認知症対応型共同生活介護(認知症GH)と特別養護老人ホーム(特養)は、どちらも介護保険の施設サービスと混同されることがありますが、制度上の位置付け・対象者・費用・提供するケアの内容がまったく異なります。開業を検討する際は、両者の違いを正確に理解した上で事業計画を立てることが重要です。
制度上の違い:地域密着型 vs 施設サービス
| 項目 | 認知症GH | 特別養護老人ホーム |
|---|---|---|
| サービス種別 | 地域密着型サービス | 施設サービス(介護保険施設) |
| 指定権者 | 市区町村 | 都道府県(広域型)・市区町村(地域密着型特養) |
| 根拠法令 | 介護保険法第42条の2 | 介護保険法第48条 |
| 開設できる法人 | 株式会社・NPO等も可 | 社会福祉法人が中心(株式会社は原則不可) |
| 定員 | 1ユニット5〜9人・最大27人 | 広域型:原則30人以上 |
認知症GHは「地域密着型サービス」に分類されるため、事業所の所在する市区町村の住民(または入居前に住民票があった方)が利用対象者となります。特養は都道府県が指定する広域型であれば、都道府県内全域の方が利用できます。
入居条件の違い
| 項目 | 認知症GH | 特養(広域型) |
|---|---|---|
| 要介護度 | 要介護1以上 | 原則 要介護3以上 |
| 認知症の診断 | 必須(医師の診断が必要) | 不要(認知症がない方も入居可) |
| 住所要件 | 事業所の市区町村に住民票があること | 同一都道府県内(広域型) |
| 待機者 | 比較的少ない傾向 | 全国に多数の待機者(厚生労働省「特別養老人ホームの入所申込者の状況」調査) |
特養は原則として要介護3以上が入居要件のため、要介護1・2の認知症の方は特養への入居が難しい状況です。認知症GHは要介護1以上を対象とするため、軽度〜中等度の認知症の方の受け皿として機能しています。
費用(利用者負担)の違い
| 項目 | 認知症GH(1ユニット・要介護3) | 特養(従来型個室・要介護3) |
|---|---|---|
| 介護保険の自己負担(1割) | 約82,400円/月(824単位×30日×10円×1割) | 約55,800円/月(負担限度額適用前) |
| 居住費(家賃相当) | 事業者が設定(目安:5〜8万円/月) | 部屋のタイプと所得で異なる |
| 食費 | 事業者が設定(目安:4〜5万円/月) | 所得に応じた負担限度額あり |
| 合計目安 | 15〜20万円/月程度 | 12〜16万円/月程度(一般的な低所得者) |
特養には「補足給付」という制度があり、低所得者は食費・居住費の自己負担が軽減されます。認知症GHにも一部の自治体で補助制度がありますが、特養ほど広範な減額制度はありません。このため、生活保護受給者や年金額が少ない方は特養のほうが費用負担が軽くなる場合があります。
提供するケアの内容の違い
認知症GHの特徴:「生活の場」として設計
認知症GHは、少人数(5〜9人)のユニットで共同生活を営む「生活の場」です。料理・洗濯・買い物など生活行為に職員が一緒に関わることで、認知症の方の「残存機能の維持」を図ります。医療行為は原則として行えないため、医療ニーズが高い方には向きません。
特養の特徴:重度者への医療的対応も可能
特養は常勤の看護師配置が義務付けられており、経管栄養・痰吸引などの医療的対応も可能です。重度の認知症・寝たきりの方でも入居でき、看取りまで対応できる施設が増えています。一方で、大規模施設(定員30〜100人以上)が中心のため、個別対応の限界があります。
開業のしやすさの違い
| 項目 | 認知症GH | 特養 |
|---|---|---|
| 開設できる法人格 | 株式会社・NPO・社会福祉法人等 | 社会福祉法人が中心 |
| 開業資金の目安 | 1ユニット:2,000〜5,000万円程度 | 数億〜十数億円 |
| 補助金 | 都道府県・市区町村の補助あり | 社会福祉法人向けの大規模な補助 |
| 参入障壁 | 中程度(市区町村の指定枠・公募) | 高い(社福法人格・大規模投資) |
認知症GHの開業資金については「認知症グループホームの開業資金」で詳しく解説しています。
収益性の違い
収益性の観点では、両者に次のような違いがあります。
- 認知症GH:1ユニット(定員9人)・稼働率90%・要介護3平均で月収約230万円程度
- 特養(30床):稼働率90%・要介護3〜5平均で月収約700〜900万円程度(規模が大きい分コストも大)
令和7年介護事業経営実態調査では、認知症GHの全国平均収支差率は3.0%です。特養も同程度の収支差率ですが、施設規模が大きいため絶対額が異なります。認知症GHは小規模事業者でも参入できる一方、収益の上限も限られます。
収支の詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。
どちらを選ぶかの判断基準
開業を検討する際、認知症GHと特養のどちらを選ぶかは、法人格・資金力・地域のニーズによって異なります。
- 株式会社・NPO法人での参入 → 認知症GHが現実的
- 社会福祉法人を設立済みで大規模投資が可能 → 特養も選択肢
- 地域に認知症GHが少なく待機者が多い → 認知症GHの需要が高い
- 要介護3以上の重度者が多い地域 → 特養の必要性が高い
開業全体の流れは「認知症グループホームの開業手順」でまとめています。加算の一覧は「加算一覧」で確認できます。
入居待機期間の違い
特登は全国に数十万人規模の待機者がいるといわれており、入居まで数年以上かかる地域もあります。一方、認知症GHは定員が9人以下と小規模なため、地域によっては比較的短期間で入居できる場合があります。要介護1・2の認知症の方が特登の待機中に利用できる選拢肢として、認知症GHの径路が選ばれるケースがあります。
認知症GHと特登の年間事業規模の違い
| 項目 | 認知症GH(1ユニット) | 特別養老人ホーム(30床) |
|---|---|---|
| 月収入(稼働率90%) | 約90年口内外 | 約55年口内外 |
| 月人件費(局者比率想定) | 約58年口内外 | 約32年口内外 |
| 収支差率(全国平均) | 3.0%(令和7年調査) | 特登かく近の数値 |
| 開業資金目安 | 2,000~5,000万円 | 数億円居上 |
上記の収入はケアミクス・加算の取得状況によって大きく変動します。詳細な試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」で確認できます。待機者の比較的少ない認知症GHの強みを活かすために、地域のニーズを事前に確認することが大切です。開業準備の全体は「認知症グループホームの開業手順」で確認してください。
認知症GHが向いている利用者層
認知症GHは、「要介護1以上の認知症」という明確な対象要件があります。特別養老人ホームや有料老人ホームが必ずしも対象要件に認知症を含めないのと対照的です。
認知症の重度や行動パターンによっては、認知症GHよりも口腔ケア・吸引など医療深度の高い施設が適している場合もあります。入居前のアセスメントで適切な施設を案内することが、利用者・家族双方にとってのトラブル防止になります。
まとめ:2つのサービスの選び方
認知症GHは小規模・地域密着型の注意徳で開業できる一方、山間部・濃離島山離島地域など人口密度の低い地域では初期満床に時間がかかるリスクがあります。開業枕地を定める際は地域の認知症有病者数・既存認知症GHの定員充足状況を市区町村の介護保陽課に確認することをお勧めします。
開業資金の詳細は「認知症グループホームの開業資金」、捆心の稼働率・収支試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」でご確認ください。

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