通りません。
感染症BCPと災害BCPの2種類
BCPは「感染症BCP」と「災害BCP」の2種類を作る必要があります。内容が違うため、一体の文書としてまとめることもできますが、それぞれの観点を盛り込む必要があります。
感染症BCP
感染症BCPに盛り込む主な内容は次のとおりです。
- 感染症が発生・流行した場合の連絡体制(保護者・行政・関係機関への通報・報告ルート)
- 職員が大量に欠勤した場合の人員確保の方針(応援要請・応援職員の受入れ手順)
- 感染拡大を防ぐための環境整備・消毒の手順
- 保育の継続ができない場合の対応(休園の判断基準・保護者への連絡手順)
- 感染症BCPの訓練の実施方針(年1回以上)
災害BCP
災害BCPに盛り込む主な内容は次のとおりです。
- 避難場所・避難経路の確認(第6条第2項の非常災害計画と連動させる)
- 被災時の施設継続・再開の判断基準
- ライフライン(電気・水道・ガス)停止時の対応手順
- 職員の安否確認・参集の手順
- 在園中の子どもの保護・引渡し手順
- 必要な備蓄品と定期的な点検方針
- 災害BCPの訓練の実施方針(年1回以上)
BCPの策定で最初にやること
ゼロからBCPを作るのは大変に感じるかもしれませんが、最初のステップを整理すると進めやすくなります。
ステップ1:リスクの洗い出し
その施設がある地域でどんなリスクが高いか(地震・水害・台風・感染症の流行など)を整理します。自治体のハザードマップを参照し、施設が洪水・土砂崩れ・高潮の危険区域に入っているかを確認しておきます。
ステップ2:優先業務の特定
どんな状況でも続けなければならない最低限の業務(子どもの安全確保・保護者への引渡し・食事と薬の管理など)を整理します。これが「継続すべき業務」の軸になります。
ステップ3:体制と手順の文書化
連絡先一覧(保護者・行政・関係機関)、役割分担、代替手段(電話が使えないときの手順など)を文書にまとめます。担当者が変わっても機能するよう、手順書の形にしておくことが重要です。
ステップ4:訓練と見直し
BCPは策定して終わりではなく、年1回以上の訓練(机上訓練でも可)と内容の見直しが求められます。訓練で「実際にはこの手順では動けない」という点が見つかったら、BCPを修正してください。
研修と訓練の進め方
第6条の4は「研修及び訓練を定期的に行わなければならない」と書いています。「研修と訓練の両方」が必要という点に注意が必要です。
研修(年1回以上)
BCPの内容を職員全員に周知する研修を実施します。
- 感染症・災害それぞれのBCPの概要説明
- 緊急時の連絡体制・役割分担の確認
- 避難場所・避難経路の確認
- 必要な備蓄品の場所・種類の確認
新規採用の職員には、採用時にBCPの基本内容を伝えることが望ましいです。
訓練(年1回以上)
机上訓練(シミュレーション形式で手順を確認する)でも、実際に動く訓練でも構いません。感染症のシナリオ(職員が大量欠勤したときにどうするか)や災害のシナリオ(震度6強が来たときの手順)を想定して実施します。
なお、非常災害の避難・消火訓練(月1回以上・第6条第2項)は別に義務がありますが、BCPの訓練と組み合わせて実施することも可能です。「BCPの観点から今月の避難訓練を振り返る」という形でも記録として残せます。
よくある勘違い
「非常災害計画と同じもの」ではない
非常災害計画(第6条第2項の避難・消火の計画)は、施設内での緊急事態への対応を定めるものです。BCPはそれに加えて「被災後も保育を継続するための計画」を含むため、内容が重なる部分はありますが、別のものです。
「大規模な文書でなければいけない」わけではない
BCPは分厚い計画書でなければならないわけではありません。A4で数ページでも、必要な内容が盛り込まれていれば問題ありません。重要なのは実際に使えること(緊急時に迷わず行動できること)です。
「感染症BCPだけ作れば十分」ではない
新型コロナウイルスの流行を受けて感染症BCPを先に整備した施設では、災害BCPが後回しになっているケースがあります。令和6年の改正義務では感染症と災害の両方が対象のため、両方のBCPが必要です。
まとめ
保育所のBCP義務のポイントをまとめます。
- 根拠は第6条の4。令和6年4月1日から義務
- 感染症BCPと災害BCPの2種類が必要
- 研修と訓練を年1回以上実施し、記録を残す
- BCPは策定して終わりではなく、年1回以上の訓練と見直しが必要
- 非常災害計画(第6条第2項)とは別のもの
BCP研修に使える資料・確認テスト・訓練記録様式を用意したツールがあります。ぜひ活用してください。


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