認知症対応型共同生活介護(認知症GH)は、指定を受けた翌日から運営基準に従ったサービスを提供する義務が発生します。根拠となるのは平成18年厚生労働省令第34号(以下「基準省令」)で、記録・苦情対応・身体拘束廃止・運営推進会議など多岐にわたる規定が設けられています。開業前にこれらを一通り把握しておくことで、実地指導での指摘や減算リスクを低減できます。
サービス提供の基本的義務
認知症GHは、要介護1以上の認知症の方を対象に、居宅に近い環境で共同生活を営みながら介護・機能訓練・日常生活上の支援を提供します(基準省令第90条)。1ユニットの定員は5人以上9人以下で、最大3ユニット(定員27人以下)まで設置できます。
サービス提供にあたっては、次の義務が課されます。
- 居宅サービス計画(ケアプラン)の作成と定期的な見直し
- 入居者ごとの個別ケアの実践
- 家族への定期的な情報提供
- 地域との連携・地域住民との交流の促進
人員基準の詳細は「認知症グループホームの人員基準」をあわせて確認してください。
記録・保存の義務
基準省令第107条は、事業者に記録の整備と保存を義務付けています。記録の保存期間は原則2年間です。
| 記録の種類 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 居宅サービス計画 | 2年間 | 基準省令第107条 |
| 介護記録(日常的ケア・事故報告等) | 2年間 | 同上 |
| 業務日誌・勤務記録 | 2年間 | 同上 |
| 身体拘束に関する記録 | 2年間 | 同上 |
| 苦情に関する記録 | 2年間 | 同上 |
記録の様式は法令上定められていませんが、実地指導では「誰が・いつ・何をしたか」が分かる記録であることが確認されます。事故報告・ヒヤリハット報告は経緯・原因・再発防止策を具体的に記載することが求められます。
苦情対応の義務
基準省令第104条は、苦情受付・解決の体制整備を義務付けています。苦情受付担当者を設置し、苦情の内容と改善の取り組みを記録・保存しなければなりません。
苦情受付体制に必要な要素
- 苦情を受け付ける担当者の設置(管理者が担うことが一般的)
- 苦情受付の手続きを重要事項説明書に記載
- 苦情記録の保存(2年間)
- 苦情の内容を踏まえたサービス改善の実施
外部機関への苦情対応
入居者・家族は、事業者への苦情のほか、市区町村や国民健康保険団体連合会(国保連)に苦情を申し立てることができます。認知症GHは地域密着型サービスのため、指定権者は市区町村です。苦情・行政への申告があった場合、事業者は調査に協力する義務があります。
身体拘束廃止の義務
基準省令第100条は、緊急やむを得ない場合を除き身体拘束を禁止しています。同条は以下の3要件をすべて満たす場合にのみ身体拘束を許容します。
- 切迫性:入居者本人または他の入居者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体拘束以外の代替方法が存在しない
- 一時性:身体拘束が一時的なものである
身体拘束を実施した場合は、その態様・時間・入居者の心身の状況・緊急やむを得なかった理由を記録しなければなりません(基準省令第100条3項)。身体拘束を行った場合は減算が適用されます。詳細は「加算・減算一覧」を確認してください。
運営推進会議の義務
基準省令第97条は、おおむね2か月に1回以上の頻度で運営推進会議を開催することを義務付けています。
運営推進会議の構成員
- 入居者(参加できる方)
- 入居者の家族
- 地域住民の代表(自治会・民生委員等)
- 指定した市区町村の職員または地域包括支援センターの職員
- 事業者の担当者
議事録は2年間保存し、公表することが求められます。会議では、提供したサービスの内容・課題・地域との連携状況などを報告します。
虐待防止の義務
令和6年4月の改定により、虐待防止に関する以下の取り組みが義務化されました(基準省令第99条の2)。
| 義務の内容 | 頻度・体制 |
|---|---|
| 虐待防止委員会の設置 | 定期的な開催(おおむね年1回以上) |
| 虐待防止指針の整備 | 常時見直し可能な状態で保存 |
| 職員研修の実施 | 年1回以上 |
| 虐待防止担当者の設置 | 管理者が兼務可 |
非常災害対策の義務
基準省令第98条は、非常災害対策として次の措置を義務付けています。
- 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備の設置
- 非常災害に関する具体的な計画の策定
- 定期的な訓練(年2回以上)
- 市区町村・消防署への届け出
令和6年4月からは業務継続計画(BCP)の策定も全事業者に義務付けられました。BCPについては「業務継続計画(BCP)の策定義務と主な記載事項」で詳しく説明しています。
協力医療機関との連携義務
令和6年改定では、協力医療機関との「協定書の締結」が義務化されました(経過措置あり)。単に「協力関係がある」だけでなく、定期的な往診・緊急時の対応・看取り対応などの内容を文書で取り決めることが求められます。詳細は「協力医療機関との連携体制」をご覧ください。
重要事項説明書・契約書の整備義務
基準省令第94条は、サービス提供開始前に次の書類を入居者・家族に交付し、説明を行うことを義務付けています。
- 重要事項説明書(運営規程・人員・設備・利用料等を記載)
- 利用契約書
- 個人情報保護に関する同意書
これらの書類は変更が生じるたびに速やかに入居者・家族に通知し、必要に応じて再交付します。
開業前に整備すべき書類・体制の一覧
認知症GHの運営基準への対応は、書類の整備と体制構築が中心です。開業前に優先して準備すべき項目を以下に整理します。
| 分類 | 必要書類・体制 | 提出先 |
|---|---|---|
| 苦情対応 | 苦情受付体制・記録様式の整備 | 社内保存・随時 |
| 身体拘束廃止 | 身体的拘束等の適正化のための指針 | 社内保存・実地指導時確認 |
| 虐待防止 | 虐待防止指針・研修計画・担当者の選定 | 社内保存・実地指導時確認 |
| 非常災害 | 非常災害計画・BCP・訓練スケジュール | 市区町村・消防署 |
| 運営推進会議 | 開催スケジュール・議事録様式 | 議事録公表 |
| 記録保存 | 記録様式・保存場所・廃棄ルール | 社内保存(2年間) |
収支の見通しを立てながら書類・体制整備を進めていくために、「認知症グループホーム収支シミュレーター」もご活用ください。開業の全体の流れは「認知症グループホームの開業手順」で確認できます。
運営基準満たすための内部チェックの方法
運営基準への対応は、年に1回以上の内部点検を行うことで、実地指導時の指摘を減らすことができます。添写構成の一例を以下に示します。
| 項目 | 確認内容 | 連指導時の確認ポイント |
|---|---|---|
| 人員基準 | 勤務表と実務の一致性 | 夜勤不在の有無・管理者の局 |
| 記録保存 | 2年間の保存状況 | 紝失・欠部の有無 |
| 苦情対応 | 苦情記録の整備状況 | 改善内容の記載の有無 |
| 身体拘束廃止 | 指针の整備・記録の保存 | 煢年や㐩ないの自己申告ラベルは使わない |
| 虞待防止 | 委員会議事録・研修記録 | 年回以上の実施実績 |
| 運営推進会議 | 議事録の保存・公表 | 2か月に1回以上の開催実績 |
運営基準違反と減算の関係
運営基準満たさない場合、加算の減算または返還請求の対象となる場合があります。たとえば、身体拘束を行ったにもかかわらず記録がありった場合は、身体拘束廃止未実施減算の対象となります。また、年度の処遇改善加算の実績報告書と実際の取り組みに齬齠がある場合は加算の返還を求められることがあります。
加算の資法要件や減算の内容は「加算一覧」で確認できます。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」で取り組んでください。

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