就労移行支援のハラスメント研修、義務の根拠と就職活動を支える職場環境の守り方。
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就労移行支援では、職場のハラスメントを防ぐための研修が義務とされています。セクシャルハラスメント・パワーハラスメントの防止措置と、職員が相談できる体制の整備が求められます。
この記事では、就労移行支援のハラスメント防止研修の義務の根拠、研修で扱う内容、就職活動支援の現場に固有の注意点を整理します。
義務の根拠は第68条第4項(第184条で準用)
指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第68条第4項は、就労移行支援に第184条で準用されています。
解釈通知(障発第1206001号)では、就労移行支援のハラスメント防止は「基準第33条第4項の規定と基本的に同趣旨」とされており、第三の3の(22)を参照するよう示されています。
義務として求められる措置は次のとおりです。
- 職場のハラスメントを防止するための方針の明確化と周知・啓発
- 相談・苦情対応のための体制の整備(相談窓口の設置)
- ハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対処
- 研修の実施による職員のハラスメントに関する知識の向上
- 利用者またはその家族等からのハラスメントへの対応(カスタマーハラスメント対策)
ハラスメントの3種類
職場のハラスメントには3種類あります。就労移行支援の職場ではいずれも発生する可能性があります。
| 種類 | 定義の要点 | 就労移行支援の現場での例 |
|---|---|---|
| パワーハラスメント(パワハラ) | 職場の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与える行為 | 上司が部下に対して過剰なノルマを課す・人前での叱責・無視・雑用のみを継続的に命じる |
| セクシャルハラスメント(セクハラ) | 性的な言動によって労働環境を害する、または性的な言動への対応を条件にする行為 | 外見についての不必要な発言・性的な冗談・身体への接触 |
| 妊娠・出産・育児等に関するハラスメント(マタハラ) | 妊娠・出産・育児休業等の取得を理由とした不利益な取り扱いや言動 | 「妊娠するなんて困る」といった発言・育休取得への圧力 |
就労移行支援の固有リスク:企業実習先でのハラスメント
就労移行支援では、利用者が企業実習先に派遣される場面があります。実習先の企業担当者から利用者に対して不適切な言動(過度な叱責・高圧的な指示・差別的な扱い)があった場合、就労移行支援事業所の職員はどう対応するかを事前に方針として決めておく必要があります。
利用者から「実習先の人に怒鳴られた」「不必要に体を触られた」という報告があった場合、実習先との関係を優先して事業所内で握りつぶすことは、利用者の権利を守る立場に反します。BCPと同様に、「実習中断の判断基準・実習先企業への申し入れの手順・指定権者への報告の要否」を方針としてまとめておきます。
利用者・家族からのハラスメントも対象(カスタマーハラスメント)
就労移行支援では、利用者またはその家族から職員に対するハラスメントへの対応も義務として求められています。
保護者が職員に対して「もっと早く就職させろ」と過度な要求をする・利用者が職員に暴言を浴びせるといった場面が起きることがあります。「利用者の就職を支援する立場だから我慢するべき」という文化は、職員の離職・メンタルヘルスの悪化につながります。事業所として「どこまでを対応すべき要求とし、どこからを行き過ぎた行為として対処するか」の方針を明確にしておくことが重要です。
相談窓口の整備
ハラスメントの防止措置として、職員が相談できる窓口の設置が求められます。次の点を最低限整えます。
- 相談窓口の担当者を決め、職員に周知する(管理者・サービス管理責任者・外部機関など)
- 相談した職員が不利益を受けないことを方針として明確にする
- 相談内容の秘密が守られることを保証する
- 相談を受けた場合の対応手順(事実確認・当事者への対処・再発防止策)を決める
研修で確認する内容
定義と事例の確認:ハラスメントの3種類の定義と、就労移行支援の現場(訓練中・面接練習中・企業実習巡回中)で起きやすい具体的な場面を確認します。
相談窓口と対応手順の確認:誰が相談窓口の担当者かを確認し、相談した場合の流れを説明します。「相談しても何も変わらない」という不安を取り除くことが研修の目的の一つです。
企業実習先でのハラスメントへの対応方針の共有:実習先で利用者がハラスメントを受けた場合の対応手順と判断基準を職員が共有します。「利用者が困っていたらすぐに報告してほしい」という文化を職員に伝えます。
カスタマーハラスメントへの対応方針の共有:利用者・家族からの過度な要求や暴言に対し、事業所としてどう対応するかの方針を共有します。
研修の記録として残すもの
- 研修の実施日・テーマ・実施方法
- 参加した職員の確認サイン(全員分)
- 相談窓口の担当者名と職員への周知を確認できる記録
- ハラスメント防止に関する方針(文書として整備されていること)
まとめ
就労移行支援のハラスメント防止研修は、第68条第4項(第184条で準用)に基づく義務です。セクハラ・パワハラ・マタハラの3種類と、利用者・家族からのカスタマーハラスメント、企業実習先での利用者へのハラスメント対応が対象です。特に企業実習先でのハラスメントは就労移行支援固有のリスクで、事前に対応方針を決めておくことが利用者を守ることにつながります。
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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第68条第4項(第184条で準用)・解釈通知(障発第1206001号)第三の3の(22)。男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法・育児介護休業法のハラスメント防止措置義務も参照。


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