通所介護の個別機能訓練加算は、機能訓練指導員を配置して利用者ごとの訓練を行った場合に算定できる加算です。(Ⅰ)イ・ロと(Ⅱ)の3区分があり、単位数と算定要件がそれぞれ異なります。算定率が高く収支に直結する加算でもあるため、開業前に仕組みを理解しておくことが重要です。この記事では、各加算の要件・単位数・組み合わせのルールを一次資料に基づいて整理します。
個別機能訓練加算は3つの区分がある
令和3年度改定で体系が整理されて以来、個別機能訓練加算は以下の3区分になっています。
| 加算の種類 | 単位数 | ポイント |
|---|---|---|
| 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 56単位/日 | 機能訓練指導員を専従で1名以上配置 |
| 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | 85単位/日 | 営業時間を通じて専従1名以上(実質2名体制) |
| 個別機能訓練加算(Ⅱ) | 20単位/月 | LIFEへのデータ提出が要件・(Ⅰ)に上乗せ |
(出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」)
(Ⅰ)イとロは併算定できません。どちらか一方を選びます。(Ⅱ)は(Ⅰ)イまたはロのどちらかに上乗せして算定します。(Ⅰ)なしで(Ⅱ)だけを算定することはできません。
(Ⅰ)イの要件:機能訓練指導員を専従で1名以上
(Ⅰ)イを算定するには、機能訓練指導員を専従で1名以上配置していることが求められます。
機能訓練指導員になれる職種は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師です。また、一定の実務経験を持つ言語聴覚士等も認められています(詳細は省令参照)。
「専従」とは、その時間帯は他の業務を兼務しないことです。送迎中や入浴介助中に機能訓練指導員としての役割を同時に担うことはできません。
訓練の内容は利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、3か月に1回以上、実施状況と効果をケアマネジャーなどに報告・相談することが必要です。
(Ⅰ)ロの要件:営業時間を通じて専従1名以上
(Ⅰ)ロはより手厚い配置です。機能訓練指導員を、事業所の営業時間を通じて1名以上専従させることが要件です。
(Ⅰ)イは「専従で1名」ですが、これは必ずしも営業時間全体をカバーしなくてよいとも解釈できます。(Ⅰ)ロは明確に「営業時間を通じて」とされるため、午前中だけ・午後だけという配置では算定できません。
実質的に、通常の配置に加えてもう1名専従の機能訓練指導員を確保する形になります。人件費は増えますが、1日あたり85単位と(Ⅰ)イより29単位多く取れるため、利用者数が多い事業所ほどインパクトが大きい加算です。
(Ⅱ)の要件:LIFEへのデータ提出
(Ⅱ)は月20単位と単位数は小さいですが、(Ⅰ)のどちらかを算定していれば上乗せできます。
(Ⅱ)の要件は科学的介護情報システム(LIFE)への利用者情報の提出とフィードバックの活用です。利用者の氏名・ADLの状況・機能訓練の目標・実施状況などをLIFEに登録し、フィードバックを受けてサービスの改善に活かすことが求められます。
LIFE対応のシステムを導入する費用(月額数千〜数万円程度)が別途かかりますが、(Ⅱ)の収入で十分ペイできる水準です。
机上の採算計算:定員20人で算定した場合
定員20人・稼働率80%・1日16人利用として試算します(地域区分は「その他」=1単位10円と仮定)。
- (Ⅰ)イのみ算定:56単位×16人×10円×22日(月)=約197,000円/月の加算収入
- (Ⅰ)ロのみ算定:85単位×16人×10円×22日=約299,000円/月
- (Ⅰ)イ+(Ⅱ)上乗せ:(Ⅱ)は月単位なので20単位×16人×10円=32,000円/月が追加
これはあくまでも概算です。実際の地域単価は市区町村によって異なり、1単位10〜11.4円の幅があります。正確な試算はシミュレーターで確認してください。
加算を取るためのスタッフ体制
個別機能訓練加算を安定して算定するには、機能訓練指導員の確保と欠勤・離職への備えが必要です。
理学療法士や作業療法士は病院・クリニックとの競合で採用しにくいケースがあります。非常勤での採用(午前のみ・週3日など)でも専従要件を満たせる時間帯であれば算定できるため、非常勤の組み合わせで体制を作ることも選択肢のひとつです。
看護師が機能訓練指導員を兼ねている事業所も多くあります。ただし、看護師が入浴介助に入っている時間帯は機能訓練指導員としての専従には数えられないため、時間帯の管理が必要です。
個別機能訓練計画の作り方
加算を算定するには、利用者ごとの個別機能訓練計画の作成が義務です。計画には以下の内容が含まれます。
- 訓練の目標(長期・短期)
- 訓練の実施内容(種目・頻度・時間)
- 利用者・家族の意向
- 担当する機能訓練指導員の名前
3か月に1回以上、計画の内容をケアマネジャーに報告・相談し、必要に応じて見直します。この記録が運営指導で確認されます。
(Ⅱ)のLIFE登録、何を入力するか
LIFEには「機能訓練情報」として以下の内容を登録します。
- 利用者のADL(バーセルインデックス)
- 機能訓練の目標・訓練項目
- 訓練の実施状況
登録した情報をもとにLIFEからフィードバックが届きます。フィードバックは国全体の平均と自事業所のデータを比較したものです。このフィードバックを活用してサービスの改善に取り組む姿勢が求められています。
LIFE対応ソフトを導入している事業所では、ソフトからLIFEへの自動送信が可能なケースもあります。スタッフの入力負担を減らすためにも、LIFE連携の機能があるソフトの選択を検討する価値があります。
開業直後は(Ⅰ)イから始める
開業直後は利用者数が少なく、加算収入の絶対額も小さい時期です。機能訓練指導員を1名配置して(Ⅰ)イから算定し始め、利用者数と安定した収益が見えてきたら(Ⅰ)ロへの体制強化、LIFEへの対応を検討するというステップが現実的です。
(Ⅱ)のLIFE登録も慣れればルーティン化できますが、開業直後に一度に多くのことを立ち上げるのは負担が大きいため、優先順位を決めて取り組むことが大切です。
収支への影響を事前に試算してください
個別機能訓練加算の有無・区分が収支にどう影響するかは、定員・稼働率・地域区分・他の加算との組み合わせで変わります。開業前の試算には、以下のシミュレーターをご活用ください。


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