認知症の親の年金を家族が受け取るには。後見人なしでできること・できないこと

認知症になった親の年金を家族が受け取るには、どんな手続きが必要か。答えは「原則として家族が勝手に受け取ることはできない」だ。年金は本人に支給されるものであり、代理受給や口座振替の変更には正規の手続きが必要になる。ただし、成年後見人の資格がなくても「代理人届」を活用できる場面もある。認知症後の年金受け取りの仕組みと、口座が使えなくなる前にやっておくことを整理した。

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親の年金は「本人の口座」に振り込まれる

老齢年金・障害年金・遺族年金は、原則として受給者本人の銀行口座(本人名義)に振り込まれる仕組みだ。

問題が起きるのは、認知症が進んで口座が使えなくなった(または口座凍結が起きた)ときだ。口座が使えなくなると、口座には年金が入り続けているのに引き出せないという状況が生まれる。

「家族が代わりに受け取ればいい」と思う人も多いが、年金の口座振替先を家族名義の口座に変更することは、原則として本人の手続きが必要だ(後述の例外あり)。

成年後見人がいれば年金の管理は可能

成年後見人は本人の財産管理権限を持つため、本人名義の口座から年金を引き出すことができる。法定後見が開始すれば、後見人が介護費用・生活費等に充てる目的で年金を管理できる。

法定後見の申立てから開始までは通常2〜4か月(最高裁判所統計・令和5年)かかるため、今すぐ年金を管理したい場合はすでに遅い可能性がある。早めに準備を進めることが重要だ。

成年後見人なしで家族が年金を引き出す方法

成年後見人がいない場合に、家族が合法的に年金口座から資金を引き出す主な方法は次の通りだ。

  1. 代理人カード(家族カード)の活用:本人が判断能力を持っている間に銀行の代理人カードを取得しておけば、家族がATMから引き出せる。認知症と診断されてすぐに申請するのが最善だ
  2. 銀行窓口での「代理手続き」交渉:一部の金融機関では、成年後見人がいなくても家族による代理引き出しに対応している(福祉的観点から)。ただし金融機関によって対応が大きく異なる
  3. 法定後見の審判前の「保全処分」:後見申立て中に緊急の資金需要がある場合、家庭裁判所に保全処分を申立てることができる(別途費用と手続きが必要)

年金の受取口座を変更する手続き

年金の受取口座を変更するには、本人が「年金受取口座変更届」を日本年金機構(または各共済組合)に提出する必要がある。

本人が手続きできない場合の対応として、成年後見人が代理で手続きできる。成年後見人は「後見登記事項証明書」(法務局で取得)を持参して年金事務所で手続きする。

成年後見人がいない段階で口座変更したい場合、日本年金機構の窓口(年金事務所)に相談する。「認知症で本人が手続きできない」と伝えると、必要な書類や対応方法を案内してもらえることがある。

年金の振込先が「凍結口座」になっているときの対処

本人が亡くなったり、金融機関が口座凍結をした場合、年金が凍結口座に振り込まれ続けることがある。

亡くなった後の年金の受け取りについては、亡くなった月の年金まで受け取る権利があるが、口座が凍結されると引き出せない。この場合は日本年金機構への未支給年金の請求手続き(法定相続人が行う)と、金融機関への相続手続きを並行して進める。

生存中に口座が凍結されている場合は、後見人を通じて凍結解除の手続きをとるか、年金の振込先口座を別の口座に変更する手続き(後見人が対応)を行う。

介護施設に入所した後の年金管理

施設入所後、施設費用の支払いに充てるために「施設の指定口座に年金を振り込む」という取り決めをする場合がある。これは施設と家族(または後見人)の合意によって行うが、法律上は「本人の財産は本人のもの」であるため、後見人の監督下で適切に管理される必要がある。

施設側に「後見申立てを進めている」ことを伝えると、後見開始までの費用支払いについて柔軟に対応してもらえることが多い。

この記事のまとめ

  • 年金は原則として本人口座に振り込まれ、家族が勝手に受け取ることはできない
  • 成年後見人が選任されれば年金の管理・引き出しが正式にできる
  • 成年後見人がいない場合は「代理人カード」「銀行の代理対応」「保全処分」を検討する
  • 口座変更は日本年金機構への届出が必要で、後見人が代理で手続きできる
  • 施設入所後の年金管理は後見人の監督のもとで行う

出典:国民年金法・厚生年金保険法(年金の受給権)、日本年金機構「年金受取口座の変更手続き」、家事事件手続法(後見申立て関係)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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