「親の認知症が進行していて、財産の手続きが間に合わないかもしれない」という状況は、実際によく起こる。軽度のうちに動けなかった・進行が想定より速かった・兄弟が動いてくれなかった、など理由はさまざまだ。しかし判断能力がなくなった後でも、できることは残っている。「間に合わなかった」段階からの対処と、今すぐ動くべき手順を整理した。
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「間に合わなかった」段階での状態を整理する
「財産の手続きが間に合わなかった」という状態を具体的に整理すると、主に次の2つのパターンがある。
- パターンA:本人の判断能力が低下し、任意後見・家族信託・遺言書が設定できない段階:公証人が意思確認できない・医師が意思能力なしと判断している
- パターンB:口座が凍結されて資金が引き出せない状態:施設費用・介護費用の支払いができない・葬祭費の準備ができない
どちらの状態かによって対処が異なる。両方が重なっている場合も多い。
パターンAへの対処:法定後見申立てが唯一の選択肢
本人の判断能力が著しく低下した段階では、法定後見申立てが唯一の正式な財産管理手段だ。
申立てできる人は「本人・配偶者・4親等内の親族」等(民法第840条)で、子は申立てが可能だ。家庭裁判所への申立て後、後見人が選任されるまで通常2〜4か月(最高裁判所統計・令和5年)かかる。
急いで手続きを開始するために、司法書士または弁護士に「今すぐ申立て手続きを始めたい」と連絡する。初回相談無料の事務所が多いので、まず電話から始める。
パターンBへの対処:緊急の資金確保の方法
口座が凍結されて資金が引き出せない状態の緊急対処は次の通りだ。
- 銀行窓口に相談する:「要介護状態で介護費用が必要」と伝えると、一部の金融機関では「家族による代理引き出し(福祉目的)」に対応してくれる場合がある。対応は金融機関によって異なる
- 審判前の保全処分の申立て:後見申立て手続き中に緊急の資金需要がある場合、家庭裁判所に「審判前の保全処分」(家事事件手続法第105条以下)を申立てることができる。認められれば仮後見人が選任され、緊急の資金需要に対応できる
- 施設への事情説明と支払い猶予:介護施設に後見申立て手続き中であることを伝えて、支払い猶予または分割払いを相談する
「手続きが間に合わなかった」ときに家族が犯しやすいミス
焦りから家族が取ってしまう行動で後から問題になりやすいのが次の通りだ。
- 本人の通帳・キャッシュカードを無断で使って引き出す:後から他の相続人に「財産を使い込んだ」と疑われるリスクがある。引き出した場合は必ず「何のために」「いくら」使ったかを記録する
- 不動産を無断で売却しようとする:本人の判断能力がない状態での不動産売却は法律上無効になる可能性があり、後から問題になる
- 「急いでいるから」と後見申立てを先延ばしにする:先延ばしにするほど、財産管理に法的な空白期間が続く
施設入所の手続きは後見人なしで進められることが多い
介護施設への入所手続きは、後見人がいない状態でも家族(配偶者・子)が「家族の同意書・身元引受書」を提出することで進められることが多い。入所契約は家族が代理できる場合が多く、後見人が必要になるのは「本人が全く意思表示できない状態で施設側が家族の代理を受け付けない」ケースに限られる。
この記事のまとめ
- 「間に合わなかった」状態でも法定後見申立てによる正式な財産管理手段が残っている
- 審判前の保全処分で緊急の資金確保ができる場合がある(後見申立て手続き中)
- 口座凍結中は銀行窓口への相談・施設への支払い猶予交渉を並行して進める
- 本人の財産を無断で使った場合は必ず使途の記録を残す(使い込み疑惑対策)
- 施設入所契約は家族の同意書・身元引受書で進められることが多い
出典:民法第840条(後見申立て権者)、家事事件手続法第105条以下(審判前の保全処分)、最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年)
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