認知症グループホームの月30万円黒字化条件|収支試算モデルで解説

認知症対応型共同生活介護(認知症GH)を開業した際、月30万円の黒字化(税引き前利益)を達成するにはどのような条件が必要でしょうか。この記事では、基本報酬・加算・稼働率・人件費のモデルを使って試算の考え方を整理します。

収益の計算の基本(1ユニット・定員9名の場合)

認知症GHの収益は「単位数×1単位の単価(地域区分により異なる)×稼働日数」で計算します。基本的なモデルを示します。

前提条件 数値
定員 9名(1ユニット)
稼働率 90%(8.1名/日平均)
平均要介護度 要介護3(818単位/日・令和6年改定後)
1単位の単価 10.27円(地域区分6・2024年度)
稼働日数 30日

介護保険収入の月額試算:8.1名 × 818単位 × 10.27円 × 30日 ≒ 約204万円

加算を加えた収益の試算

主要加算を取得した場合の追加収入の目安を示します(1ユニット・稼働率90%の場合)。

加算名 1日あたりの追加収入(単位×単価×入居者数) 月額の目安
認知症専門ケア加算I(3単位) 3 × 10.27 × 8.1 ≒ 249円/日 約7,500円
夜間支援体制加算II(25単位) 25 × 10.27 × 8.1 ≒ 2,080円/日 約6.2万円
協力医療機関連携加算(40単位/月) — 約3,300円
処遇改善加算I(所定単位の14.8%) — 約30万円

※処遇改善加算は職員への賃金として支払うため、事業所の利益には直接ならないことに注意が必要です。

費用の試算モデル

1ユニット・職員4〜5名体制の場合の費用の目安を示します(地域・法人規模によって異なります)。

費用項目 月額の目安
人件費(職員4名・管理者兼務) 130〜160万円程度
家賃・リース費(建物・設備) 30〜50万円程度
食費・日用品費(入居者分を除く事業所負担分) 10〜20万円程度
水光熱費・通信費 10〜15万円程度
その他管理費 10〜15万円程度
合計 190〜260万円程度

月30万円黒字化の条件

上記の試算を踏まえると、月30万円黒字化の条件は以下のとおりです。

  • 稼働率:90%以上(9床で8〜9名)を維持する
  • 加算:夜間支援体制加算・認知症専門ケア加算Iを取得する
  • 人件費率:サービス活動収益の65%以内に抑える(特に管理者の兼務・パートの活用が有効)
  • 家賃・リース:月40万円以内に抑える(新築より既存建物の改修・賃貸が有利)

これらを満たせば、介護保険収入+加算で220〜240万円、費用が190〜200万円となり、月30万円前後の黒字が見込めます。ただし、開業直後の稼働率上昇期は赤字が続くため、6か月〜1年分の運転資金を確保しておくことが重要です。

詳細な収支試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご自身の条件を入力して確認できます。損益分岐点は「損益分岐点」、稼働率と収支の詳細は「稼働率と収支の関係」をご参照ください。

開業から黒字化までの資金計画

認知症GHは開業後しばらくは入居者が少ない状態が続くため、稼働率が上がるまでの資金計画が重要です。一般的な資金計画の目安を示します。

開業後の時期 稼働率の目安 収支の状況
開業〜3か月 30〜50%(3〜4名) 月80〜120万円の赤字
4〜6か月 50〜70%(4〜6名) 月30〜70万円の赤字
7〜12か月 70〜90%(6〜8名) 月0〜50万円の黒字
1年以上 90%以上(8〜9名) 月30万円以上の黒字(条件次第)

最初の6か月で最大500万円前後の累積赤字が生じることも珍しくありません。開業前に1,000万円程度の運転資金を確保しておくことが理想的です(日本政策金融公庫・地方自治体の融資制度を活用)。

稼働率を早期に高めるための準備

開業前からの準備で稼働率の立ち上がりを早めることができます。

  • 開業前6か月からケアマネジャーへの挨拶・営業を開始する
  • 指定申請前に体験入居・見学の受け入れ体制を整えておく
  • 待機者リスト(入居希望者の事前登録)を管理する
  • 地域包括支援センター・居宅介護支援事業所に開業日時を周知する

月30万円黒字化のチェックリスト

月30万円黒字化に向けたチェックリストです。

  • 稼働率90%以上の維持(9床で8〜9名):ケアマネ訪問頻度・空き情報提供の体制
  • 夜間支援体制加算の取得:夜勤体制の確認・届出
  • 認知症専門ケア加算Iの取得:計画作成担当者のリーダー研修修了・入居者の認知症割合確認
  • 人件費率70%以内:シフト最適化・非常勤活用の比率確認
  • 家賃・リース費月40万円以内:物件選定時の交渉

詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」で確認できます。損益分岐点の計算は「損益分岐点」、稼働率と収支の関係は「稼働率と収支の関係」をご参照ください。経営改善の全体像は「経営改善チェックリスト」でご確認ください。

黒字化に関するよくある質問

Q: 1ユニット9床で月30万円の黒字化は現実的ですか?

稼働率90%・夜間支援体制加算・認知症専門ケア加算Iを取得できれば、人件費率70%以内・家賃月40万円以内の条件で月20〜40万円の黒字が見込めます。ただし開業直後の稼働率が低い時期は赤字が続くため、1年以上の資金計画が必要です。

Q: 2ユニット18床ではどう変わりますか?

2ユニットの場合は固定費(管理者人件費・家賃等)を2ユニットで分担できるため、1ユニットあたりのコストが下がりやすく、黒字化しやすい構造になります。ただし、2ユニット以上になると基本報酬単位数が若干下がる(1ユニット760単位→2ユニット748単位、要介護1の場合)ため、収益単価は下がります。

Q: 黒字化のために最初にすべきことは何ですか?

開業前からのケアマネジャーへの営業・待機者リストの構築が最優先です。開業時から入居者が5〜6名確保できると、資金繰りの厳しさが大幅に軽減されます。詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。

まとめ

認知症GH(1ユニット9床)で月30万円の黒字を達成するためには、稼働率90%以上・主要加算の取得・人件費率70%以内・家賃月40万円以内の4条件を同時に満たすことが目安です。開業後1年以内は赤字が続く可能性が高いため、運転資金の確保と早期の稼働率向上が最優先課題です。開業前からのケアマネジャーへの営業・待機者リストの構築・加算取得のロードマップを計画しておくことで、黒字化までの時間を短縮できます。詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。

収支の詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。稼働率・要介護度・加算の組み合わせによって収支が大きく変わります。開業前の計画段階でシミュレーションを行い、黒字化までの道筋を具体的に描いておくことが重要です。(参考:令和7年厚生労働省「介護事業経営実態調査」)

(根拠:令和6年厚生労働省告示第128号(基本報酬・加算単位数)、令和7年厚生労働省「介護事業経営実態調査」(収支差率参考値)。地域区分の単位単価は介護給付費単位数等サービスコード表で確認できます。)

開業・運営に関する収支全体の試算には「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご利用ください。加算や稼働率の条件を変えながらシミュレーションできます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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