児童発達支援(以下、児発)の利用児童は0〜6歳の乳幼児です。乳幼児は体温調節機能が未発達で、体重に対する体表面積が大きく、発汗能力も低いため、成人よりも熱中症になりやすい。しかも障害のある子どもは「暑い」「気分が悪い」という訴えが難しく、職員が症状に気づくまでに重症化するリスクがあります。
熱中症への対応は、指定通所支援基準の事故発生防止・安全管理規定の観点からも研修として扱うべきテーマです。年間計画に「熱中症予防」を組み込み、夏季前(5〜6月)に実施しておきます。
乳幼児の熱中症が起きやすい場面
| 場面 | リスクのポイント |
|---|---|
| 送迎中の車内 | チャイルドシートに固定された状態では自分で脱出できない。夏季の駐車中は数分で危険な温度に達する |
| 屋外活動・散歩 | 地面に近いほど輻射熱が高く、乳幼児の頭部の高さは成人よりも高温になる |
| 送迎待ちの屋外 | 保護者待機中に日陰がない場所で長時間過ごすリスク |
| 室内(エアコン未対応時) | 停電・設備故障時の温湿度上昇。動きが少ない子どもは体温上昇に気づかれにくい |
WBGT指数(暑さ指数)を使った活動判断
WBGT(湿球黒球温度)は環境省が熱中症予防の指標として公表しており、気温だけでなく湿度・輻射熱を加味した数値です。屋外活動・送迎の可否判断の基準として活用できます。
| WBGT値 | 危険度の目安 | 乳幼児施設での対応例 |
|---|---|---|
| 25未満 | ほぼ安全 | 通常活動。水分補給を忘れずに |
| 25〜28未満 | 注意 | こまめな水分補給。体調不良の子どもは室内休憩を優先 |
| 28〜31未満 | 警戒 | 屋外活動は短時間に限定。日陰・水分補給を確保 |
| 31以上 | 危険 | 屋外活動を中止。送迎ルートの変更・短縮も検討 |
(出典:環境省「熱中症予防情報サイト」WBGT基準値)
環境省の「熱中症予防情報サイト」では全国各地のWBGT予測値を無料で確認できます。朝の時点で当日の数値を確認し、活動計画に反映する手順を職員間で共有します。
乳幼児・障害のある子どもに特有の症状のサイン
成人の熱中症は「だるい」「めまい」という自覚症状で気づくことが多いですが、乳幼児・重度障害のある子どもは症状を言葉で伝えられません。以下の変化に職員が気づくことが早期対応につながります。
- ぐったりして反応が鈍くなる・普段と比べて活動量が落ちる
- 皮膚が熱く赤い・または逆に蒼白で冷たい(重症の兆候)
- 呼吸が速い・浅い
- 水分を嫌がる・飲めない(嘔吐を含む)
- 筋緊張が変わる・こわばる(脱水による電解質バランスの乱れ)
- 泣き方が違う・あるいは普段泣く子どもが無反応になる
「なんかいつもと違う」という職員の直感を大切にし、迷ったら室内に移動して体温を計る習慣をつけます。
応急処置の手順
熱中症が疑われる場合の応急処置は、「冷やす・休ませる・補水」の3ステップです。乳幼児の場合は特に「冷やしすぎない」ことに注意します。
涼しい場所へ移動:エアコンの効いた室内・日陰へ直ちに移動します。チャイルドシートや体を固定していた状態を解除します。
体を冷やす:首・脇の下・鼠径部(太ももの付け根)など太い血管が通っている部位を冷やします。氷水に浸したタオル・保冷剤をタオルで包んで当てます。服を緩め、扇風機・うちわで風を当てます。乳幼児は成人よりも体温が急激に下がりやすいため、体が冷えたら冷却を中断します。
水分補給:意識がはっきりしており飲める状態であれば、水・スポーツドリンク(乳幼児向けに薄めたもの)を少量ずつ与えます。自分で飲めない・嘔吐がある・意識が不明瞭な場合は無理に飲ませず、直ちに119番に連絡します。
119番に連絡する基準:意識がない・呼びかけに反応しない・けいれんがある・体が熱いのに汗をかいていない場合は、熱射病(重症熱中症)の可能性があります。直ちに119番に連絡し、到着まで冷却を続けます。
研修で確認する内容
WBGTの確認手順:毎朝・活動前にWBGTを確認する担当者・方法・記録場所を明確にします。「誰でも見られる状態にしておく」ことが実際の活動判断につながります。
症状の確認ロールプレイ:「普段と様子が違う子どもに気づいた」という場面を想定し、観察→報告→応急処置→医療機関への連絡という流れを手順として確認します。
冷却物品の確認:保冷剤・冷却シートの在庫・保管場所を確認します。使用期限・補充手順も含めて共有します。
記録として残すもの
- 研修の実施記録(実施日・内容・参加職員名・受講確認サイン)
- WBGT確認記録(日付・数値・活動の可否判断)
- 熱中症疑いの経過記録(発生日時・発見時の状況・応急処置・医療機関への連絡の有無)
法定研修・訓練のキットを使う
放課後等デイサービス・児童発達支援向けの安全管理・事故発生防止テーマの教材・確認テスト・記録様式を収録した研修キットを公開しています。熱中症対策の研修教材としても活用できます。
▶ 熱中症・安全管理テーマの研修教材・確認テスト付き研修キット
出典:環境省「熱中症予防情報サイト」WBGT基準値・指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準。


コメント