親が認知症になった後、生命保険の受け取りや解約・変更手続きをしようとしたら「本人確認ができない」「本人の意思確認が取れない」として保険会社に断られたという相談は少なくない。認知症が進んで本人の判断能力がなくなると、保険の解約・名義変更・保険金請求の一部手続きが困難になる。解決策として成年後見制度があるが、事前にできる対策もある。
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認知症になると生命保険で何が困るか
生命保険に関して、認知症後に家族が困ることは主に次の3つだ。
- 保険の解約・変更・契約者貸し付けが本人でないとできない:解約・減額・特約の付加・削除・契約者貸し付けは原則として「契約者本人」の手続きが必要。家族が代わりに手続きしようとしても、本人の意思確認ができないとして断られることがある
- 生命保険の受取人変更が本人の意思確認なしにできない:受取人を変更したい場合も、契約者本人の意思確認が必要。認知症後に変更しようとすると、判断能力の問題で保険会社が手続きを受け付けないことがある
- 死亡保険金請求は受取人が行える(相続後の手続き):死亡保険金の請求は「受取人」が行うため、受取人が指定されていれば本人の判断能力は不要。ただし受取人が未指定の場合は相続人全員の手続きが必要になる
成年後見人が対応できる範囲
成年後見人は本人の財産管理を行う権限を持つが、生命保険の手続きに関しては保険会社によって対応が異なる。
一般的に成年後見人が対応できることとして、「保険料の払い込み(口座引き落としの継続)」「保険会社への問い合わせ・書類の取り寄せ」「本人が受取人となっている医療保険・入院保険の請求手続き(保険金の収受)」がある。
成年後見人でも困難な場合として、「本人の意思が反映されるべき解約・変更」(本人の権利を処分する行為)はケースバイケースで判断される。家庭裁判所への報告・許可が必要になるケースもある。
手続きが発生した際は、まず保険会社の「後見人等専用窓口」(多くの大手保険会社が設けている)に後見開始の登記事項証明書(法務局で取得)を持って相談する。
診断後すぐに確認しておくこと
認知症と診断されたら、まだ判断能力がある段階で以下を確認しておく。
- 加入している生命保険の一覧を整理する:保険会社・証券番号・種類(生命保険・医療保険・がん保険等)・保険料・受取人を書き出す。生命保険証券は紛失しやすいため、保険会社に「証券再発行」を依頼して手元に置く
- 受取人が最新の状況と一致しているか確認する:離婚・再婚・子の誕生等で受取人を変更していない場合、今のうちに変更手続きを行う
- 保険会社に「家族登録制度(指定代理請求人制度)」がないか確認する:多くの保険会社では、被保険者(本人)が意思表示できない状態になった場合に代わりに保険金請求できる「指定代理請求人」を事前登録する制度がある。認知症が軽度のうちに登録しておく
指定代理請求人制度の活用が最も現実的な対策
各保険会社の「指定代理請求人制度(家族給付請求制度)」は、被保険者が意識不明・重篤な認知症等で自ら保険金請求できない場合に、事前に登録した家族(指定代理請求人)が代わりに請求できる制度だ。
対象となる保険金は主に「入院給付金・手術給付金・介護保険金(医療・介護系)」で、死亡保険金は通常対象外(受取人が請求する)。
登録できる代理請求人は「配偶者」「直系血族(子・親等)」「兄弟姉妹」等、保険会社によって異なる。
手続きは各保険会社の問い合わせ窓口またはウェブサイトの「指定代理請求人届出書」から行う。認知症の軽度〜中等度の段階で、まだ本人の意思確認ができる間に手続きを済ませておくことが重要だ。
認知症後に「保険の存在自体がわからない」場合の対処
親が加入していた保険が不明な場合は以下の方法で調べる。
- 生命保険会社に問い合わせる:「契約照会制度」(生命保険協会が運営)を利用すると、どの保険会社に加入しているかを確認できる。手続きには本人または代理人の書類が必要
- 郵便物・通帳を確認する:毎月・毎年の保険料引き落としが通帳に記録されている。引き落とし元の会社名から保険会社を特定できることが多い
- 生命保険協会の「生命保険契約照会制度」:死亡・認知症等により本人が確認できない場合に利用できる制度(2021年開始)。生命保険・かんぽ生命・共済等が対象で、各社に保険契約の有無を一括で照会できる
この記事のまとめ
- 認知症後は生命保険の解約・変更・受取人変更が困難になる(本人の意思確認が必要なため)
- 診断後すぐに「指定代理請求人」の登録を保険会社に行う(医療・介護系保険金の代理請求制度)
- 成年後見人でも保険の解約・変更は一概にできるわけではなく、保険会社・裁判所の判断が必要
- 加入中の保険が不明な場合は生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用する
出典:生命保険業法(保険契約者保護)、生命保険協会「生命保険契約照会制度」(2021年施行)、各保険会社「指定代理請求人制度」
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