地域密着型通所介護と通所介護、定員18人で何が変わるか。

地域密着型通所介護と通所介護、定員18人で何が変わるか。 福祉事業の開業と運営

「小さなデイサービスを開きたい」という場合、定員によって「通所介護」と「地域密着型通所介護」のどちらの許認可になるかが変わります。定員18人以下は地域密着型通所介護、定員19人以上は通所介護です。指定権者・報酬・運営推進会議の設置義務など、制度上の扱いが異なります。この記事では、開業前に知っておくべき両者の違いを整理します。

定員18人が境界線になった経緯

もともと通所介護は、定員の大小にかかわらず都道府県が指定する一つのサービスでした。しかし平成28年(2016年)4月1日から、定員18人以下の小規模な通所介護は「地域密着型通所介護」に移行されました。

背景には、小規模デイは地域の生活圏(日常の商圏)に根差したサービスであり、市区町村が直接管理した方が地域の実情に合ったサービスを確保しやすいという考え方があります。

既存の小規模事業所は自動的に地域密着型に移行されたため、改めて指定申請をする必要はありませんでした。新規に開業する場合は、定員を何人にするかで最初から許認可の窓口が変わります。

指定権者の違い:都道府県か市区町村か

最大の違いは、どこが指定・指導を行うかです。

サービス種別 定員 指定権者
地域密着型通所介護 18人以下 市区町村(事業所所在地)
通所介護 19人以上 都道府県(または政令市・中核市)

地域密着型は市区町村が指定者なので、原則として事業所が所在する市区町村の住民しかサービスを利用できません(市区町村が特例を認めた場合を除く)。定員19人以上の通所介護は都道府県が指定するため、市区町村をまたいだ利用者を受け入れられます。

指定申請の手続きも窓口が異なります。地域密着型は市区町村の介護保険担当課に申請し、通所介護は都道府県の担当部局に申請します。必要書類の様式や審査のポイントは、それぞれの窓口に確認する必要があります。

報酬体系の違い

報酬単位数は、地域密着型通所介護と通所介護で体系が分かれています。どちらも提供時間・要介護度・事業規模によって基本報酬が決まりますが、単位数の表は別々に定められています。

地域密着型は「定員18人以下」の一本立て、通所介護は「通常規模」「大規模Ⅰ」「大規模Ⅱ」の3段階です。通所介護は規模が大きくなると基本報酬が低くなる構造があります(規模が大きいほど固定費が分散できるという考え方)。

加算の種類はほぼ共通していますが、一部の加算で要件が異なる場合もあるため、都道府県・市区町村のQ&Aや通知で確認が必要です。

運営推進会議:地域密着型の義務

地域密着型通所介護では、2か月に1回以上、運営推進会議を開催する義務があります(通所介護には義務なし)。

運営推進会議には、利用者・家族・地域住民・行政担当者・地域の専門職などが参加し、事業所のサービス状況を報告・評価します。会議の記録を作成して保管し、行政に提出または公表することが求められます。

「小さなデイで地域に開かれた運営をする」という制度の趣旨に沿ったものですが、開催の準備・記録の作成・委員の確保など、運営上の手間が増えます。開業後の業務量に織り込んでおく必要があります。

どちらで開業するか:判断のポイント

定員を何人にするかは、収支・物件・人員・利用者圏域の考え方によって変わります。

定員18人以下(地域密着型)を選ぶ場合の典型的な理由:

  • 小規模な物件しか確保できない(居宅改修・民家改装など)
  • スタッフを多く雇えない・少人数で運営したい
  • 地元住民に特化したきめ細かいサービスを提供したい
  • 初期投資を抑えてスモールスタートしたい

定員19人以上(通所介護)を選ぶ場合の典型的な理由:

  • 利用者圏域を広くしたい(市区町村をまたいで集客したい)
  • ある程度の規模で収益を安定させたい(1人あたりの固定費を下げたい)
  • 運営推進会議の義務を避けたい

小規模デイは人件費・家賃の固定費が重くのしかかりやすいため、少人数でも稼働率を高く保てるかどうかが経営の鍵になります。定員を増やせば1人あたりの固定費は下がりますが、スタッフの確保と物件の広さが新たな課題になります。

定員を変更する際の注意点

開業後に定員を変更することはできますが、18人を超えると「地域密着型」から「通所介護」へのサービス種別変更が必要になります。この場合は都道府県への新規指定申請が必要で、単純な変更届では対応できません。逆に19人以上から18人以下に変更する場合も同様です。

定員変更は単なる届け出で済むのではなく、場合によっては指定をし直すことになります。将来の拡張を見越して最初から定員を設定するか、スモールスタートで実績を積んでから検討するかは、事業計画の段階で整理しておくことをおすすめします。

収支の試算はシミュレーターで確認できます

当サイトのシミュレーターでは、定員・稼働率・時間区分・地域区分・加算の有無を入力して、月次収支を試算できます。小規模(地域密着型水準)の想定でも試算可能です。開業を検討する前に、まず数字で確認してみてください。

→ 通所介護(デイサービス)開業向け収支シミュレーター(無料)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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