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訪問介護中の転倒事故は、介護施設・在宅を問わず最も多い事故類型の一つです。厚生労働省の介護事故報告に関する調査でも、転倒・転落は事故種別の上位を占めます。
訪問介護では、利用者の自宅という「整備されていない環境」の中で支援を行うという特性があります。施設と異なり、床材・家具の配置・照明・段差などの環境をヘルパーが完全にコントロールすることはできません。だからこそ、訪問のたびに「今日のリスク」を確認する目を養う研修が重要になります。
訪問介護で転倒が起きやすい場面
訪問介護中に転倒が起きやすい場面を整理します。
| 場面 | 主な原因・リスク |
|---|---|
| 起き上がり・立ち上がり | 急な動作・血圧変動(起立性低血圧)・筋力低下によるふらつき |
| 歩行介助 | 絨毯の端・コード・段差への引っかかり。ヘルパーの位置が適切でない |
| トイレ移動 | 夜間・起床時のふらつき(本人が一人でトイレに向かう途中も含む)。スリッパが滑る |
| 入浴介助 | 浴室の床・浴槽の縁・脱衣場での滑り。入浴後の血圧低下・疲労 |
| 玄関・外出時 | 段差・踏み台・靴の脱ぎ履き時のバランス崩れ |
訪問先の環境確認チェックポイント
訪問時に確認すべき環境要素は次のとおりです。利用者宅の環境は訪問のたびに変わる(物が増える・床が濡れているなど)ため、毎回確認する習慣が必要です。
床・通路
- 絨毯・マットの端がめくれていないか
- 床に物(コード・新聞・カバン)が出ていて通路をふさいでいないか
- 濡れている・滑りやすい床材ではないか(特にキッチン・洗面所・玄関)
- 段差にゴムマットなどが敷かれているか
薬の副作用
降圧薬・睡眠薬・抗不安薬・利尿薬を服用している利用者は、ふらつき・立ちくらみ・夜間の覚醒障害によって転倒リスクが高まります。服薬状況はケア記録に記載されていることが多いため、訪問前に確認する習慣をつけます。薬の調整が必要と判断した場合は、ヘルパーが直接判断するのではなくケアマネ経由で担当医に情報提供します。
照明
- 通路・トイレ・階段が十分な明るさか
- 夜間に自力でトイレに行く利用者は、足元照明・センサーライトがあるか
手すり・福祉用具
- 立ち上がり動作を助ける手すりが使われているか。手すりがぐらついていないか
- 歩行器・杖がすぐ手の届く場所にあるか
- ベッドの高さが低すぎ・高すぎないか
環境整備に関して気になる点を見つけた場合は、直接変更するのではなく、管理者・サービス提供責任者に報告し、ケアマネへの情報提供につなげることが原則です。手すりの設置・福祉用具のレンタルは介護保険で対応できる場合があります。
介助技術と転倒防止の関係
環境面の確認と同様に、ヘルパー自身の介助技術も転倒防止に直結します。
立ち上がり介助で気をつける点
- 「1・2・3でいっせいに」という声かけで動作を合わせる
- 利用者の動作を先読みして引っ張るのではなく、動きに合わせて支える
- 立ち上がり後、すぐに歩き始めず、立位が安定するまで待つ(起立性低血圧への配慮)
歩行介助で気をつける点
- ヘルパーは利用者の斜め後ろ(麻痺・弱い側)に位置する
- 利用者のペースに合わせる。急かさない
- 通路の障害物(前述の確認項目)を事前に除去してから介助を始める
転倒が起きてしまったときの対応手順
転倒を防げなかった場合の初動対応は次のとおりです。
| 手順 | 具体的な行動 |
|---|---|
| ① 動かさない | まずその場で骨折・頭部打撲の有無を確認する。「立ち上がらせようとして二次被害が起きる」ケースが多い。明らかな変形・強い痛みがあれば動かさずに119番通報 |
| ② 状態確認 | 意識・呼吸・会話・出血・痛みの訴えを確認する |
| ③ 管理者・家族に連絡 | 状態を正確に報告する。電話しながら観察を続ける |
| ④ 記録 | 発生時刻・場所・転倒の状況・その後の状態を記録する |
| ⑤ 事故報告書の作成 | 管理者の指示に従い、事故報告書を作成し、市区町村への報告手続きを取る |
ケアマネ・家族との連携
転倒が起きた場合、または転倒リスクが高まっていると感じる場合は、ケアマネへの情報提供が必要です。介護保険のサービスの追加(福祉用具のレンタル・住宅改修など)や、担当医師への情報提供(薬の見直しなど)につながることがあります。
研修では「気になる環境変化や体調変化を記録に残し、上長に報告する」という情報伝達の習慣をつけることも、転倒防止の重要な要素として伝えます。
転倒防止研修の記録をキットで管理する
訪問介護向け法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-houmon/)の有料版(14,800円買い切り)には、転倒防止を含む事故防止研修の資料・確認テスト・受講記録が含まれます。「訪問先の環境確認チェックリスト」「起きてしまったときの対応手順」「報告から事故報告書作成までの流れ」を含む内容です。
無料版では虐待防止の1テーマを利用できます。転倒防止を含む12テーマすべての利用には有料版が必要です。
あわせて読みたい:訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。
あわせて読みたい:訪問介護のヒヤリハット活用と事故防止。
この記事で確認した根拠
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)事故発生防止規定
- 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)
- 厚生労働省老健局「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(令和7年11月)
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