認知症GHは1ユニット5〜9人で最大3ユニット(定員27人以下)まで設置できます(平成18年厚生労働省令第34号)。ユニット数が増えるほど収入規模は大きくなりますが、夜間の人件費は1ユニットごとに1名以上の常駐が必要なため、ユニット数が増えても夜間人件費は比例して増えません。この構造が3ユニットほど規模が大きいほど収支が改善しやすい要因のひとつです。
ユニット数別の基本的な収入規模(試算)
以下は、要介護3・稼働率90%・その他地域(単価10.00円)・処遇改善加算Ⅰ(18.6%)・夜間支援体制加算Ⅱ(25単位/日)を取得した場合の月間収入の試算です。
| ユニット数 | 定員 | 基本報酬(月) | 夜間加算(月) | 処遇改善加算(月) | 合計(月) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1ユニット | 9人 | 約203万円 | 約6.1万円 | 約38万円 | 約247万円 |
| 2ユニット | 18人 | 約406万円 | 約12.2万円 | 約77万円 | 約495万円 |
| 3ユニット | 27人 | 約609万円 | 約18.3万円 | 約115万円 | 約742万円 |
計算の前提:基本報酬=824単位(要介護3・1ユニット)または812単位(2ユニット以上)×10.00円×30.4日×稼働率90%×定員人数。夜間支援体制加算Ⅱ=25単位×10.00円×定員人数×30.4日。処遇改善加算=(基本報酬+夜間加算)×18.6%。
夜間体制の人件費構造の違い
夜間は全ユニットを通じて介護従業者1名以上の常駐が必要です(平成18年厚生労働省令第34号第105条)。これは「1ユニットにつき1名」ではなく「事業所全体で1名以上」の意味です。つまり、1ユニットでも3ユニットでも、夜間専従スタッフの最低人数は1名です。
ただし実際の運営では、3ユニット27人の見守りを夜間1名で行うことは難しいため、2〜3名体制を組む事業所もあります。夜間専従スタッフの人件費は固定費として重く、定員が少ないほど1人あたりの負担が大きくなります。
| ユニット数 | 定員 | 夜間スタッフ(最低) | 夜間人件費(月・1名25万円換算) | 定員1人あたり夜間人件費 |
|---|---|---|---|---|
| 1ユニット | 9人 | 1名 | 約25万円 | 約2.8万円/人 |
| 2ユニット | 18人 | 1〜2名 | 約25〜50万円 | 約1.4〜2.8万円/人 |
| 3ユニット | 27人 | 1〜3名 | 約25〜75万円 | 約0.9〜2.8万円/人 |
日中の人員配置と人件費の違い
日中の介護従業者は、要介護者3人につき常勤換算1人以上の配置が必要です(平成18年省令第34号第97条)。ユニット数が増えれば必要人数も増えるため、日中の人件費はほぼ定員に比例して増加します。
| ユニット数 | 定員 | 日中最低人員(常勤換算) |
|---|---|---|
| 1ユニット | 9人 | 3人以上 |
| 2ユニット | 18人 | 6人以上 |
| 3ユニット | 27人 | 9人以上 |
収支差率の比較(簡易試算)
以下は、夜間スタッフを1ユニット=1名・2ユニット=2名・3ユニット=2名とし、夜間人件費(月25万円/名)・日中人件費(月25万円×最低人員数)・その他経費(家賃・光熱費・食材費等、月1ユニット50万円と仮定)で計算した簡易試算です。実際の収支は施設の設備・採用状況・加算取得状況によって大きく異なります。
| ユニット数 | 月間収入(試算) | 人件費(試算) | その他経費(試算) | 収支差(試算) |
|---|---|---|---|---|
| 1ユニット | 約247万円 | 約100万円 | 約50万円 | 約97万円(差率約39%) |
| 2ユニット | 約495万円 | 約200万円 | 約100万円 | 約195万円(差率約39%) |
| 3ユニット | 約742万円 | 約275万円 | 約150万円 | 約317万円(差率約43%) |
この試算は人件費を最低人員×25万円/名という単純な仮定で算出したものであり、実態とは大きく異なる場合があります。実際の開業検討では、採用想定・地域の人件費水準・物件費等を個別に入力して試算することが重要です。収支の詳細は認知症GH収支シミュレーターでご確認ください。
初期費用の目安と規模の選び方
ユニット数が多いほど物件の広さが必要になり、建築・改修費用も増加します。一方で、稼働が安定した後の収益効率は大きいユニット(3ユニット)で有利になる傾向があります。初期費用を抑えたい場合は1ユニットからはじめ、需要の手応えをつかんでから増設を検討する方法もありますが、建物の増設は簡単ではないため、物件選定の段階で将来の拡張性を考慮することが望ましいです。
地域の需要と供給も確認する
認知症GHは地域密着型サービスのため、市区町村が指定します(介護保険法第42条の2)。地域によっては指定枠が限られており、計画した定員数の指定が得られないケースもあります。事前に市区町村の介護保険担当課に相談し、指定可能な定員・ユニット数を確認することが必要です。
開業全体の流れについては開業手順の記事、損益分岐点の稼働率については損益分岐点の記事もあわせてご覧ください。
ユニット数別の収支比較(稼働率85%・その他地域)
| 項目 | 1ユニット(9人) | 2ユニット(18人) | 3ユニット(27人) |
|---|---|---|---|
| 月収入(基本報酬・要介護3) | 約191万円 | 約371万円 | 約556万円 |
| 人件費(概算70%) | 約134万円 | 約260万円 | 約389万円 |
| 夜間専従コスト | 約15万円 | 約15万円(共有) | 約15万円(共有) |
| 収支差(概算) | 約42万円 | 約96万円 | 約152万円 |
夜間専従者は全ユニット通じて1名で良いため(省令第106条)、ユニット数が増えるほど夜間コストの1人あたり負担が軽くなります。一方、初期費用と家賃・光熱費等の固定費もユニット数に比例して増えます。
地域の需要を調べる方法
開業予定地の認知症GHの需要を把握するには、①地域の介護保険の待機者数(市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに確認)、②既存の認知症GH・特別養護老人ホームの稼働状況、③地域の高齢者人口・認知症有病率の推計(厚生労働省「認知症高齢者の日常生活自立度」区市町村別データ)を調査する方法があります。
定員・ユニット数の選択に影響する規制
認知症GHは地域密着型サービスとして市区町村が指定します。整備数が過剰とされる地域では、新規の指定を制限(総量規制)している市区町村もあります(介護保険法第78条の2第4項第2号)。開業前に整備方針・整備計画を市区町村に確認することで、指定を受けられる可能性を判断できます。
2ユニット目を後から増設するケース
まず1ユニットで開業し、稼働率が安定してから2ユニット目を増設するケースもあります。増設には市区町村への変更申請(指定変更)が必要です。また、2ユニット目の居室・共有スペースを同一建物内に確保できる物件であることが前提となります。既存物件で増設が難しい場合は、当初から2〜3ユニット規模の建物を前提とした計画を立てる必要があります。
出典
- 平成18年厚生労働省令第34号(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準)第97条・第105条
- 令和6年厚生労働省告示第128号(指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準)
ユニット増設のタイミングと資金計画
1ユニットで開業して需要を確認した後、2・3ユニットに増設するという方法は現実的に難しい場合があります。認知症GHは市区町村の指定を受けるサービスであり、増設には改めて指定申請が必要です。物件の構造上、増設に対応できない間取りのケースも多く、開業時から将来のユニット数を想定した物件選定が重要です。
採算の目安と地域の需要
認知症GHの全国平均収支差率は3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)です。定員が大きい3ユニットの事業所でも、稼働率が低いと収支が厳しくなります。開業を検討している地域の認知症高齢者の人口・既存事業所の状況・市区町村の第9期介護保険事業計画を確認し、需要と供給のバランスを把握することが収益予測の前提になります。
各ユニット数での損益分岐点の稼働率については損益分岐点の記事で詳しく解説しています。開業資金の全体像は開業資金の記事をご覧ください。

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