訪問介護の法定研修 義務テーマと年間回数の一覧

訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。 介護

訪問介護事業所が基準で義務になっている研修・訓練・委員会は、テーマによって回数が違います。

この記事では、5つの義務テーマごとに「何回やればいいか」「根拠はどこか」「記録に何を残すか」を整理します。

義務のある5テーマと回数の一覧

根拠は、指定居宅サービス等の基準(平成11年厚生省令第37号)と、解釈通知「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)です。

テーマ 研修 訓練 委員会
虐待防止 年1回以上(新規採用時には必ず) — 少なくとも年1回以上
身体拘束の適正化 年1回以上(新規採用時には必ず) — なし(訪問介護は委員会設置の義務なし)
感染症の予防・まん延防止 年1回以上(新規採用時には必ず) 年1回以上 おおむね6か月に1回以上
業務継続計画(BCP) 年1回以上 年1回以上 —
非常災害対策 — 定期的に(回数の定めなし) —

「定期的に」とは、解釈通知(老企第25号)により年1回以上を目安とすることが多いですが、自治体ごとに基準が異なる場合があります。指定権者(都道府県・市)の案内でも確認してください。

虐待防止の研修と委員会

根拠条文は、指定居宅サービス等の基準第37条の2(訪問介護の準用)です。

解釈通知(老企第25号)には次のように書かれています。

「職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定訪問介護事業所が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修を実施(年1回以上)するとともに、新規採用時には必ず虐待防止の研修を実施することが重要である。」

「なお、虐待防止委員会は、少なくとも1年に1回は開催することが必要である。」

研修は年1回以上が義務で、新しく職員を採用したときにも必ず実施します。委員会は少なくとも年1回以上の開催が必要です。

虐待防止委員会でやること

虐待防止委員会では、年間の研修計画の作成・振り返り・再発防止策の検討を行います。虐待の疑いがある事案が発生した場合には、その都度開催します。

身体拘束の研修(訪問介護の特例)

根拠条文は、指定居宅サービス等の基準第23条(身体拘束等の禁止)です。

解釈通知(老企第25号)には次のように書かれています。

「職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定訪問介護事業所が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修を実施(年一回以上)するとともに、新規採用時には必ず身体拘束等の適正化の研修を実施することが重要である。」

研修は年1回以上が義務で、新規採用時にも必ず実施します。

訪問介護には委員会の設置義務はない

通所・入所系のサービス(特別養護老人ホーム、通所介護など)には「身体拘束廃止委員会」の設置義務がありますが、訪問介護にはその義務はありません。

ただし、管理者が身体拘束の禁止に関する方針を定め、研修を通じて全職員に徹底することが求められます。緊急やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性・非代替性・一時性の3要件がすべて満たされる必要があります。

感染症の研修・訓練・委員会

根拠条文は、指定居宅サービス等の基準第31条第3項(感染症の予防及びまん延の防止)です。

感染症は3つ(研修・訓練・委員会)すべてに義務があります。

研修:年1回以上

解釈通知(老企第25号)には次のように書かれています。

「定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には必ず感染対策研修を実施することが重要である。」

訪問介護の感染症研修は年1回以上です。施設・通所系のサービスは年2回以上が求められますが、訪問介護は訪問形態のため年1回以上が基準となっています。新規採用時にも必ず実施します。

訓練(シミュレーション):年1回以上

感染症が発生した場合を想定した訓練を、年1回以上実施します。

委員会:おおむね6か月に1回以上

解釈通知(老企第25号)には次のように書かれています。

「おおむね6月に1回以上、定期的に開催するとともに、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じ随時開催する必要がある。」

訪問介護の感染対策委員会は、おおむね6か月に1回以上(年2回以上)の開催が求められます。施設・通所系は3か月に1回以上ですが、訪問形態のため緩和されています。インフルエンザや感染症の流行期には随時開催します。

業務継続計画(BCP)の研修・訓練

根拠条文は、指定居宅サービス等の基準第30条の2(業務継続計画の策定等)です。

研修:年1回以上

解釈通知(老企第25号)には次のように書かれています。

「従業者教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。」

訓練:年1回以上

実際の非常時を想定したシミュレーションとして、年1回以上実施します。訓練後は課題を洗い出し、BCPを見直します。訓練の結果・課題・改善策は記録として保管します。

BCPは、感染症対策と自然災害対策の2種類の作成が求められます。訓練もそれぞれについて実施することが一般的です。

非常災害対策の訓練

訪問介護には施設・通所系のような非常災害対策の専用の条文はありません。業務継続計画(第30条の2)の一部として、自然災害への備えを計画します。第30条(勤務体制の確保等)に関連する規定があります。

解釈通知(老企第25号)に具体的な回数の定めはなく、「定期的に」とされています。消防法に基づく消防用設備の点検や避難訓練については、所轄の消防署に確認してください。

指定権者(都道府県・市)によって年2回以上を推奨している場合があります。指定権者の案内でも確認してください。

記録に残すもの

研修・訓練・委員会はいずれも、記録を保管することが求められます。運営指導(実地指導)では記録の有無が確認されます。

研修の記録

訓練の記録

  • 実施日
  • 参加者名
  • 想定シナリオ
  • 課題と改善策

委員会の記録

  • 開催日
  • 出席者
  • 議題
  • 決定事項

新規採用時の研修は別途必要

虐待防止・身体拘束・感染症の3テーマは、定期研修(年1回以上)とは別に、新規採用時にも必ず研修を実施することが求められています。

年度の定期研修を終えたあとに採用があった場合でも、採用時に研修を行い記録を残してください。

5テーマ以外にやっておきたい研修

基準で義務になっている5テーマ以外にも、訪問介護事業所として押さえておきたい研修テーマがあります。

  • ハラスメント防止:労働施策総合推進法(令和4年改正)で、事業主に相談窓口の設置などの措置義務が定められています。訪問介護では利用者・家族からのハラスメントも課題になるため、対応方針の周知を含めて研修で扱うことを推奨します。
  • 個人情報の保護:個人情報保護法の改正(令和4年施行)に対応した研修。訪問介護は利用者の居宅に入るため、取り扱う情報が多くなります。
  • 認知症の基礎知識:認知症を抱える利用者への対応は、訪問介護で日常的に求められます。
  • ターミナルケア:在宅での看取りを支える訪問介護の役割として、基礎知識の習得が求められます。
  • 服薬介助と医療行為の範囲:訪問介護で行える医療的ケアの範囲(たんの吸引・経管栄養は別途資格が必要)を確認します。

年間計画に組み込む

12か月で5テーマ(義務)の研修を回すには、月1テーマずつ計画します。感染症の委員会は年2回(6か月に1回以上)必要です。

例:4月から開始する場合

月 研修テーマ 訓練・委員会
4月 虐待防止 感染対策委員会(1回目)
5月 身体拘束の適正化 —
6月 感染症 感染症訓練
7月 業務継続計画(BCP) —
8月 ハラスメント防止 —
9月 個人情報の保護 BCP訓練・非常災害訓練
10月 事故と苦情への対応 感染対策委員会(2回目)
11月 認知症の基礎知識 —
12月 高齢者の特性と安全な介助 虐待防止委員会
1月 ターミナルケア —
2月 服薬介助と医療行為の範囲 —
3月 (振り返り・次年度計画) —

これはあくまでも一例です。事業所の規模や状況に合わせて調整してください。

研修・訓練・委員会の記録を1つでまとめる道具

訪問介護の法定研修(義務5テーマ+追加7テーマの計12テーマ)の資料・確認テスト・受講記録・訓練記録・委員会の議題案・年間計画を、事業所の情報に合わせて作るブラウザで使う道具を用意しています。

職員のスマホで確認テストを受けて記録を残すこともできます。運営指導の前に、1つのPDFにまとめて保存する機能もあります。

無料で虐待防止の1テーマを試せます。

▶ 法定研修・訓練キット(訪問介護版)

▶ 訪問介護の虐待防止研修、義務の内容と進め方。

▶ 訪問介護の感染症対策、研修・訓練・委員会の3つを整理する。

▶ 訪問介護の運営指導、研修の記録で確認されること。

▶ 訪問介護の認知症の基礎知識研修、何をどう教えるか。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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