訪問介護事業者には、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「指定基準」)により、複数テーマについて定期的な研修実施が義務付けられています。これらをバラバラに対応するのではなく、年間の研修計画として整理しておくことで、漏れなく・無理なく実施できます。
行政の実地指導では「年間の研修計画があること」「計画どおり実施した記録があること」の両方が確認されます。計画書と研修記録をセットで管理する仕組みを整えておくことが重要です。この記事では、訪問介護の年間研修計画の立て方と記録管理のポイントを整理します。
訪問介護で研修実施が求められている主なテーマ
指定基準に基づいて、訪問介護で定期的な研修実施が求められているテーマをまとめます。
| テーマ | 根拠 | 最低頻度の目安 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 虐待防止 | 指定基準(虐待防止のための措置) | 年1回以上 | 義務 |
| 身体拘束廃止 | 指定基準(身体的拘束等の適正化のための措置) | 年1回以上 | 義務 |
| 感染症・食中毒対策 | 指定基準(感染症及び食中毒の予防・まん延防止) | 指定権者に確認してください(通所系・訪問系は年1回以上とされる場合があります) | 義務(研修+訓練) |
| BCP(業務継続計画) | 指定基準(業務継続計画の策定等) | 年1回以上 | 義務 |
| 非常災害対策 | 指定基準(非常災害対策) | 年1回以上 | 義務(研修+訓練) |
| ハラスメント防止 | 指定基準(ハラスメント対策) | 定期的 | 義務 |
| 個人情報保護 | 個人情報の保護に関する法律・指定基準(秘密保持等) | 定期的 | 推奨 |
| 認知症の基礎知識 | 認知症介護基礎研修の義務化(2021年度〜) | 職員の資格状況に応じて | 推奨 |
| 高齢者の特性と安全な介助 | 指定基準(事故発生防止・安全管理) | 定期的 | 推奨 |
| ターミナルケア | 在宅看取りの実務対応 | 定期的 | 推奨 |
| 服薬介助と医療行為の範囲 | ヘルパーの業務範囲の理解 | 採用時・定期的 | 推奨 |
| 事故と苦情の対応 | 指定基準(事故発生防止・苦情処理) | 定期的 | 推奨 |
「義務」5テーマを年1回以上実施することが最低限の要件です。「推奨」テーマを加えて年間10〜12テーマ計画することで、訪問介護員の資質向上と、万が一の実地指導への備えになります。
年間研修計画の組み立て方
年間研修計画を立てる手順は次のとおりです。
- 義務テーマの確認:指定基準上の必須5テーマを書き出す
- 追加テーマの選定:前年度のヒヤリハット・事故事例・行政指導の指摘から、特に強化すべきテーマを加える
- 月ごとへの割り当て:月1回程度のペースで分散させる。季節のリスクに合わせて配置するのが効果的
- 担当者・形式の決定:誰が担当するか・勉強会形式か・外部研修を活用するかを決める
- 計画書の作成・周知:年度初めに職員全員に周知する
月ごとの研修テーマ配置の例
季節やリスクの高い時期に合わせてテーマを配置する例です。あくまで参考例で、事業所の状況に合わせて調整してください。
| 月 | テーマ例 | 配置の理由 |
|---|---|---|
| 4月 | 服薬介助と医療行為の範囲・新入職員向けオリエンテーション | 新年度・新入職員に実務の基礎を早期に伝える |
| 5月 | 個人情報保護 | 年度前半に必须テーマを実施。新入職員が慣れてきたタイミング |
| 6月 | 虐待防止研修 | 義務テーマを前半に実施する |
| 7月 | 感染症・食中毒対策研修 | 夏季の食中毒リスクが高まる時期 |
| 8月 | 高齢者の特性と安全な介助(熱中症・水分補給) | 猛暑期のリスクに特化した内容を合わせる |
| 9月 | 認知症の基礎知識 | 秋口に夕暮れ症候群・帰宅願望が強くなりやすい時期に備える |
| 10月 | ハラスメント防止研修 | 義務テーマを後半に実施する |
| 11月 | 感染症対策訓練・手洗い・マスク着用 | インフルエンザ・ノロウイルスのシーズン前 |
| 12月 | BCP(業務継続計画)研修・訓練 | 年末の大雪・停電リスクを意識。年度内に義務テーマを完了させる |
| 1月 | 身体拘束廃止研修 | 義務テーマを年度内に実施する |
| 2月 | ターミナルケア | 看取り事例が集まりやすい時期に合わせる |
| 3月 | 非常災害対策・避難訓練・年度振り返り | 年度末に義務テーマを完了させる。翌年度計画につなげる |
感染症・食中毒対策については、研修と訓練の両方が義務とされており、回数の取扱いは指定権者によって異なる場合があります。計画に組み込む際は担当窓口に確認してください。
訪問介護の研修は「職員が分散している」ことへの対応が課題になる
施設系と異なり、訪問介護は職員がそれぞれ異なる時間帯・場所で働いています。全員を同じ時間に集めることが難しいという現実があります。
全員が参加しやすい形式の工夫
- 録画・動画での研修:研修担当者が資料説明を録画し、自分の都合のよい時間に視聴してもらう。視聴後に確認テストを提出してもらうことで受講記録になる
- 紙の資料配布+確認テスト:資料を読んで確認テストに回答する形式。最もシンプルで実施しやすい
- 複数回に分けた実施:同じ内容の研修をシフトを分けて2〜3回実施し、全員が参加できるようにする
どの形式をとっても、「参加した職員の記録」を残すことが必要です。
eラーニング・ICTツールの活用
訪問介護向けの研修管理ツールやeラーニングサービスを活用すると、職員が自分のスマートフォンから受講でき、事業所は受講状況をまとめて確認できます。研修記録の管理コストが大幅に下がります。
計画通りに進まない場合の対処
年間研修計画は「計画どおり進めること」が目的ではなく、「必要なテーマを漏れなく実施すること」が目的です。
担当者の急病・参加者が集まらなかったなどの理由で実施できなかった場合は、翌月に振り替えて実施します。「〇月予定だったが〇月に振り替えた」旨を計画書に記録しておくと、実地指導で計画との差異を聞かれたときに説明できます。
四半期ごとに計画と実績を照合することで、年度末に未実施テーマが残ることを防げます。
研修記録の保管と実地指導への備え
研修を実施したことを証明するのは記録です。最低限、次の項目を残します。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施日 | 研修を行った年月日 |
| テーマ | 当日扱ったテーマのタイトル |
| 参加者 | 参加した職員の氏名または署名・人数 |
| 資料 | 使用した資料を添付または別保管 |
| 内容の概要 | 何を伝えたか・どのような意見が出たかの簡単なメモ |
実地指導では「今年度の研修計画を見せてください」「各テーマの研修記録はありますか」という確認がされます。計画書(Excel等)と各回の研修記録(署名つき)をセットで提示できる状態にしておきます。
年間研修計画書のシンプルな作り方
複雑な様式でなく、「月」「テーマ」「担当者」「実施日(実績)」「参加者数(実績)」の5列の表で機能します。計画を立てた時点では実績欄を空白にしておき、実施後に記入します。年度末に実績欄が埋まっていれば、計画どおり研修を実施したことが確認できます。
年間計画と受講記録をツールでまとめて管理する
義務5テーマ+追加テーマを個別にExcelで管理するのが手間な場合は、訪問介護向け法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-houmon/)が参考になります。有料版(14,800円買い切り)で12テーマ分の研修資料・確認テスト・受講記録・訓練記録様式をブラウザ上で一元管理できます。「職員が自分のスマートフォンから受講して記録が残る」という仕組みが、分散した働き方の訪問介護に向いています。
無料版では虐待防止の1テーマを利用できます。
あわせて読みたい:訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。
この記事で確認した根拠
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)


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