後見人の報酬はいくらか。財産規模別の目安と累計コスト

法定後見が始まると、後見人への報酬が月単位で発生し、本人が亡くなるまで続く。「月いくらかかるのか」「合計でどれくらいになるのか」は、成年後見を検討する上で欠かせない情報だ。最高裁判所が「目安」を示しており、財産規模によって月2万円〜6万円程度が標準とされている。財産1,000万円の人が5年間後見を受けると、後見人報酬だけで120万円〜240万円を超える計算になる。これを「高いか安いか」ではなく「何を守るためのコストか」で判断することが大切だ。

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後見人報酬は最高裁判所が「目安」を出している

成年後見人の報酬額は、家庭裁判所が「後見人報酬付与の申立て」に基づいて決定する。法律上、後見人は報酬を受けることができると定められており(民法第862条)、金額は本人の財産状況・後見人の活動量・後見事務の複雑さなどを考慮して裁判官が判断する。

東京家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」(2016年)は、全国の家庭裁判所でも参考にされており、実務上の基準として広く使われている。

財産規模別の月額報酬の目安

管理財産額(預貯金・有価証券等) 月額報酬の目安 5年間の累計(概算)
1,000万円未満 月2万円程度 120万円程度
1,000万円〜5,000万円 月3〜4万円程度 180万円〜240万円程度
5,000万円超 月5〜6万円程度 300万円〜360万円程度

上記は「基本報酬」の目安であり、身上保護に特別の行為(施設入所手続き・不動産売却等)があった場合には「付加報酬」が加算されることがある。付加報酬は基本報酬の50%を上限とすることが多い。

不動産(自宅・賃貸物件等)は「管理財産額」に含まれないが、不動産の売却や賃貸収入の管理が生じた場合に付加報酬の対象になることがある。

後見人が選任されるまでの申立費用

後見人報酬とは別に、申立ての段階でも費用がかかる。

  • 収入印紙(申立手数料):800円
  • 登記申請費用:2,600円
  • 診断書の取得費用:5,000円〜1万円程度(医療機関による)
  • 鑑定費用:3万円〜10万円(必要な場合のみ。全体の約10%程度)
  • 司法書士または弁護士への申立て費用:15万円〜30万円程度

申立てから後見人選任まで通常2〜4か月かかり(最高裁判所統計)、申立て費用の合計は司法書士への依頼費用を含めると25万円〜40万円程度になることが多い。

家族が後見人になれば報酬ゼロも可能。ただし注意点がある

後見人に家族(配偶者・子など)が選任された場合、家族が「報酬不要」の申出をすれば報酬はゼロになる。実際に家族後見では報酬を受け取らないケースも多い。

ただし、家族後見には注意点がある。

家族が後見人に選任されない可能性がある。親族間で財産管理を巡って対立がある場合や、本人の財産が多額の場合、家庭裁判所が専門職(司法書士・弁護士)を後見人に選任するケースがある。最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年)によると、後見人の内訳として専門職後見人(司法書士・弁護士・社会福祉士)が選任される割合は全体の約74%に上る。

家族後見でも報告義務がある。家族が後見人になっても、定期的(原則年1回)に家庭裁判所への収支報告書の提出が必要だ。財産目録・領収書の管理など、事務負担は継続的に発生する。

財産の使い込みリスクが問題視されている。家族後見において後見人による財産の横領・使い込みが発覚するケースが一定数あり、裁判所による監督が強化されている。兄弟間の信頼関係が薄い場合は、専門職後見人が選任される方向で動くことが多い。

後見人の月額報酬が「一生涯続く」ことの重さ

成年後見は、一度開始すると原則として本人が亡くなるまで続く。「回復したら終了する」ものではなく、認知症の場合は判断能力が回復することがほとんどないため、後見が続く期間は本人の寿命に左右される。

本人が診断後10年生存した場合、財産1,000万円未満で月2万円の後見人報酬が継続すると、報酬だけで240万円を超える。財産が4,000万円クラスであれば月4万円×10年で480万円だ。これは相続財産から支出されるため、将来の相続人への影響も考えておく必要がある。

こうした継続コストを考えると、判断能力があるうちに任意後見・家族信託を検討し、継続コストを抑える設計をしておくことが重要だ。

この記事のまとめ

  • 後見人報酬は最高裁判所の目安で月2万円〜6万円程度(財産規模による)
  • 5年間の累計は120万円〜360万円超になる
  • 申立費用(司法書士費用含む)は別途25万円〜40万円程度かかる
  • 家族が後見人になれれば報酬ゼロも可能だが、専門職が選任される割合は約74%
  • 判断能力があるうちに任意後見・家族信託で継続コストを抑える設計が最善

出典:民法第862条(後見人の報酬)、東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(2016年)、最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年1〜12月)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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