認知症対応型共同生活介護(認知症GH)の経営は、稼働率・加算の取得状況・人件費率が収支を大きく左右します。この記事では、収益改善に向けた確認ポイントを「稼働率」「加算」「費用」の3つの切り口で整理します。
稼働率を高めるための確認ポイント
認知症GHの収益は稼働率(実際の入居者数÷定員)に直結します。稼働率90%以上(9床で8〜9名)を目指すことが経営安定の基本です。
| 確認項目 | 改善のアクション |
|---|---|
| ケアマネジャーへの訪問頻度 | 月1回以上の空き情報提供・担当者変更の確認 |
| 地域包括支援センターとの関係 | 開業挨拶・定期的な空き情報の報告 |
| 退去後の空き床の充足期間 | 待機者リストの管理・ケアマネへの即報体制の構築 |
| 体験入居・見学の受け入れ体制 | 問い合わせから見学・入居までのフローを整備 |
加算の取得状況チェックリスト
認知症GHで取得できる主な加算と、現在の取得状況を確認しましょう。未取得の加算は要件を確認し、対応可能なものから取得を進めることが収益改善につながります。
| 加算名 | 主な要件の概要 | 単位数 |
|---|---|---|
| 認知症専門ケア加算I | 認知症の方の割合50%以上・実践リーダー研修修了者の配置 | 3単位/日 |
| 夜間支援体制加算 | 夜間に配置基準以上の職員を配置 | 50〜25単位/日 |
| 若年性認知症利用者受入加算 | 若年性認知症の入居者を受け入れている | 120単位/日 |
| 協力医療機関連携加算 | 年1回以上の協力医療機関との情報共有・対応確認 | 40単位/月 |
| 看取り介護加算I | 看取り介護計画書の作成・家族同意・医師連携 | 72〜1,280単位 |
| 処遇改善加算I | 賃金体系・研修計画・職場環境等の要件を全て満たす | 所定単位の14.8%加算 |
費用削減の視点
費用面では、人件費・外注費・消耗品費・水光熱費が主なコストです。各費用の見直しポイントを整理します。
- 人件費:職員の離職率を下げることが採用コスト削減につながる(1名離職・採用のコストは50〜100万円とも)
- 外注費:洗濯・清掃の一部を外注している場合は内製化のコスト比較を検討
- 消耗品費:手袋・エプロン・消毒液等の一括購入・価格交渉
- 水光熱費:LED照明への切り替え・節水機器の導入
令和7年概況調査(厚生労働省)の全国平均との比較
厚生労働省「介護事業経営実態調査(令和7年)」によれば、認知症GHの全国平均の収支差率は3.0%程度と報告されています(サービス活動収益に対する収支差)。収支差率がこれを大幅に下回る場合は、稼働率・加算の取得不足・人件費比率の高さが主な原因として考えられます。
損益分岐点の計算は「損益分岐点」、稼働率と収支の詳細は「稼働率と収支の関係」、加算の全体像は「加算一覧」で確認できます。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
経営改善の優先順位の付け方
経営改善は「稼働率」「加算取得」「費用削減」の順で優先度を付けることが基本です。稼働率1%の改善(9床で約0.09名)は年間収益に直結しますが、費用削減は元の費用水準によって効果が変わります。
| 取り組み | 効果の大きさ | 実施のしやすさ | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 稼働率の向上 | 大 | 時間がかかる | 最高 |
| 加算の新規取得(夜間支援体制・認知症専門ケア等) | 中〜大 | 要件次第 | 高 |
| 人件費率の最適化(非常勤活用・配置の見直し) | 中 | 慎重に | 中 |
| 消耗品・水光熱費の削減 | 小 | 今すぐできる | 低 |
人件費率の目安と管理
認知症GHの人件費率は、サービス活動収益の65〜70%以内が目安とされています(全国平均参考)。人件費率が70%を超えている場合は以下を確認します。
- 夜勤体制の見直し(夜勤専従スタッフの活用・夜勤回数の分散)
- 非常勤・パート職員の活用比率の確認
- 管理者の兼務(計画作成担当者との兼務等)の検討
- 稼働率を上げることで固定費(人件費)を薄める効果を確認
加算取得のロードマップ
加算取得には職員の研修・体制の整備が必要なため、一度に全ての加算を取得することは難しい場合があります。取得しやすい加算から優先する目安を示します。
- まず取得:処遇改善加算I・II(職員定着に直結)、協力医療機関連携加算(比較的要件が軽い)
- 次に取得:認知症専門ケア加算I(職員の研修修了が必要)、夜間支援体制加算
- 条件が整えば:看取り介護加算(看取りの体制と医師連携が必要)
加算の詳細一覧は「加算一覧」、処遇改善加算の取得方法は「処遇改善加算」で確認できます。
経営指標の定点観測の方法
経営改善を進めるには、毎月の経営指標を定点観測することが重要です。以下の指標を月次で記録・管理します。
- 稼働率(実入居者数÷定員)
- 介護保険収入(基本報酬+加算の合計)
- 人件費率(人件費÷サービス活動収益)
- 収支差率(利益÷サービス活動収益)
- 新規入居者数・退去者数
これらを前月・前年同月と比較することで、改善の進捗と問題の早期発見ができます。
まとめ
認知症GHの経営改善は、稼働率を最優先に高め、加算の取得・費用の最適化をあわせて進めることが基本です。全国平均(収支差率3.0%・令和7年介護事業経営実態調査)を下回っている場合は、稼働率・加算取得状況・人件費率の順で確認することが効果的です。経営指標を毎月定点観測し、問題を早期に発見・対応できる体制を整えましょう。
詳細な収支試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」、加算の全体像は「加算一覧」、損益分岐点は「損益分岐点」でご確認ください。
厚生労働省の経営実態調査との比較
経営状況の自己評価として、厚生労働省「介護事業経営実態調査(令和7年)」の認知症GHの全国平均と自事業所を比較することが有効です。主な指標と全国平均の目安は以下のとおりです(数値は調査年によって変動するため、最新の調査結果を確認してください)。
- 収支差率:全国平均3.0%程度(令和7年度調査)
- 人件費率:サービス活動収益の65〜70%前後
- 稼働率:全国平均90%前後
自事業所の数値がこれを大幅に下回る場合は、稼働率の低さ・加算未取得・人件費率の高さが複合的に影響している可能性があります。収支の詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。
経営改善は「問題の発見→原因の特定→対策の実施→効果の検証」のサイクルを毎月回すことが基本です。月次の経営指標を記録し、稼働率・加算・人件費率の変化を追いかけることで、問題の早期発見が可能になります。入居者を集める施策は「入居者の集め方」、損益分岐点の計算は「損益分岐点」でご確認ください。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
(参考:厚生労働省「介護事業経営実態調査(令和7年度)」。収支差率・人件費率の全国平均値は調査年によって変動します。最新の数値は厚生労働省のウェブサイトに公表される実態調査を確認してください。認知症GHの経営に関する加算の全体像は「加算一覧」でご確認ください。令和6年制度改正の詳細は「令和6年改定のポイント」をご参照ください。)
開業・運営に関する収支全体の試算には「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご利用ください。加算や稼働率の条件を変えながらシミュレーションできます。
入居者獲得の施策については「入居者の集め方」も参考にしてください。

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