就労移行支援の利用期間は原則2年。延長できる場合と、できない場合の整理

就労移行支援の利用期間は原則2年。延長できる場合と、できない場合の整理 就労移行支援

就労移行支援の利用期間は原則2年です。ただし、市区町村が必要と認めた場合は1年を限度として更新できます。2年間で就職を目指す設計が基本であり、利用者の「退所→就職→6か月継続」が事業所の収支に直接影響します。標準利用期間は収支計画だけでなく、利用者の支援計画を立てるときの軸になります。

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項(令和3年3月31日 厚生労働省)・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(厚生労働省令)第6条の8

標準利用期間は2年。根拠は施行規則第6条の8。

就労移行支援の標準利用期間は、障害者総合支援法施行規則第6条の8で「2年」と定められています。

「標準利用期間」は、法律上の上限ではなく「標準」です。同条では「市町村が必要と認めた場合は、1年を限度として、その利用する期間を更新することができる」と続きます。つまり、原則は2年で、更新が認められれば最長3年まで利用できます。

2年という期間は、就労移行支援が「就職するための訓練」を目的とした事業であることに基づいています。長期的な通所を前提とした就労継続支援A型・B型とは、この点で性格が根本的に異なります。

利用期間の更新。市区町村が認める場合に1年以内の延長が可能。

利用期間の延長を希望する場合は、サービス担当者会議での検討と市区町村への申請が必要です。市区町村が「就職の見込みがあり、延長によって就職可能性が高まる」と判断した場合に認められます。

延長が認められるかどうかは市区町村の判断であり、自動的に延長されるわけではありません。事業所側で「延長すれば就職できる見込みがある」という根拠を示す必要があります。

延長できる期間は「1年を限度」です。2年目終了後に1年延長されれば、最長で3年の利用になります。2回目の延長は認められません。

更新した場合の報酬単価への影響。

利用期間を更新(延長)した場合、報酬の単価が変わります。延長後(通常の標準利用期間を超えた期間)は、就労移行支援サービス費(Ⅱ)の単価が適用されます。

就労移行支援サービス費(Ⅱ)は(Ⅰ)よりも単価が低く設定されています。定員20人以下の事業所で比べると、(Ⅱ)の最高区分でも(Ⅰ)の中間区分と同程度の単価です。収支計画を立てるとき、延長利用者が多い事業所ほど収入単価が下がる構造を意識する必要があります。

2年間の支援サイクルと就労定着者の割合の計算。

標準利用期間2年は、就労移行支援の報酬算定にも深くかかわります。基本報酬の単価を決める「就労定着者の割合」は、過去2年間(前年度と前々年度)の就労定着実績で決まります(告示523 別表第12の1 イ 注3)。

具体的には、「前年度と前々年度に就労継続6か月に達した者の数 ÷ 前年度と前々年度の利用定員の合計」で計算します。分母は実利用者数ではなく「利用定員」の合計です。

たとえば定員20人の事業所が2年間で20人×2年=延べ40人の「定員枠」を使い、そのうち就労継続6か月に達した者が16人いれば、割合は40%で「40%以上50%未満」の区分に入ります。

この計算からわかるのは、定員に対して実際の退所者数が少ない(稼働率が低い)と分母に対して分子が増えにくくなるという構造です。標準利用期間2年を念頭に置いたうえで、入退所の回転数(退所者数)と就職率を両立させる計画が必要です。

新規事業所の特例。2年間は30%以上40%未満とみなされる。

事業開始から2年未満の新規事業所は、前2年間の実績がないため、就労定着者の割合が「30%以上40%未満」とみなされます(留意事項通知 p265)。この区分の単価は定員20人以下で879単位です。

2年目については、1年目の実績だけで割合が40%以上になる場合は、その高い割合の区分が適用できます。3年目は通常の計算式か特例の計算式(前年度の実績を2倍にして計算)の有利なほうを選べます。

特例の計算式が有利になるのは、2年目の就職率が1年目より高い場合です。逆に2年目の就職率が低い場合は通常の式のほうが有利になることがあります。特例式の具体的な計算方法は留意事項通知(p265)の計算例で確認できます。

標準利用期間と入退所の計画。

定員20人の事業所が標準利用期間2年を前提とすると、毎年10人前後が退所し(定員÷2年)、同数の新規利用者を受け入れる入退所回転が理想的です。

実際には、利用者が就職するタイミングはばらばらです。1年以内に就職する利用者もいれば、2年近くかかる利用者もいます。事業所の計画では「平均在籍期間」を把握し、定員に対して年間何人が退所・入所するかを見込んでおく必要があります。

入退所の回転が止まると、稼働率は高くても新規利用者が入れない状態になります。定員が埋まっているように見えても就労定着者が生まれにくくなり、3年目以降の区分が下がるリスクがあります。

標準利用期間の超過と「退所後のフォロー」の義務。

就労移行支援事業所には、利用者が就職した後6か月間、定着支援を行う義務があります(省令171第182条)。この「就労後の定着フォロー6か月」は標準利用期間の2年とは別の義務です。

退所後6か月の定着フォローを担うのは就労支援員の役割の一部です。退所後も支援が続くため、在籍利用者の支援と退所者への定着フォローの両方をこなせる体制が必要です。

また、就職から6か月継続した者(就労定着者)の数が就労定着者の割合の分子になるため、退所後のフォローが手薄になると数字にも響きます。就労支援員の人員配置(利用者÷15以上)はこの定着フォローを賄う設計になっています。

利用期間の打ち切りと支援計画の重要性。

就労移行支援は「就職を目指している者」への支援です。就職の意欲がなくなった場合や、明らかに2年間で就職できる見込みがない場合、サービスの継続適否を検討することが求められます(省令174第70条で準用される第38条等)。

これは、利用者に不利益な打ち切りを意味するものではなく、より適切なサービス(就労継続支援A型・B型など)への移行を検討する判断プロセスです。個別支援計画の見直し(少なくとも6か月ごと)の中で、就労の見込みと支援の方向性を継続的に確認します。

この記事で確認した出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(厚生労働省令)第6条の8
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示523)別表第12の1イ 注3
  • 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)第182条

就労定着者の割合が報酬単価にどう影響するかの詳細は、就労移行支援の基本報酬は、就労定着者の割合で7段階に整理しています。開業後3年目の区分変動リスクは就労移行支援の開業資金と収支で試算しています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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