認知症GHとサービス付き高齢者住宅の違い:制度・費用・対象者

認知症対応型共同生活介護(認知症GH)とサービス付き高齢者住宅(サ高住)は、どちらも高齢者が暮らす施設・住宅ですが、制度の根拠・対象者・提供されるケアの内容・費用の構造が大きく異なります。認知症GHは介護保険法に基づく介護保険サービスで、認知症の診断を受けた要介護者のみが入居できます。サ高住は国土交通省・厚生労働省が所管する賃貸住宅制度であり、要介護でない方も入居できます。

制度の根拠と所管が違う

認知症GHとサ高住は、根拠とする法律からして別の制度です。

項目 認知症GH サービス付き高齢者住宅(サ高住)
根拠法 介護保険法第8条の2(地域密着型サービス) 高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)
所管 厚生労働省・市区町村(指定) 国土交通省・都道府県(登録)
性格 介護保険サービス 賃貸住宅(住まい)
定員 5〜9人(1ユニット)・最大27人 制限なし

入居できる対象者が違う

認知症GHは入居できる対象者が法令で限定されています。

項目 認知症GH サ高住(一般型)
要介護認定 要介護1〜5(必須) 不要(自立・要支援も可)
認知症の診断 認知症の診断があること(必須) 不要
住所地要件 原則として事業所と同一市区町村に住所があること なし

認知症GHは地域密着型サービスのため、原則として事業所と同じ市区町村に住所のある方しか入居できません(介護保険法第78条の2第4項。市区町村が条件を緩和できる場合もある)。サ高住にはこのような住所地の制限はありません。

提供されるケアの内容が違う

認知症GHでは、入居者全員に介護保険の介護サービスが提供されます。介護従業者が24時間体制で対応し、食事・入浴・排泄の介助・認知症ケアを行います。これに対してサ高住(一般型)の提供サービスは、生活相談・安否確認のみが義務とされており、介護サービスは外部の訪問介護等を利用する形になります。

ケアの内容 認知症GH サ高住(一般型) サ高住(介護型)
介護(食事・入浴・排泄) 施設職員が提供 外部の訪問介護を利用 施設職員が提供
生活相談・安否確認 あり あり(義務) あり
夜間対応 介護従業者1名以上常駐 緊急通報システムが中心 施設による
認知症ケア 専門的なユニットケアを提供 外部サービス次第 施設による

費用の構造が違う

費用の構造にも大きな違いがあります。認知症GHの費用は、介護保険自己負担(1〜3割)+食費・居住費・日常生活費(実費)で構成されます。サ高住は賃貸住宅であるため、家賃・管理費が中心で、介護サービスは外部の訪問介護等を別途利用します。

費用項目 認知症GH(目安) サ高住一般型(目安)
介護保険自己負担 月1.5〜7万円程度(要介護度・負担割合による) 外部サービス利用分
家賃・居住費 施設設定(実費) 月5〜15万円程度
食費 施設設定(実費) 施設設定(実費)
合計 月15〜30万円程度(施設・地域・要介護度による) 月10〜30万円以上(介護費込み)

いずれも施設・地域・介護度によって大きく異なるため、目安としてご覧ください。認知症GHの費用の内訳は利用者負担の記事で詳しく解説しています。

補足給付(特定入所者介護サービス費)の適用も異なる

特別養護老人ホームや介護老人保健施設には、低所得者向けの補足給付(特定入所者介護サービス費)制度があり、食費・居住費が軽減されます。認知症GHはこの補足給付の対象外です。サ高住も補足給付の対象外です。低所得の方が費用の軽減を受けられる施設を探している場合は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の検討が必要になります。

開業する側からみた制度の違い

開業する立場からも、両者は大きく異なります。認知症GHは介護保険法に基づく指定を市区町村から得る必要があり、地域密着型サービスとして公募制が採用されている地域では指定枠に限りがあります(開業手順)。これに対してサ高住は都道府県への登録制であり、介護保険の指定は任意(一般型の場合)です。

認知症GHの開業時の収支については収支シミュレーターで試算できます。稼働率・定員・加算の取得状況を変えながら、損益の目安を確認してください。

どちらが向いているか

入居を検討している方(または入居を支援する立場の方)にとって、認知症GHは「認知症の診断があり、要介護1以上で、安定した専門的な介護を小規模な環境で受けたい方」に向いています。サ高住(一般型)は「まだ介護が必要でない、または軽度の高齢者が住み替えを検討する場合」に適しています。

認知症GHの事業者にとっては、サ高住はサービス・制度の競合ではなく、認知症が進行した入居者がサ高住から認知症GHへ移行するという形で連続性のある関係にあります。

費用面での違い(月額の目安比較)

費用項目 認知症GH サ高住(一般型)
介護保険自己負担 1〜3割(サービス費) 1〜3割(外部サービス費)
居住費(月額) 4〜8万円程度 8〜15万円程度(立地により大幅差)
食費(月額) 3〜5万円程度 4〜7万円程度(外部配食含む)
月額合計(目安) 10〜18万円 12〜25万円

認知症GHは住宅型サービスであるため、サ高住より費用が安い傾向にありますが、施設や地域によって大きく異なります。居住費は利用者の所得段階によって負担限度額が設定される場合があります(特定入所者介護サービス費・介護保険法第51条の3)。

入居できる利用者の条件の違い

認知症GHへの入居要件:①要支援2または要介護1以上(要支援2は地域密着型介護予防サービス)、②認知症の診断があること(医師の診断書が必要)、③事業所と同一の市区町村に居住している(地域密着型のため)。サ高住の入居要件:60歳以上(一部50歳以上で障害を持つ方も可)、自立〜要介護まで幅広く受け入れ可能(施設によって異なる)、市区町村をまたいで入居できる。

提供されるサービス内容の違い

認知症GHでは、介護職員が24時間常駐し、食事・入浴・排泄介助等の介護サービスを提供します。グループ単位で家庭的な雰囲気を重視したケアが特徴で、利用者が炊事・洗濯等に参加できる環境を整えています。サ高住(一般型)は居住サービスが中心で、介護サービスは外部の訪問介護・デイサービス等を個別に利用します。介護度が重くなると、外部サービスの利用限度額(区分支給限度額)を超えることがあります。

認知症GHを選ぶべき場合・サ高住を選ぶべき場合

  • 認知症GHが向いているケース:認知症が進行して一人での生活が難しい・家族が24時間の介護に対応できない・認知症に特化したケアを希望する・同一市区町村に住んでいる
  • サ高住が向いているケース:まだ自立度が高い・エリアにこだわって住みたい・将来的な介護ニーズの増大に備えつつ今は自由な生活をしたい・家族が近くに住んでいる

入居を検討している家族が「どちらが合っているか」を判断するには、地域包括支援センターや担当ケアマネジャーへの相談が出発点になります。

出典

  • 介護保険法第8条の2・第42条の2・第78条の2(認知症GHの根拠規定)
  • 高齢者の居住の安定確保に関する法律(サービス付き高齢者向け住宅の根拠法)
  • 平成18年厚生労働省令第34号(認知症GHの設備・人員・運営基準)

開業・経営する立場から見た選択の違い

認知症GHを開業するには、介護保険法に基づく市区町村の指定が必要です。地域密着型サービスとして公募制を採用する自治体も多く、指定が得られるまでに時間がかかる場合があります。また、指定後は年1回以上の実地指導の対象となり、人員・設備・運営基準の遵守が求められます。

サ高住は都道府県への登録で運営でき(一般型の場合)、介護保険の指定は任意です。規制の枠組みは認知症GHより緩やかですが、登録基準(バリアフリー・専用部分の面積・生活相談員の配置等)は満たす必要があります。

利用者の入退居の流れの違い

認知症GHは介護保険サービスであるため、利用にはケアマネジャーが関与します。要介護認定を受けた方が、担当ケアマネジャーを通じて入居の相談・申込みを行うのが一般的な流れです。サ高住は賃貸住宅であるため、住宅としての入居契約が中心で、ケアマネジャーの関与は必須ではありません。

認知症が進行した場合の対応

サ高住(一般型)に入居した方の認知症が進行し、日常的な介護が必要になった場合、サ高住では対応できないケースが出てきます。その場合、認知症GHや特別養護老人ホームへの転居が検討されます。認知症GHは認知症ケアに特化した環境を提供するため、認知症が進行した方の受け皿として機能する側面があります。

認知症GHの開業を検討している方は、開業ガイドや収支シミュレーターで全体像を確認することをおすすめします。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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