就労移行支援の法定研修 義務テーマと年間回数の一覧

就労移行支援の職員研修、義務になっている5つのテーマとは。 就労移行支援

就労移行支援の事業所には、基準で義務とされている職員研修が5つある。虐待防止・身体拘束の適正化・感染症・業務継続計画(BCP)・非常災害への対応だ。いずれも、研修の実施と記録の保存が基準上求められており、運営指導の確認事項にもなっている。

この記事では、5つの義務テーマそれぞれについて、根拠となる基準の条番号・求められる研修の頻度・記録として残しておくべき内容を整理する。

就労移行支援の研修義務は、第184条の準用規定から来る

就労移行支援の基準(「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号))では、第184条が他のサービス種別の条文を準用する形になっている。

研修・訓練の義務条文は、この第184条の準用によって就労移行支援に適用される。虐待防止は第40条の2、身体拘束の適正化は第35条の2、感染症は第90条、業務継続計画は第33条の2、非常災害は第70条がそれぞれ根拠となる。

虐待防止(第40条の2):委員会・研修・責任者の選任が義務

第40条の2では、次の3つが義務とされている。

  • 虐待防止のための対策を検討する委員会(少なくとも年1回)
  • 職員研修(年1回以上・新規採用時にも必ず実施)
  • 虐待防止に関する措置を適切に実施するための担当者の選任

出典:平成18年厚生労働省令第171号 第40条の2(第184条で準用)、厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号)第三の3の(31)

研修の内容として、厚生労働省「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月改訂版)が参考になる。利用者の権利・虐待の種類と具体例(心理的虐待・経済的虐待・身体的虐待・性的虐待・ネグレクト)・通報の義務・事後対応の手順が示されている。

就労移行支援では、実習先や就職活動の場面も虐待防止の視点が必要になる。利用者に就職を急かしたり、「どこにも雇ってもらえない」などの言い方をすることは心理的虐待に当たるおそれがある。

身体拘束の適正化(第35条の2):委員会・研修・指針の整備が義務

第35条の2では、身体拘束等の禁止(緊急やむを得ない場合を除く)に加えて、次の3つが義務とされている。

  • 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(少なくとも年1回)
  • 職員への研修(年1回以上・新規採用時にも必ず実施)
  • 身体拘束等の適正化のための指針の整備

出典:平成18年厚生労働省令第171号 第35条の2(第184条で準用)、厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号)第三の3の(26)

身体拘束を行った場合は、緊急性・非代替性・一時性の3要件を確認し、利用者・家族への説明と記録が必要になる。通所系サービスの場合、身体拘束に対する減算は所定単位数の1%になる。

感染症の予防(第90条):委員会・研修・指針・訓練が義務

第90条では、次の4つが義務とされている。

  • 感染症の予防及び蔓延の防止のための対策を検討する委員会(おおむね3か月に1回以上)
  • 職員への研修(年2回以上・新規採用時にも必ず実施)
  • 感染症の予防及び蔓延の防止のための指針の整備
  • 感染症が発生し蔓延しないようにするための訓練(年2回以上)

出典:平成18年厚生労働省令第171号 第90条(第184条で準用)、厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号)第四の3の(20)

感染症の研修・訓練は、虐待防止や身体拘束と違い、年2回以上が求められている点に注意が必要だ。

業務継続計画(BCP)(第33条の2):策定・研修・訓練が義務

第33条の2では、次の3つが義務とされている。

  • 感染症や非常災害の発生時の業務継続計画(BCP)の策定
  • BCPに関する研修(年1回以上・新規採用時に研修実施が望ましい)
  • BCPに関する訓練(年1回以上)

出典:平成18年厚生労働省令第171号 第33条の2(第184条で準用)、厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号)第三の3の(23)

BCPは、感染症発生時と自然災害発生時の2種類の計画が必要になる。厚生労働省は「障害福祉サービス事業所等における業務継続ガイドライン(自然災害発生時)」「同(感染症発生時)」を公表しており、計画策定・研修・訓練の参考にできる。

非常災害(第70条):訓練の実施が義務(研修は任意)

第70条では、非常災害に関して次のことが義務とされている。

  • 非常災害に備えるための定期的な避難・救出その他必要な訓練の実施
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備の整備
  • 消防署・市町村・地域住民への協力要請(随時)

出典:平成18年厚生労働省令第171号 第70条(第184条で準用)

非常災害は、5テーマの中で唯一「訓練のみ・研修は義務化されていない」テーマだ。ただし、訓練の記録(実施日・参加者・内容・反省と改善点)を残しておくことは求められる。

5テーマの研修頻度と義務の比較

就労移行支援の研修・訓練義務(基準・解釈通知より)
テーマ 研修の頻度 訓練の頻度 委員会
虐待防止 年1回以上・新規採用時必ず なし 年1回以上
身体拘束の適正化 年1回以上・新規採用時必ず なし 年1回以上
感染症 年2回以上・新規採用時必ず 年2回以上 3か月に1回以上
BCP 年1回以上 年1回以上 なし
非常災害 —(義務なし) 定期的(義務) なし

出典:平成18年厚生労働省令第171号・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号)

記録は運営指導で確認される

研修・訓練の実施記録は、運営指導(実地指導)の確認事項になっている。最低限、「いつ・誰が・何の研修を受けたか」がわかる受講記録を残すことが求められる。

実務上は、受講記録に加えて、研修で使った資料・委員会の議事録・訓練の記録(実施日・参加人数・内容・反省点)を保存しておくと、運営指導でスムーズに提示できる。

就労移行支援の法定研修・訓練キット

就労移行支援版の法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-ikou/)では、この5つの義務テーマに加えて、就労移行支援だけのテーマ「就職活動と職場定着の支援」(基準 第180条〜第183条)を含む12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録・訓練記録・委員会の議題案を作成できる。

無料版では虐待防止の1テーマを記録・印刷まで使える。有料版(買い切り14,800円)では全テーマと、訓練・委員会・年間計画・運営指導用のまとめが使える。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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