認知症GHの加算一覧:月収入への影響額と取得の優先順位

認知症GH(1ユニット9人・その他地域・単価10.00円)で取得できる主な加算の月額影響額は、処遇改善加算Ⅰが約39,000〜42,000円(基本報酬の18.6%)で最大です。夜間支援体制加算Ⅰが約13,700円、医療連携体制加算Ⅰイが約15,600円と続きます。ただし処遇改善加算は全額を職員の賃金改善に充てる義務があるため、事業者の収支改善に直接貢献するのは夜間支援体制加算・医療連携体制加算・認知症専門ケア加算です。

主な加算の単位数と月額影響試算

以下は1ユニット9人・その他地域(単価10.00円)・30.4日/月で試算した月額影響額です(令和6年厚生労働省告示第128号)。

加算名 単位数/日 月額影響額の試算(9人・30.4日) 要件の概要
夜間支援体制加算Ⅰ 50単位 約13,680円 夜間専従の介護従業者を配置
夜間支援体制加算Ⅱ 25単位 約6,840円 夜間対応できる体制(専従でない)
医療連携体制加算Ⅰイ 57単位 約15,596円 看護師が24時間対応・訪問・緊急時に対応
医療連携体制加算Ⅰロ 47単位 約12,859円 看護師が随時対応(訪問は行わない)
医療連携体制加算Ⅰハ 37単位 約10,123円 看護師が定期的に訪問
認知症専門ケア加算Ⅰ 3単位 約820円 研修修了者が入所者の50%以上担当・自立度ランクⅢ以上50%以上
認知症専門ケア加算Ⅱ 4単位 約1,094円 Ⅰの要件+指導者配置・他職員への指導実施
処遇改善加算Ⅰ 基本報酬×18.6% 約38,000〜42,000円 キャリアパス要件等・全額を職員賃金改善に充てる義務あり

※月額影響額は概算です。実際の金額は要介護度の構成・算定日数・算定要件によって異なります。処遇改善加算の月額は基本報酬に他の加算を加えた額に18.6%を乗じた値で、上記の試算では要介護3(824単位)×9人×30.4日×10.00円を基準としています。

処遇改善加算は事業者の収支改善に直接貢献しない

処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)は月額40万円前後と金額は大きいですが、算定した全額を職員の賃金改善に充てることが義務付けられています(届出・実績報告が必要)。事業者の手取り収入になるわけではないため、収支差率の改善には直接貢献しません。ただし、賃金水準を高めることで採用・定着に貢献し、間接的に稼働率の維持につながります。詳しくは処遇改善加算の記事を参照してください。

加算取得の優先順位

事業者の収支改善(収支差率の向上)に直接貢献する加算の優先順位は以下のように整理できます。

第1優先:夜間支援体制加算(Ⅰ またはⅡ)

夜間の専従・待機体制の整備は人員確保の観点から開業時に決まります。加算Ⅰ(50単位/日)を取るには夜間専従の介護従業者を配置する必要があり、人件費が増えます。加算Ⅱ(25単位/日)は夜間対応できる体制で算定可能です。夜間支援体制の詳細は夜間支援体制加算の記事を参照してください。

第2優先:医療連携体制加算(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅰハのいずれか)

看護師との連携体制を整えることで月10,000〜15,000円程度の収入増になります。自法人に看護師がいない場合は、訪問看護事業所との委託契約で対応できます。詳しくは医療連携体制加算の記事を参照してください。

第3優先:認知症専門ケア加算(ⅠまたはⅡ)

月額820〜1,094円と金額は小さいですが、研修修了者の配置が条件です。管理者・計画作成担当者が認知症介護実践者研修を修了していれば、別途人員を追加せずに算定できる場合があります(自立度ランクⅢ以上が50%以上の要件との両立が必要)。詳しくは認知症専門ケア加算の記事を参照してください。

複数加算を組み合わせた場合の月収入試算

夜間支援体制加算Ⅱ+医療連携体制加算Ⅰロ+認知症専門ケア加算Ⅰ+処遇改善加算Ⅰを組み合わせた場合(要介護3・9人・その他地域):

  • 基本報酬:824単位×9人×30.4日×10.00円≒約225,300円/月
  • 夜間支援体制加算Ⅱ:25単位×9人×30.4日×10.00円≒約6,840円/月
  • 医療連携体制加算Ⅰロ:47単位×9人×30.4日×10.00円≒約12,859円/月
  • 認知症専門ケア加算Ⅰ:3単位×9人×30.4日×10.00円≒約820円/月
  • 小計(処遇改善加算前):約245,819円/月
  • 処遇改善加算Ⅰ(18.6%):約45,722円/月(全額職員賃金改善に充当)
  • 合計:約291,541円/月

加算を取得しない場合(基本報酬のみ)の225,300円と比較すると、66,241円の差になります。このうち事業者の収支改善に直接貢献するのは処遇改善加算を除いた約20,519円/月です。

収支全体の試算は認知症GH収支シミュレーターで確認できます。収支差率との関係は儲かるかの記事を参照してください。

加算取得のための準備スケジュール

加算を開業当初から算定するためには、指定申請の段階から要件を満たす体制を整える必要があります。

加算 開業前の準備 算定開始のタイミング
処遇改善加算 加算取得の届出(介護給付費算定に係る体制等に関する届出)・キャリアパス要件の整備 届出月の翌月から算定可
夜間支援体制加算 夜間の人員配置計画の確定・体制の届出 届出月の翌月から算定可
医療連携体制加算 看護師との契約・体制の届出 届出月の翌月から算定可
認知症専門ケア加算 研修修了者の確保・入所者の自立度ランクの確認・体制の届出 要件充足後の届出翌月から

加算の体制届出は、毎月15日(自治体によって異なる場合があります)を締切とし、翌月から算定が始まるのが一般的です。開業月から算定するためには、指定申請と同時に体制届出を行う必要があります。

加算と収支差率の関係

全国平均収支差率3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)は、処遇改善加算を除く加算を適切に取得した上での数字です。加算を取得していない事業所では収支差率がさらに低くなります。稼働率の維持と合わせて、取得できる加算をすべて届け出ることが収支改善の基本です。

収支の詳細は認知症GH収支シミュレーターで加算の有無を切り替えながら確認できます。儲かるかの記事も参照してください。

加算別の月間収入試算(1ユニット9人・その他地域)

加算名 単位数 月間収入目安 取得難度
処遇改善加算Ⅰ 18.6% +3.5〜4.0万円 中(書類整備が必要)
夜間支援体制加算Ⅰ 50単位/日 +13,680円 低(夜間常駐1名確保)
医療連携体制加算Ⅰイ 57単位/日 +15,590円 中(看護師連絡体制)
認知症専門ケア加算Ⅱ 4単位/日 +1,094円 高(リーダー研修修了者2名)
看取り介護加算(死亡前4〜30日) 72単位/日 月1件で+1.9万円 中(指針整備・家族同意)

上記の月間収入は1ユニット9人・単価10.00円・月稼働30.4日で計算しています。処遇改善加算は全額を職員の賃金改善に充てる義務があるため、事業者の手取りにはなりませんが、職員の採用・定着効果があります。

加算取得の優先順位と理由

まず取得すべき加算の順位は以下の通りです。

  1. 処遇改善加算Ⅰ:職員確保の原資になる。取得しないと採用競争で不利になる
  2. 夜間支援体制加算Ⅰ:夜間常駐1名を確保するだけで取得でき、費用対効果が高い
  3. 医療連携体制加算(Ⅰイまたは委託ⅠR):月15,000〜17,000円の収入増・看取り体制の整備にもつながる
  4. 認知症専門ケア加算:リーダー研修の修了者が揃えば比較的取得しやすい
  5. 看取り介護加算:指針・同意書・記録の整備が必要だが、看取りの実績が事業所の信頼につながる

加算取得後に発生する維持コスト

加算を取得すると、実地指導での確認書類(体制届・計画書・実績報告書)の整備が毎年度必要になります。特に処遇改善加算は年度ごとの計画書・実績報告書の提出義務があり、書類不備は加算の返還を求められる可能性があります。加算を取得した際は、書類管理の体制も合わせて整備することが重要です。

出典

  • 令和6年厚生労働省告示第128号(指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準)
  • 令和7年介護事業経営実態調査(厚生労働省)収支差率3.0%

※試算は参考値です。実際の算定額は月の日数・要介護度の構成・算定要件の充足状況によって異なります。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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