生活介護の事業所数と利用者数の推移。厚労省データで確認する。
生活介護の事業所数は令和7年(2025年)1〜3月時点で全国約12,990か所に達し、近年は年間数百か所単位で増加が続いています。利用者数(月平均)も増加傾向にあり、重度障害者・精神障害者の地域移行政策を背景に安定した需要があります。一方で収支差率は全サービス平均に比べて低水準の年度もあり、人件費・サービス管理責任者の確保が経営上の課題になっています。本記事では、厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」および「障害福祉サービス等経営実態調査」のデータをもとに、市場規模の推移・収支の現状・参入上の留意点を整理します。
事業所数の推移
厚生労働省が公表している「障害福祉サービス等の利用状況について」(各年度)によると、生活介護の指定事業所数は以下のように推移しています。
| 時点 | 事業所数(目安) | 前年比 |
|---|---|---|
| 令和3年4〜6月 | 約11,702か所 | — |
| 令和6年1〜3月 | 約12,780か所 | (令和3年比+9.2%) |
| 令和7年1〜3月 | 約12,990か所 | 前年同期比+1.6% |
(出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」。上記の数値は四半期データの参考値です。)
介護保険の通所介護や放課後等デイサービスほどの急増ではありませんが、毎年安定して事業所数が増えています。参入しやすい放課後等デイサービス・就労継続支援B型と異なり、生活介護は定員20人以上(単独の場合)という規模要件と高度な人員配置基準があるため、無計画な乱立は起きにくい構造です。
利用者数・延べ費用の現状
1事業所当たりの費用額は月額約5,632千円(令和7年経営概況調査・令和6年度決算ベース参考値)とされており、定員規模が大きいほど収益が安定する傾向があります。利用者の障害支援区分が高い(区分5・6が多い)ほど1日あたりの基本報酬が高く、人員配置体制加算の算定にも有利です。
収支差率の目安
障害福祉サービス等経営実態調査では、生活介護の収支差率(収益に対する利益の割合)が示されています。年度によって変動しますが、全サービス平均と比べると人件費率が高く、収支差率は数%台となる事業所が多い傾向があります。稼働率が低いと収支差率はすぐにマイナスに転じるため、開業後の利用者確保が最重要課題です。
※具体的な収支差率の数値は厚生労働省「障害福祉サービス等経営実態調査」の最新版で確認してください。調査年度によって数値が異なります。
市場が伸び続けている要因
重度障害者・精神障害者の地域移行推進
障害者総合支援法と各都道府県の障害福祉計画は、長期入院中の精神障害者・施設入所中の重度身体・知的障害者の地域移行を推進しています。移行後の日中活動の場として、生活介護は中核的な役割を担います。入院・施設からの移行が継続することで、中長期的に利用者需要は底堅いと見られています。
高齢化した知的障害者の増加
知的障害者の高齢化に伴い、就労継続支援B型等から生活介護に移行するケースが増えています。障害支援区分が高くなった利用者が活動の場として生活介護を選ぶことで、既存事業所の定員がほぼ埋まっているエリアも出てきています。需要があっても供給が追いつかない地域では、参入余地があります。
障害福祉計画の数値目標との関係
各市区町村は3年ごとに改定する障害福祉計画で「生活介護の必要量」を定めています。計画の必要量に対して供給が不足している地域では、自治体が新規事業所の参入を積極的に歓迎するケースもあります。開業前に対象市区町村の障害福祉計画を確認することが重要です。
都道府県・地域別の傾向
首都圏・大都市部
東京・神奈川・大阪・愛知など大都市圏は事業所数が多い一方、指定地域ごとの競合が激しく、利用者の確保に時間がかかるケースがあります。一方で地域区分(1〜3級地)の単価が高く、同じ稼働率でも地方より報酬単価が高くなります。
地方・過疎地域
地方では競合は少ないものの、重度の利用者の移送コスト・看護職員の採用難が課題になります。人件費は首都圏より低いことが多いですが、生活支援員・サービス管理責任者の確保が特に難しいエリアもあります。事前に労働市場の実態を確認することが重要です。
参入上の留意点
定員20人以上という規模要件
生活介護の単独事業所は、省令第174条第37条により定員20人以上が必要です(他のサービスと一体的に行う場合は別途要件あり)。20人以上の定員を維持するには、利用者確保と退所・転出のマネジメントが継続的に必要です。開業直後の稼働率が低い時期は、損益分岐を割り込む月が続く可能性があります。
人員配置基準の厳しさ
生活介護の人員配置基準(省令第171号第78条)は、利用者の平均障害支援区分に応じて、職員の必要数が変わります。区分4未満は利用者6人に職員1人、区分4以上5未満は5人に1人、区分5以上は3人に1人という手厚い配置が必要です。さらに看護職員を1人以上配置する義務があります。人件費が収益の大半を占めるため、稼働率と人員計画の精度が収支を左右します。
サービス管理責任者の確保
サービス管理責任者(サビ管)は実務経験要件+研修修了が必要で、採用難易度が高い職種です。定員60人以下であれば1人配置で足りますが、退職時の代替要員の確保が難しく、指定取消リスクにつながることもあります。開業前にサビ管の確保と退職時の対応計画を立てておくことが重要です。
収支シミュレーションで採算を確認する
生活介護の収支は、定員規模・利用者の障害支援区分の構成・稼働率・地域区分・算定する加算によって大きく変わります。特に「区分5・6の割合」は人員配置体制加算の算定要件に直結し、収入にも職員コストにも影響します。開業前に複数のシナリオ(稼働率60%・70%・80%)で収支を試算し、資金繰り計画に反映させることが重要です。
生活介護の開業収支シミュレーターでは、定員・障害支援区分の構成・稼働率・地域区分・加算の組み合わせを入力することで、月次の収支見込みを試算できます。
運営指導での確認ポイント
人員配置基準の記録
月ごとの利用者の平均障害支援区分と職員の勤務実績を記録し、配置基準を満たしていることを証明できるようにする必要があります。看護職員の在籍・勤務記録も必須です。
個別支援計画の作成・更新
サービス管理責任者による個別支援計画の作成・6か月ごとのモニタリング・計画の見直しが義務です。未作成・更新遅延は加算の算定に影響し、重大な指摘につながります。
苦情処理・記録の整備
利用者または家族からの苦情を受け付ける窓口の設置・記録の保存が義務です。苦情記録がない事業所は「苦情がない事業所」ではなく、「記録していない事業所」として指摘されます。

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