認知症対応型共同生活介護(認知症GH)では、高齢者を対象にしているため、感染症が発生した際の重症化リスクが高く、感染対策の日常的な徹底が不可欠です。この記事では、スタンダードプリコーション(標準予防策)の基本・感染症発生時の対応・記録・報告義務を整理します。
スタンダードプリコーション(標準予防策)の基本
スタンダードプリコーションとは、「すべての血液・体液・分泌物・排泄物・粘膜・傷のある皮膚は感染性があるとみなして対応する」という考え方です。特定の入居者に感染症がある場合だけでなく、全ての介護場面で適用します。
| 場面 | 対応の基本 |
|---|---|
| 手洗い・手指衛生 | ケアの前後・食事前後・トイレ介助後・排泄物処理後は必ず手洗い・手指消毒 |
| 手袋の使用 | 血液・体液・排泄物に触れる可能性がある場面で着用 |
| マスク・ゴーグルの使用 | 飛沫・血液等が目・口・鼻に入る可能性がある場面で着用 |
| ガウン・エプロンの使用 | 衣服・皮膚が汚染される可能性がある場面で着用 |
| 鋭利物の取り扱い | 使用済み注射針等は専用容器に廃棄・リキャップしない |
認知症GHで特に発生しやすい感染症と対策
高齢者施設で発生しやすい感染症と認知症GHでの対策ポイントを整理します。
| 感染症 | 発生しやすい要因 | 主な対策 |
|---|---|---|
| インフルエンザ | 入居者・職員の免疫低下・集団生活 | 予防接種の推進・発熱時の早期隔離・マスク着用の徹底 |
| 新型コロナウイルス感染症 | 無症状感染者からの感染・高齢者の重症化リスク | 定期検査・ワクチン接種・換気・マスク |
| ノロウイルス(食中毒・感染性胃腸炎) | 嘔吐物・糞便を介した接触感染 | 嘔吐物の適切な処理・手洗いの徹底・次亜塩素酸ナトリウムによる消毒 |
| 疥癬(かいせん) | 直接・間接接触による感染・高齢者に多い | 症状の早期発見・隔離・寝具の処理 |
感染症発生時の報告・対応の流れ
感染症が発生した場合の報告・対応の流れを整理します。
- 発生の確認(発熱・下痢・嘔吐等の症状を持つ入居者・職員の把握)
- 医師(協力医療機関)への報告・指示の確認
- 市区町村への報告(一定規模以上の発生は感染症法・食品衛生法に基づく報告が義務)
- 家族への連絡(状況説明・面会制限の告知)
- 感染拡大防止措置(隔離・消毒・職員の健康管理)
- 記録・発生状況の分析・再発防止策の検討
感染症の報告義務と行政への届出
感染症の発生状況によっては、行政への届出が必要です。
- 同一施設で10名以上・または全入居者の半数以上が感染症・食中毒の疑いがある場合:都道府県・市区町村への報告義務(厚生労働省通知「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」)
- 特定の感染症(結核・インフルエンザ等の一類〜五類感染症):感染症法に基づく医師からの届出が必要
感染症BCPの策定については「BCPの義務と策定手順」、法定研修での感染症研修は「法定研修の義務」で確認できます。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
感染対策委員会の設置と役割
感染症・食中毒の発生リスクを下げるために、感染対策委員会(または感染対策担当者の指名)を設置することが推奨されます(一定規模以上の施設では義務)。委員会の役割は以下のとおりです。
- 感染対策マニュアルの整備・定期的な更新
- 職員研修の企画・実施
- 感染発生時の対応記録の集約・分析
- 保健所・協力医療機関との連携体制の確認
感染対策マニュアルに記載すべき事項
感染対策マニュアルには以下の内容を記載し、全職員が参照できる場所に保管します。
- スタンダードプリコーションの具体的な手順(手洗い・PPEの使用)
- 各感染症の感染経路・症状・予防対策(インフルエンザ・ノロ・COVID-19等)
- 感染症発生時の隔離・消毒手順
- 市区町村・保健所・協力医療機関への連絡先と報告基準
- 感染症の流行期の面会制限の基準
ノロウイルス発生時の具体的な対処手順
高齢者施設でのノロウイルス対応は特に注意が必要です。以下の手順を確認・準備しておきましょう。
- 嘔吐物・下痢物の処理:マスク・手袋・エプロン着用で処理。1,000ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムで消毒
- 感染者の隔離:可能な限り個室で管理(共用のトイレを分ける)
- 環境消毒:ドアノブ・手すり・水道の蛇口を500ppmの次亜塩素酸ナトリウムで消毒
- 職員の管理:嘔吐・下痢症状がある職員は勤務を外す・回復後48時間経過後に復帰
感染症BCPとの連携については「BCPの義務と策定手順」、感染症研修の実施方法は「法定研修の義務」でご確認ください。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
感染対策に関するよくある質問
Q: 職員の予防接種(インフルエンザ・COVID-19)は義務ですか?
法令上の義務ではありませんが、入居者への感染リスクを下げるために推奨されています。就業規則等で事業所として方針を定め、費用補助を行う事業所も多いです。
Q: 入居者が感染症にかかった場合、入院させる必要がありますか?
必ずしも入院が必要なわけではありません。協力医療機関の医師の指示に従い、事業所での療養が可能かを判断します。事業所での療養が可能な場合は、個室での隔離・消毒を徹底しながらケアを継続します。
Q: 感染対策に使える補助金はありますか?
地方創生臨時交付金・介護施設等への感染拡大防止支援事業(都道府県・市区町村)など、時期によって補助金が設けられることがあります。最新情報は都道府県・市区町村の介護保険担当課に確認してください。
(根拠:平成18年厚生労働省令第34号第93条、厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」)収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
まとめ
認知症GHの感染対策は、スタンダードプリコーションの徹底・感染対策マニュアルの整備・年2回以上の研修と訓練・発生時の迅速な報告・対応が主な義務の内容です。ノロウイルス・インフルエンザ・COVID-19等の施設内流行は、適切な予防策の有無によって感染拡大の速度が大きく変わります。感染対策マニュアルの整備・職員への周知・BCPとの連動によって、日常からの備えを整えておきましょう。感染症BCPの策定は「BCPの義務と策定手順」でご確認ください。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
感染対策は職員の研修・訓練と一体で進めることが効果的です。感染対策の知識が職員全員に浸透しているかを年1〜2回の研修で確認し、発生時の対応手順を実際に訓練することで、緊急時に適切に動ける体制をつくれます。法定研修との連動については「法定研修の義務」をご参照ください。感染症発生時のBCPとの連動は「BCPの義務と策定手順」で確認できます。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。
(根拠:平成18年厚生労働省令第34号第93条(感染症・食中毒の予防及び蔓延防止)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)、食品衛生法、厚生労働省「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」)
開業・運営に関する収支全体の試算には「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご利用ください。加算や稼働率の条件を変えながらシミュレーションできます。

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