すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 訪問介護向け法定研修・訓練キット
訪問介護中に利用者が急変し、心肺停止に至るケースは確かに起きます。在宅の現場では病院や施設と違い、医師・看護師がいません。ヘルパーが一人で対応し、救急車が到着するまでの数分間をつなぐ役割を担わなければならない場面があります。
AED(自動体外式除細動器)と一次救命処置(BLS)の研修は、指定基準で研修の義務化が明記されているテーマではありませんが、「事故発生防止のための具体的な措置」の一環として多くの都道府県・市区町村が事業所に実施を求めています。この記事では、訪問介護の研修でAED・急変対応として伝えるべき内容を整理します。
訪問介護中の急変は「一人現場」という条件下で起きる
通所施設や入所施設では、急変時にスタッフを呼べます。訪問介護ではそうはいきません。ヘルパーが一人で、119番通報・一次救命処置・家族への連絡・管理者への報告を同時並行で進める必要があります。
また、利用者宅の構造によっては、自動体外式除細動器(AED)がどこにあるかを知らないまま訪問していることもあります。「近くにAEDがあるか確認する」という準備の意識も、研修で伝えるべき内容です。
急変発見から119番通報までの手順
訪問中に利用者の意識がなくなった・呼吸が止まったと気づいた場合の初動手順は次のとおりです。日本救急医学会・日本赤十字社のBLSガイドラインに基づきます。
| 手順 | 具体的な行動 |
|---|---|
| ① 安全確認 | 自分自身が安全な場所にいるかを確認する。ガスの臭い・倒れている場所などに注意 |
| ② 意識の確認 | 肩を軽くたたき、大きな声で「大丈夫ですか?」と呼びかける |
| ③ 反応なし→応援・通報 | 119番に電話する。同時に大声で周囲に呼びかけAEDを依頼する(一人の場合はスマートフォンのスピーカーモードで通報しながら動く) |
| ④ 呼吸の確認 | 胸・腹部の動きを10秒以内で確認する。「死戦期呼吸(しゃくり上げるような不規則な呼吸)」も呼吸なしとみなして処置を開始する |
| ⑤ 胸骨圧迫の開始 | AEDが届くまで、または救急隊員が到着するまで続ける |
119番通報後、オペレーターが口頭で胸骨圧迫の指示をしてくれます。電話を切らずにつないだまま動くことが、一人現場では特に重要です。
胸骨圧迫の実施方法
一次救命処置の中心は「胸骨圧迫」です。AEDが届く前・到着前にも、胸骨圧迫を続けることが生存率に影響します。
- 位置:胸の中央(胸骨の下半分)に手のひらの根元を当てる
- 深さ:5cm以上(6cmを超えないよう)沈み込ませる
- 速さ:1分間に100〜120回のテンポ(「♩♩♩♩」のリズム)
- 戻し:圧迫と圧迫の間は、完全に胸を戻す
- 交代:疲れを感じたら別の人と交代。一人しかいない場合は止めずに続ける
人工呼吸については、実施できる場合は30回の胸骨圧迫に対して2回行いますが、感染リスク・技術面の理由で難しい場合は、胸骨圧迫のみを続けることが推奨されています(市民救助者の場合、人工呼吸なしの胸骨圧迫のみでも有効)。
AEDの使い方の基本
AEDは「電源を入れれば音声と表示が案内してくれる」機器です。基本手順は次のとおりです。
| 操作手順 | ポイント |
|---|---|
| 電源を入れる | ふたを開けるだけで自動で電源が入るタイプ、ボタンを押すタイプがある |
| 電極パッドを貼る | 貼る位置はパッドのイラストと音声で案内される。貼った後は乾いた状態で密着させる |
| 解析 | 「離れてください」の案内に従い全員が手を離す。自動で心電図を解析する |
| ショックボタン | 除細動が必要と判断された場合のみボタンが光る。音声の指示に従い押す |
| 胸骨圧迫を再開 | ショックの後、すぐに胸骨圧迫を再開する |
AEDは除細動が必要でない心停止(無脈性電気活動・心静止)には有効ではありませんが、機器が自動で判断するため、ヘルパーが迷わず使用してよいものです。
訪問介護員としてできる範囲と限界
訪問介護員は医療従事者ではありません。一次救命処置(胸骨圧迫・AEDの使用)は資格不要で誰でも行える行為です。一方で、気道確保・静脈注射・薬剤投与などの医療行為は行えません。
研修では「してよいこと(BLS・119番通報・家族・管理者への連絡)」と「してはいけないこと(医療行為)」の境界を明確にすることが重要です。市民がBLSを実施したことで訴追・民事責任を問われた事例はほとんど報告されておらず、刑法上の緊急避難(刑法第37条)にあたると解釈されています。ただし、これを明示的に保証する法律規定は日本には存在しません。研修では「保証がある」という伝え方はせず、「躊躇しないことで救える命がある」という観点を中心に伝えます。
事業所として備えるべきこと
研修のほか、事業所レベルで次の点を確認・整備しておくことが望ましいです。
- 訪問先周辺のAED設置場所を事前に確認する運用(コンビニ・公共施設など)
- 急変時の連絡体制:利用者家族への連絡順・管理者への報告ルートを文書化する
- 定期的なBLS実習の実施(年1回以上を目安に)。消防署の出前講習を活用できる
- ヘルパーが訪問中に急変を発見した場合の記録様式の準備
消防署では事業所向けの普通救命講習を実施しています。都道府県・市区町村によって無料または少額で受講できる場合があるため、担当消防署に問い合わせることをお勧めします。
AED・急変対応研修の記録をキットで管理する
訪問介護向け法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-houmon/)の有料版(14,800円買い切り)には、AED・救急対応を含む急変対応研修の資料・確認テスト・受講記録が含まれます。「一人現場での対応手順」「できることとできないことの境界」「事業所の連絡体制の整備」の3点をカバーしており、サービス提供責任者の研修教材としても使えます。
無料版では虐待防止の1テーマを利用できます。急変対応を含む12テーマすべての利用には有料版が必要です。
あわせて読みたい:訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。
あわせて読みたい:訪問介護の事故・緊急時対応、発生時の手順と報告先の整理。(こちらは転倒・誤嚥・骨折など事故全般の報告・記録手順。この記事は心肺停止の一次救命処置に特化しています)
この記事で確認した根拠
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)事故発生防止規定
- 日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2020」一次救命処置(BLS)
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(平成17年7月26日)※AEDの市民による使用は医師法違反にならないと明示
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 訪問介護向け法定研修・訓練キット


コメント