小規模多機能型居宅介護の機能訓練体制加算は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等の機能訓練指導員を配置し、登録者に個別の機能訓練を提供する場合に算定できる月額加算です。算定要件・機能訓練指導員の職種・訓練計画の作成・LIFE連携との関係を整理します。
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機能訓練体制加算とは
機能訓練体制加算は、機能訓練指導員を配置して登録者に機能訓練(リハビリテーション)を実施した場合に算定できる月額加算です。要介護度別の基本報酬に上乗せして算定します。
小規模多機能型居宅介護の人員基準には機能訓練指導員の配置は必須ではありません。加算として自主的に配置することで、より高いケアの提供と収入増加が同時に実現できます。
機能訓練体制加算の単位数は令和6年度改定で見直されています。具体的な単位数は「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第126号)で確認してください。
機能訓練指導員として認められる職種
機能訓練指導員として認められる職種は次の通りです。
| 職種 | 略称 |
|---|---|
| 理学療法士 | PT |
| 作業療法士 | OT |
| 言語聴覚士 | ST |
| 看護師・准看護師 | — |
| 柔道整復師 | — |
| あん摩マッサージ指圧師 | — |
| 鍼灸師(一定の実務経験が必要) | — |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が最も機能訓練の専門性が高いとされています。看護師・准看護師でも機能訓練指導員として配置できますが、医療系資格のある方の配置が望ましいとされています。
機能訓練指導員の配置形態
機能訓練指導員は、常勤・非常勤のどちらでも配置できます。小規模多機能では、次のような配置形態が一般的です。
- 週1〜2回の非常勤配置:理学療法士や作業療法士を週1〜2日のパート・非常勤として雇用する方法。機能訓練が必要な利用者に集中的に対応できます
- 訪問看護ステーションとの連携による配置:近隣の訪問看護ステーションと連携し、リハビリ職(PT・OT)が事業所に来て機能訓練を実施する方法(ただし加算算定の要件を満たすかどうかは確認が必要です)
- 既存の看護職員が機能訓練指導員を兼務:看護師が機能訓練指導員を兼務する場合、専門的な機能訓練の提供が限定されますが、兼務自体は認められています
個別機能訓練計画の作成
機能訓練体制加算を算定するには、登録者ごとに個別機能訓練計画を作成することが要件です。計画には次の内容を記載します。
- 利用者の現在の状態の評価:ADL(日常生活動作)・IADL(手段的日常生活動作)の現状と目標
- 訓練の目標:「1か月後に杖なしで10メートル歩行できる」など具体的な目標設定
- 訓練内容:機能訓練指導員が実施する訓練の種類・頻度・時間
- 担当職員:機能訓練指導員の氏名・職種
- 本人・家族への説明と同意:計画内容の説明と同意の署名
計画は定期的に見直し(3か月ごとなど)、効果の評価と訓練内容の更新を行います。見直しの記録も保管が必要です。
LIFE(科学的介護情報システム)との連携
令和3年度改定から始まった「科学的介護推進体制加算」(LIFE連携加算)では、機能訓練の実施記録をLIFEのデータベースに送信することで加算が算定できます。
LIFEへの送信データには、利用者の状態(ADL・認知機能・栄養状態等)と実施した機能訓練の内容が含まれます。LIFEに蓄積されたデータは、厚生労働省から事業所にフィードバックされ、ケアの改善に活用されます。
機能訓練体制加算を算定する事業所がLIFE連携加算も算定する場合、業務の記録・送信の仕組みを整えることで二重に収入を積み上げられます。ただしLIFEへのデータ入力の手間が増えるため、ICT(介護ソフト等)の活用が前提になります。
算定した場合の収入への影響
機能訓練体制加算は月額加算(1人あたりの月次報酬に上乗せ)です。対象となる登録者全員に算定できるため、登録者数が多いほど加算収入の増加幅が大きくなります。
具体的な単位数は告示でご確認いただく必要がありますが、機能訓練指導員の人件費(非常勤・週1〜2日の場合)と加算収入の増加額を比較して、費用対効果を試算することが重要です。
実地指導で確認されること
機能訓練体制加算を算定している事業所への実地指導では、次の点が確認されます。
- 機能訓練指導員の資格・雇用形態(勤務表・労働契約書等)
- 個別機能訓練計画の作成・保管(全対象者分)
- 訓練の実施記録(実施日・時間・内容・実施者)
- 計画の定期的な見直し記録
- 本人・家族への説明と同意書
記録が不完全な場合、算定を取り消されて返還を求められることがあります。開業前から記録の様式を整備し、担当職員への説明を行っておくことをお勧めします。
開業から算定するかどうかの判断
開業初期から機能訓練体制加算を算定するためには、開業前から機能訓練指導員を確保しておく必要があります。PT・OT等の確保は、介護職員と同様に採用の難易度が高い地域もあります。
開業初期は登録者が少なく、加算収入の絶対額も小さくなります。まず基本の人員体制・サービスの安定に集中し、登録者数が増えてから機能訓練指導員を採用・配置するという段階的な方針をとる事業所もあります。
機能訓練の具体的な内容
機能訓練指導員が実施する機能訓練の内容は、利用者の状態・目標に応じてさまざまです。小規模多機能で実施されることが多い訓練の種類を整理します。
| 分野 | 訓練の内容 | 担当に向いている指導員 |
|---|---|---|
| 歩行・移動 | 歩行練習・杖歩行・段差の昇降・屋外歩行 | 理学療法士(PT) |
| 上肢機能 | 手の巧緻性・日常動作(食事・更衣・整容等)の訓練 | 作業療法士(OT) |
| 嚥下・言語 | 口腔機能訓練・嚥下訓練・コミュニケーション支援 | 言語聴覚士(ST) |
| ADL全般 | 入浴・トイレ・移乗など日常生活動作の訓練・指導 | PT・OT・看護師 |
| 認知機能 | 認知機能を維持するための活動(回想法・作業活動等) | OT・看護師 |
機能訓練指導員の採用と雇用の実務
機能訓練指導員(PT・OT・ST等)の採用は、介護職員の採用とは異なる市場での採用活動が必要です。採用方法の選択肢を整理します。
- ハローワーク:介護職員の採用と同様に利用できます。PT・OT・STの求人の掲載数は多くありませんが、費用がかかりません
- リハビリ系の求人サイト:PT・OT・ST専門の転職・求人サイトに掲載することで、リハビリ職を専門に探している人材にアプローチできます
- 地域の理学療法士会・作業療法士会:各都道府県の士会に求人の掲載・紹介を依頼できる場合があります
- 近隣の医療機関・介護施設への声かけ:訪問看護ステーションや病院の通所リハビリ等で働くPT・OT・STに非常勤での協力を依頼する方法
非常勤(週1〜2日)の配置で算定要件を満たせる場合は、常勤フルタイムの採用ではなく非常勤採用から始める方法が費用を抑えられます。
通所介護の「個別機能訓練加算」との違い
通所介護(デイサービス)には「個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)」という加算があります。名称が似ていますが、小規模多機能の「機能訓練体制加算」とは別の制度です。
| 小規模多機能 機能訓練体制加算 | 通所介護 個別機能訓練加算 | |
|---|---|---|
| 算定の単位 | 月額(登録者1人ごと) | 1日(通所利用日ごと) |
| 要件の概要 | 機能訓練指導員を配置し機能訓練を実施 | 機能訓練指導員を配置し個別訓練計画を作成・実施 |
| LIFE連携 | 科学的介護推進体制加算として別途算定 | (Ⅱ)はLIFEへのデータ送信が要件 |
小規模多機能は月額定額制のため、加算も月額単位での算定が基本です。通所介護の日単位の加算構造とは異なります。
LIFE連携加算(科学的介護推進体制加算)との組み合わせ
機能訓練体制加算を算定している場合、「科学的介護推進体制加算(LIFE連携加算)」も合わせて算定することで収入を積み上げられます。
科学的介護推進体制加算は、利用者の状態・ケアの実施情報をLIFE(科学的介護情報システム)に送信し、フィードバックを活用してケアの改善を図ることを要件とした加算です。
LIFEへのデータ送信は、介護ソフト(ICT)を使うことで作業負担を抑えられます。導入コスト(ソフトウェア費用)と加算収入の増加額を比較して、導入の可否を判断することをお勧めします。
機能訓練を通じた集客・差別化
機能訓練を充実させることは、加算収入の確保だけでなく、事業所の特徴づけにもなります。「PT・OTが在籍しリハビリに力を入れている小規模多機能」という特徴は、次のような集客効果が期待できます。
- 退院直後で在宅でのリハビリを必要とする利用者の受け皿になれる
- 「介護保険のリハビリが使いたいが、通所リハビリに通う体力がない」という方に選ばれる
- 地域包括支援センター・医療機関からの紹介につながりやすくなる
機能訓練の対象者の選定と優先順位の付け方
登録者の中には機能訓練の効果が見込める方と、現状維持・緩和ケアが優先される方がいます。機能訓練指導員の時間は限られているため、対象者の選定と優先順位の設定が重要です。
一般的な優先順位の考え方は次の通りです。
- 高優先:退院後で在宅での機能回復が期待できる方・廃用症候群の進行を防ぎたい方・本人が機能訓練を強く希望している方
- 中優先:現状の機能を維持することが重要な方・転倒リスクが高く歩行訓練が有効な方
- 低優先・経過観察:認知症が重く訓練への参加が難しい方・体調が安定していない方
優先順位は医師・看護職員・介護職員とのカンファレンスで決定し、定期的に見直します。機能訓練計画に優先順位の根拠を記載しておくことで、実地指導でも説明しやすくなります。
機能訓練体制加算の届出手続き
機能訓練体制加算を算定するには、市区町村への届出が必要です。届出内容は次の通りです。
- 届出書類:加算届出書・機能訓練指導員の資格証のコピー・勤務形態の確認資料
- 届出のタイミング:算定しようとする月の前月末までに届け出ることが一般的
機能訓練指導員が退職・変更になった場合、要件を満たさなくなる場合は速やかに届出の内容を変更または取り消す手続きが必要です。
機能訓練指導員の採用と確保の実務
機能訓練指導員は小規模多機能での配置が難しい職種の一つです。PT・OT・STは病院・通所リハビリとの競合が多く、採用市場では引き合いが強い状態が続いています。
確保の選択肢として次の方法があります。
- 常勤での採用:機能訓練に専念する職員として配置。採用コストは高いが体制が安定する
- 兼務での採用:介護職員やサービス提供責任者が機能訓練指導員の資格も持つ場合に兼務として配置できる(要件の確認が必要)
- 非常勤・週1回の配置:週1回以上の勤務で基準を満たす場合があるため、PT・OTのフリーランスや副業を利用する方法もある
採用の際は、機能訓練指導員の資格証のコピーを必ず保管してください。届出書類に添付する場合があります。
機能訓練の実施頻度と記録の残し方
機能訓練体制加算を算定するためには、機能訓練を実際に実施し、その記録を残すことが必要です。機能訓練計画に基づいた実施記録がないと、実地指導で算定根拠なしと判断される場合があります。
記録として残すべき内容は次の通りです。
- 機能訓練計画書(目標・訓練内容・頻度・担当者の署名)
- 機能訓練の実施日・内容・実施時間・反応の記録(記録者のサインも必要)
- 定期的な計画の見直し(少なくとも3か月ごとが目安)・見直し後の計画書の更新
訓練の頻度は利用者の状態によって異なりますが、個別機能訓練計画に記載した頻度・回数どおりに実施することが重要です。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
- 令和6年度介護報酬改定の概要(厚生労働省)
- 科学的介護情報システム(LIFE)について(厚生労働省)
この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。報酬改定により要件・単位数は変更されることがあります。
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