小規模多機能型居宅介護の損益分岐点|登録人数と月収支の試算

小規模多機能型居宅介護の損益分岐点は、登録定員29人に対して登録者14〜18人(稼働率48〜62%)が目安です。月額制の収入構造は収入が安定しやすい反面、登録者数が少ない開業初期には赤字が続きます。全国平均の登録充足率は約70%(令和3年度)で、安定的な黒字経営には25〜29人の登録維持が求められます。

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月額制の収入構造(要介護度別単価)

小規模多機能型居宅介護は、訪問・通い・宿泊をいくら利用しても月の報酬が一定という「月額制」が最大の特徴です。報酬は要介護度別に設定されています(2024年度・同一建物外・標準規模型)。

介護度 基本報酬(月額単位) 月単価(11.05円換算・概算)
要介護1 10,460単位/月 約115,583円/月
要介護2 15,318単位/月 約169,264円/月
要介護3 22,283単位/月 約246,227円/月
要介護4 24,468単位/月 約270,371円/月
要介護5 27,037単位/月 約298,759円/月

出典:厚生労働省「2024年度介護報酬改定における改定事項について」

利用者の要介護度が高いほど収入は増えますが、介護の手間も増えます。全国平均の利用者の要介護度は3前後であることが多く、試算では要介護3を基準とすることが一般的です。

損益分岐点の計算例(登録定員29人・要介護3想定)

月額の固定費を次のように想定します。

費用項目 月額目安
人件費(管理者・介護職10名・看護師含む。社保込み) 330万〜400万円
家賃・光熱費 15万〜25万円
車両費・消耗品等 10万〜15万円
合計固定費 355万〜440万円

1登録者あたりの月収入(要介護3):246,227円

損益分岐点の登録人数:

  • 固定費355万円の場合:355万円 ÷ 246,227円 ≒ 14.4人
  • 固定費440万円の場合:440万円 ÷ 246,227円 ≒ 17.9人

登録定員29人に対する損益分岐率:

  • 14.4人 ÷ 29人 ≒ 約50%
  • 17.9人 ÷ 29人 ≒ 約62%

登録定員の50〜62%に達すると損益分岐する計算です。全国平均の登録充足率(69.8%、令和3年度)はこの水準を上回っており、適切に運営できれば黒字化は可能です。ただし開業直後は登録者が少ないため、安定するまでの期間(目安:6〜18か月)の運転資金確保が重要です。

実際の稼働率と損益の目安

登録定員29人・要介護3・各種加算なしの場合の登録人数別収支試算(固定費380万円として):

登録人数 稼働率 月収入(概算) 収支差
14人 48% 約345万円 約▲35万円
16人 55% 約394万円 約+14万円
20人 69%(全国平均) 約492万円 約+112万円
25人 86% 約616万円 約+236万円
29人(満員) 100% 約714万円 約+334万円

登録者数が全国平均(20人)に達した段階で月100万円超の黒字になります。登録者数の早期獲得が収益改善の最重要課題です。

加算で収支を改善する主な方法

基本報酬に加えて取得できる主な加算です。

  • 認知症加算(Ⅰ):認知症利用者を受け入れ、認知症ケアの研修修了者を配置した場合(月額900単位/人)
  • 若年性認知症利用者受入加算:若年性認知症の方を受け入れた場合(月額800単位/人)
  • 看護職員配置加算(Ⅰ):事業所に常勤の看護師を専従配置した場合(月額12,000単位、事業所単位)
  • サービス提供体制強化加算(Ⅰ):介護職員のうち介護福祉士が一定割合以上(月額1,000単位/人)

たとえば認知症利用者20人に認知症加算(Ⅰ)が算定できれば:20人 × 900単位 × 11.05円 = 約199,000円/月の加算収入が得られます。加算は収支改善の有効な手段ですが、要件を満たす体制整備が先決です。

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小規模多機能型居宅介護以外の福祉・介護事業の収支情報は、福祉事業者向けツール一覧にまとめています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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