消防設備士4類の実技試験(鑑別)は、写真や図を見て答える問題です。選択肢がないため、「自分で書く」必要があります。筆記試験と勉強の仕方が変わるため、「鑑別は何を聞かれるのか」を先に整理しておくと、準備の効率が上がります。
この記事では、鑑別で出やすい4つのパターンを整理します。感知器の外観識別・試験器の種類・設置基準の数値・図記号、それぞれに対して何を覚えればよいかを説明します。
乙4と甲4の実技試験の構成
消防設備士4類の実技試験は、乙4と甲4で問題数が異なります。消防試験研究センターの受験の手引(令和5年度版)に記載されている構成は次のとおりです。
| 区分 | 鑑別 | 製図 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 乙4 | 5問 | なし | 5問 |
| 甲4 | 5問 | 2問 | 7問 |
実技試験(鑑別・製図を合わせた点数)の合格基準は、正解率60%以上です。各科目でも40%以上が必要です。乙4は鑑別5問で構成されます。甲4は鑑別と製図の合計7問で、製図の学習は別に必要です(製図については「甲4の製図問題を解く手順」を参照してください)。
なお、消防試験研究センターは過去問を公表していません。ここで紹介する内容は、規格省令・施行規則・消防庁の点検要領に基づいた範囲から整理したものです。
鑑別で問われる4つのパターン
鑑別試験で出される問題は、大きく4つのパターンに分類できます。
パターン①:感知器の名称を答える(写真・図から識別)
写真や断面図を見て感知器の種類と名称を答える問題です。鑑別の中心になるパターンです。「この感知器は何という種別か」「この感知器の動作原理を答えなさい」という形で出されます。
感知器の種類は、規格省令(火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令)第2条に定義されています。熱・煙・炎の3分類で、外観の特徴を押さえておくと答えやすくなります。
熱感知器の外観の特徴
熱感知器は、感熱の方式によって外観が変わります。
差動式スポット型は、温度の上昇率が一定以上になると作動します(規格省令第2条第2号:「周囲の温度の上昇率が一定の率以上になつたときに火災信号を発信するもので、一局所の熱効果により作動するもの」)。内部にダイヤフラムと空気室を持ち、空気の膨張で接点が閉じる仕組みです。外観はドーム型(丸型)が多く、穴が開いていないように見える形状です。
定温式スポット型は、温度が一定の値以上になると作動します(規格省令第2条第5号:「一局所の周囲の温度が一定の温度以上になつたときに火災信号を発信するもので、外観が電線状以外のもの」)。バイメタルや易溶合金を使います。外観は差動式に似たドーム型ですが、「公称作動温度」を示す色のラベルや印が付いています。色の区分は規格省令第6条第1項第3号で定められており、60℃が赤、70℃が白、80℃が青、90℃が黄、100℃が緑です(110℃以上は2色の斜縞模様)。
補償式スポット型は、差動式と定温式の性能を両方持ちます(規格省令第2条第5号の2:「差動式スポット型感知器の性能及び定温式スポット型感知器の性能を併せもつもので、一の火災信号を発信するもの」)。外観は差動式・定温式と区別しにくいため、ラベルや刻印で見分けます。
差動式分布型は、広い範囲の熱を検出します(規格省令第2条第3号:「広範囲の熱効果の累積により作動するもの」)。空気管式の場合、細い銅管(空気管)を天井に張り巡らせ、検出部(コックとダイヤフラム)は別に設置します。空気管の肉厚は0.3mm以上・外径は1.94mm以上(規格省令第8条第4項)です。外観は空気管と検出部が分かれているため、写真で区別しやすいです。
煙感知器の外観の特徴
イオン化式スポット型は、煙がイオン電流の変化を引き起こすと作動します(規格省令第2条第8号:「一局所の煙によるイオン電流の変化により作動するもの」)。放射性物質(Am-241)を密封線源として内蔵します(規格省令第8条第11号)。外観は光電式スポット型と似ていますが、内部構造が異なります。目視での区別は難しく、銘板の表示で確認します。煙が入る穴(スリット)が側面にあります。
光電式スポット型は、煙が光電素子の受光量を変化させると作動します(規格省令第2条第9号:「一局所の煙による光電素子の受光量の変化により作動するもの」)。光源は半導体素子(規格省令第8条第8号イ)を使います。外観はイオン化式と似ており、銘板で確認します。
光電式分離型は、送光部と受光部が分かれており、広い範囲の煙を検出します(規格省令第2条第10号:「広範囲の煙の累積による光電素子の受光量の変化により作動するもの」)。スポット型と違い、2つの機器が向かい合う形で設置されます。外観で区別しやすい種類です。
炎感知器の外観の特徴
炎感知器は、紫外線や赤外線を受光素子で検出します(規格省令第2条第16号〜第19号)。レンズや受光窓が正面に付いており、熱感知器・煙感知器と外観で区別できます。壁や天井に向けて設置するため、設置向きが水平方向になるものが多いです。
パターン②:試験器の名称と対応する感知器を答える
感知器の作動試験に使う試験器の名称と、どの感知器に使うかを答える問題です。消防庁の「消防用設備等の点検要領(令和3年3月10日)」の自動火災報知設備の試験区分にもとづいて整理します。
| 試験器の名称 | 使用する感知器の種類 |
|---|---|
| 加熱試験器 | 差動式スポット型・補償式スポット型・定温式スポット型(再用型・非再用型)・熱アナログ式スポット型 |
| 加煙試験器 | イオン化式スポット型・光電式スポット型・イオン化アナログ式スポット型・光電アナログ式スポット型 |
| 減光フィルター | 光電式分離型・光電アナログ式分離型 |
| 感知器に適応する試験器 | 炎感知器 |
試験器は種類の名前を正確に書く必要があります。「加熱試験器」と「加煙試験器」の区別は頻出です。「差動式スポット型に使う試験器は?」→「加熱試験器」、「イオン化式スポット型に使う試験器は?」→「加煙試験器」というパターンで練習してください。
光電式分離型に使う試験器が「減光フィルター」である点も、他と異なるためよく出されます。送光部と受光部の間に挿入して、煙の代わりに光量を落とす仕組みです。
パターン③:設置基準の数値を答える
感知器の設置基準に関する数値を答える問題です。施行規則第23条・第24条から主要な数値を整理します。
取付け面の高さと設置できる感知器の種別(規則第23条第4項第2号)
| 取付け面の高さ | 設置できる感知器の種別 |
|---|---|
| 4m未満 | 差動式スポット型・差動式分布型・補償式スポット型・定温式・イオン化式スポット型・光電式スポット型 |
| 4m以上8m未満 | 差動式スポット型・差動式分布型・補償式スポット型・定温式特種若しくは一種・イオン化式1種若しくは2種・光電式スポット型1種若しくは2種 |
| 8m以上15m未満 | 差動式分布型・イオン化式1種若しくは2種・光電式スポット型1種若しくは2種 |
| 15m以上20m未満 | イオン化式スポット型一種・光電式スポット型一種 |
「高さ8m以上15m未満で使える感知器の種類を答えなさい」という形で出されることがあります。差動式スポット型は8m以上では使えない点が問われやすいです。
感知区域の面積の上限(規則第23条第4項第3号)
感知区域の面積の上限は、感知器の種別と取付け面の高さによって変わります。主な組み合わせは次のとおりです。
(注)この表は取付け面の高さが4m未満の場合のみ。4m以上8m未満の場合は下の表を参照。光電式スポット型3種は高さ4m未満にしか設置できない(それより高い場所は選択肢から外れる)。
| 感知器の種別 | 取付け面の高さ | 感知面積(耐火 / その他) |
|---|---|---|
| 差動式スポット型1種 | 4m未満 | 90m² / 50m² |
| 差動式スポット型2種 | 4m未満 | 70m² / 40m² |
| 定温式スポット型特種 | 4m未満 | 70m² / 40m² |
| 光電式スポット型1種・2種 | 4m未満 | 150m² / 75m² |
| 光電式スポット型3種 | 4m未満 | 50m² / 25m² |
| 感知器の種別 | 取付け面の高さ | 感知面積(耐火 / その他) |
|---|---|---|
| 差動式スポット型1種 | 4m以上8m未満 | 50m² / 30m² |
| 差動式スポット型2種 | 4m以上8m未満 | 40m² / 20m² |
| 定温式スポット型特種・1種 | 4m以上8m未満 | 40m² / 20m² |
| 光電式スポット型1種・2種 | 4m以上8m未満 | 150m² / 75m² |
「耐火構造・取付け面高さ4m未満で差動式スポット型2種を使う場合の感知面積は?」→「70m²」のように、高さの条件を問題文から読み取ることが重要です。施行規則第23条第4項第3号ロの完全な表と設置個数の計算については「感知器の設置個数の計算(製図)」も参照してください。
煙感知器の廊下・階段への設置基準(規則第23条第4項第7号)
廊下・通路では歩行距離30m(3種は20m)ごとに1個、階段・傾斜路では垂直距離15m(3種は10m・特定一階段等は7.5m)ごとに1個が必要です。廊下に感知器を何個設置するかを問う問題で使います。
発信機・地区音響装置の距離基準(規則第24条)
発信機は、歩行距離50m以下ごとに1個(規則第24条第8号の2イ)、地区音響装置は水平距離25m以下ごとに1個(規則第24条第5号ニ)です。受信機の操作スイッチは0.8m以上1.5m以下の高さ(規則第24条第2号ロ)です。
パターン④:図記号の識別・記入
感知器や設備の図記号を答える問題、または図記号を見て名称を答える問題です。図記号は国土交通省「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)令和4年版」に定められています。
主要な図記号の一覧は「自動火災報知設備の図記号一覧」にまとめています。鑑別では「写真を見て図記号を答える」または「図記号を見て名称を答える」問題が出ることがあります。
よく出るものは、差動式スポット型・光電式スポット型・発信機・P型受信機・地区音響装置の図記号です。系統図の読み方との組み合わせで問われることもあります。
鑑別の答え方のポイント
鑑別試験は選択肢がないため、答えを自分で書く必要があります。マークシートと違い、「用語の正確さ」が得点に直結します。
感知器の名称は省略しない
「差動式」と書いただけでは不正解になる場合があります。「差動式スポット型」または「差動式分布型」まで書くのが基本です。スポット型・分布型の区別は外観や設置形態から判断できるため、写真問題では確認してから記入します。
「1種」「2種」「特種」の区別も問われる場合があります。感知器の写真に銘板が写っていれば、そこに記載された等級を確認します。銘板が見えない場合は「差動式スポット型」まで書いて等級を省略する、という判断になることもあります。ただし、試験問題の指示文に従うのが基本です。
試験器の名称は正式名称で書く
「熱感知器を試験する器具」という説明では正解にならず、「加熱試験器」と正確に書く必要があります。「加煙試験器」と「加熱試験器」は頻出で間違えやすいため、熱感知器=加熱、煙感知器(スポット型)=加煙、と対応を確認してから答えます。
数値の単位を忘れない
面積の答えには「m²」、距離の答えには「m」の単位を書きます。「70」だけでは不完全で、「70m²」まで書くことが求められます。問題文の指定があれば従いますが、数値だけを書くより単位つきで答える方が安全です。
図記号は太さ・大きさを意識して書く
図記号を手書きで記入する場合、記号の形が曖昧だと採点者に伝わりにくくなります。○(感知器)と●(発信機の円)、□と二重□の違いなど、基本的な形の違いは練習しておきます。
鑑別の学習で押さえる順番
鑑別の準備をするときは、次の順番で進めると効率的です。
最初に、感知器の種別と定義を正確に覚えます。規格省令第2条の定義文は短いので、そのまま読んで理解します。「差動式スポット型=温度の上昇率が一定以上・一局所」「光電式スポット型=煙による光電素子の受光量の変化・一局所」のように、動作原理を言葉で説明できる状態を目指します。
次に、試験器の対応を覚えます。加熱試験器は熱感知器、加煙試験器は煙感知器(スポット型)、減光フィルターは光電式分離型、の3組です。これは点検要領の作動試験の表から来ています。
設置基準の数値は、取付け面の高さの区切り(4m・8m・15m・20m)と感知区域の面積(差動式2種は耐火70m²)を中心に確認します。廊下の歩行距離30mと発信機の歩行距離50mも頻出です。
図記号は「自動火災報知設備の図記号一覧」で確認します。主要な5〜6種類を手で書けるようにしておきます。
問題集で練習する
鑑別の確認問題は、消防設備士4類 AI問題集で練習できます。確認済みの126問(法令共通・法令4類・基礎電気・構造電気・規格・鑑別・製図)のうち、鑑別区分の問題は選択肢を毎回並べ替えて出題されます。記述式の本試験と問い方は異なりますが、各感知器の特徴・試験器の対応・設置基準の数値を確認する練習になります。
無料で126問すべて使えます。AIが作る問題(設置個数の計算など)は1日3問まで無料で、¥980の買い切りで制限なし・模試も使えます。
出典
- 火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令(総務省令・e-Gov法令検索)第2条・第8条・第22条
- 消防法施行規則(総務省令・e-Gov法令検索)第23条・第24条
- 消防庁「消防用設備等(特殊消防用設備等)の点検基準及び点検結果報告書に関する告示(令和3年3月10日)」第1第31 自動火災報知設備の試験区分
- 消防試験研究センター「受験の手引」(令和5年度版)試験科目及び問題数
- 国土交通省「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)令和4年版」p.17-18
民間の参考書・テキストに記載されている内容は、一次資料と照合して確認しています。数値・定義の記述は上記の一次資料を根拠にしています。


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