居宅介護支援事業所の廃止・休止は、省令(平成11年厚生省令第38号)第24条に基づき、廃止・休止の日の1か月前までに市区町村への届出が義務付けられています。廃止と休止では指定の扱いが異なり、廃止後の再開には指定申請からやり直す必要があります。利用者への継続的なサービス確保の援助義務もあり、記録の保管義務は廃止後も2年間継続します。この記事では廃止と休止の違い・届出手続きの流れ・利用者への対応を整理します。
廃止・休止の届出:1か月前が期限
省令第24条では、「事業を廃止し、または休止しようとするときは、廃止または休止の日の1か月前までに、その旨を市区町村の長に届け出なければならない」と定められています。
届出先は市区町村です。令和3年4月の介護保険法改正により、居宅介護支援事業所の指定権者は都道府県から市区町村に移管されています。届出の様式・提出方法は市区町村によって異なるため、事前に担当窓口に確認してください。
廃止と休止の違い
廃止と休止では、その後の扱いが大きく異なります。
| 項目 | 廃止 | 休止 |
|---|---|---|
| 意味 | 事業を終了し、指定を返上する | 一時的にサービスの提供を停止するが、指定は維持される |
| 再開の可能性 | ない(再度開業する場合は指定申請から必要) | あり(再開届を提出することでサービスを再開できる) |
| 主な理由 | 事業継続が困難・経営上の撤退・代表者の死亡等 | 改修工事・管理者の一時的な不在・経営課題の整理等 |
| 届出期限 | 廃止の日の1か月前まで | 休止の日の1か月前まで |
| 指定の有効期間 | 廃止により消滅 | 休止中も進行するため、満了前に更新申請が必要な場合あり |
廃止・休止の届出に必要な書類
届出の際に必要な書類は市区町村によって異なりますが、一般的に以下が求められます。
- 廃止(休止)届出書:市区町村の様式を使用する
- 廃止(休止)の理由:経営上の事情・代表者の退職等の理由を記載
- 廃止(休止)予定年月日
- 現在の利用者数:廃止・休止時点の利用者数と、移行先の確保状況
- 利用者への対応方針:移行先の事業所名・引き継ぎの進捗
利用者への対応:継続的なサービス確保の援助が義務
省令第24条では、廃止・休止を届け出た事業者は、利用者が継続的にサービスを受けられるように必要な援助を行わなければならないと規定されています。利用者に一方的に「廃止します」と告げるだけでは不十分です。
具体的に求められる対応は以下のとおりです。
| 対応事項 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 利用者・家族への早期説明 | 廃止・休止予定を早期に利用者・家族に伝え、理由と今後の方針を書面で説明する。突然の告知は利用者への影響が大きく、行政指導の対象となる場合がある |
| 移行先の居宅介護支援事業所の確保 | 利用者が継続してケアマネジャーのサポートを受けられるよう、移行先の事業所を探す援助を行う。利用者・家族の意向を確認しながら候補を提示する |
| 引き継ぎ書類の整備 | ケアプラン・アセスメント記録・サービス担当者会議の記録・医療情報等を整理し、移行先の事業所に提供する(利用者の同意を得た上で) |
| 各サービス事業所への連絡 | 居宅サービス計画に位置付けられた訪問介護・通所介護等の事業所に廃止・休止の事実を伝え、新しい担当ケアマネジャーへの連絡先を引き継ぐ |
| 市区町村・地域包括支援センターへの連絡 | 市区町村や地域包括支援センターに利用者の引き継ぎ状況を報告し、必要に応じてサポートを依頼する |
廃止後の記録保管義務
事業所を廃止した後も、居宅介護支援に関する記録の保管義務は継続します。省令第29条では、記録は「サービスの提供が完結した日から2年間」の保管が義務付けられています。
廃止後も保管が必要な主な記録は以下のとおりです。
- 利用者ごとの居宅サービス計画(ケアプラン)
- アセスメント記録・モニタリング記録
- サービス担当者会議の記録
- 利用者への説明・同意書類(重要事項説明書への署名等)
- 給付管理票・介護給付費請求に関する書類
- 処遇改善加算の算定に関する書類(令和8年6月以降・居宅介護支援への加算新設)
廃止時に記録の保管先(別の法人への委託・倉庫保管等)をあらかじめ決めておくことが重要です。
休止後の再開手続き
休止した事業所がサービスを再開する場合は、市区町村への「再開届」が必要です。再開届の提出後、実態確認等が行われる場合もあるため、再開予定日の1か月以上前に届け出ることが望ましいです。
長期間休止した場合は、指定の有効期間(6年)の満了が近づいている場合があります。指定の有効期間の確認と更新申請の手続きも合わせて確認してください。
廃止・休止に至る前に確認すること
廃止・休止の判断をする前に、以下の選択肢も検討します。
- 事業の譲渡・承継:別の法人に事業を譲渡する場合は、介護保険法の規定に基づき指定を承継できる手続きがあります。廃止して別法人が新たに指定を取る方法との比較を検討します。
- 管理者・主任ケアマネの後任確保:廃止の理由が管理者や主任ケアマネの退職だった場合、後任の確保を先に検討します。後任が決まるまでの間、休止届を出して指定を維持することも選択肢の一つです。
- 他法人との合流・業務委託:単独での運営が困難な場合は、他の居宅介護支援事業所との連携・合流を検討します。
居宅介護支援事業所の開業から運営にかかる収支の試算は、居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第24条・第29条
- 介護保険法(平成9年法律第123号)(事業の廃止・休止・承継に関する規定)
この記事は2026年11月時点の法令に基づいています。手続きの詳細は事業所所在地の市区町村に確認してください。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント