短期入所の基準は、身体拘束の適正化について、委員会の定期的な開催・指針の整備・従業者への研修・記録の4つを義務にしています。研修は国の解釈通知で年1回以上、新しく採用した職員には必ず実施するとされています。委員会は少なくとも1年に1回の開催が必要です。この記事では、短期入所の身体拘束廃止研修の根拠・3要件・手続き・減算をまとめました。
身体拘束廃止研修の義務は、基準の条文と解釈通知に書かれている
身体拘束の適正化に関する規定は、指定障害福祉サービスの事業の基準(平成18年厚生労働省令第171号)の第35条の2に定められています。短期入所には、第145条の準用でこの条文が当てはまります。
基準は次の4点を義務にしています。
- 指針の整備
- 従業者への研修の定期的な実施
- 委員会(身体拘束適正化検討委員会)の定期的な開催と周知
- やむを得ず身体拘束を行ったときの記録
基準第35条の2の研修の根拠は、「従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2(第145条で準用))です。
国の解釈通知(障発第1206001号)は、研修の回数と対象を次のように示しています。「職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該指定居宅介護事業所が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修を実施(年一回以上)するとともに、新規採用時には必ず身体拘束等の適正化の研修を実施することが重要である。」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.66)
委員会の頻度について、解釈通知は「身体拘束適正化検討委員会は、少なくとも1年に1回は開催することが必要である」(出典:同上 p.65)としています。
短期入所での身体拘束に当たる行為の例
「身体拘束」は、利用者の体や行動を制限する行為全般を指します。厚生労働省・こども家庭庁の手引きは、次のような行為を例に挙げています。
- 「車いすやベッド等に縛り付ける。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) )
- 「支援者が自分の体で利用者を押さえ付けて行動を制限する。」(同上)
- 「自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。」(同上)
- 「行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。」(同上)
夜間帯に落ち着かなくなった利用者を、自分では開けられない部屋に入れて待たせることも身体拘束です。宿泊を伴う短期入所では、夜間に職員が少ない状況でこうした場面が起きやすいため、事前に対応手順を決めておくことが重要です。
また、「職員が自分の身体で利用者を押さえつけて行動を制限する」行為も、正当な理由のない身体拘束に当たるとされています(同上 表-1)。力で抑えることが習慣化していないか、研修で確認する機会が必要です。
やむを得ず行うときの3要件は、すべてそろっている必要がある
緊急やむを得ない場合には身体拘束が認められますが、手引きは3つの要件をすべて満たすことを求めています。「やむ得ず身体拘束を行う場合には、以下の3要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束を行う判断は組織的にかつ慎重に行います。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) )
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 切迫性 | 「利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いことが要件となります。」 |
| 非代替性 | 「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないことが要件となります。」 |
| 一時性 | 「身体拘束その他の行動制限が一時的であることが要件となります。」 |
出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)。表は当方が手引きの原文を整理したものです。
3要件の判断は、一人の職員がその場で決めるものではありません。「組織的にかつ慎重に行います」という手引きの文は、複数の職員・管理者が関与することを求めています。
やむを得ず行ったときは、決まった事項を記録する義務がある
やむを得ず身体拘束を行った場合は、記録が基準で義務になっています。基準は「やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第35条の2第2項(第145条で準用))と定めています。
記録に残す必要があるのは、次の4点です。
- 拘束の態様(どのような行為をしたか)
- 時間(いつから、どのくらいの時間か)
- 利用者の心身の状況
- 緊急やむを得ない理由
さらに手引きは、個別支援計画への記載と本人・家族への説明も必要としています。「身体拘束を行う場合には、個別支援計画に身体拘束の態様及び時間、緊急やむを得ない理由を記載します。」「身体拘束を行う場合には、これらの手続きの中で、適宜利用者本人や家族に十分に説明をし、了解を得ることが必要となります。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) )
委員会では、記録をもとに「当該事例の適正性と廃止へ向けた方策を検討」(解釈通知 p.65)し、やめるための方法を考え続けることが求められています。
委員会は虐待防止委員会と一体化できるが、両方の内容が必要
身体拘束適正化検討委員会は、虐待防止委員会と一体的に設置・運営できます。解釈通知は「身体拘束等適正化検討委員会と関係する職種等が相互に関係が深いと認めることも可能であることから、虐待防止委員会と一体的に設置・運営することも差し支えない。」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.65)としています。
研修も一体化の形で実施できます。「虐待防止に関する研修において身体拘束等の適正化について取り扱う場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなして差し支えない。」(出典:同上 p.66)
ただし、一体化した場合でも、両方のテーマがきちんと含まれていなければなりません。高知市の集団指導資料は、「身体拘束適正化及び虐待防止のための研修を一体的に実施しているが、両方の内容が含まれていない。」を不適切な事例として挙げています。(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」 p.14)
一体化した研修では、虐待防止の5種類の定義・通報義務と、身体拘束の3要件・手続き・廃止に向けた取り組みの両方を、内容として含める必要があります。
短期入所の身体拘束廃止未実施減算は、所定単位数の1%
委員会・指針・研修のいずれかが満たされていない場合、身体拘束廃止未実施減算が適用されます。短期入所は、手引きが示す「訪問・通所系」に分類されるため、減算は所定単位数の1%です。
手引きは、訪問・通所系のサービスを次のように列挙しています。「訪問・通所系:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、生活介護、短期入所、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) )
令和6年度の報酬改定で、減算の額が見直されました。「訪問・通所系サービスについて、減算額を5単位から所定単位数の1%に見直しました。」(出典:同上)
減算の始まる月・終わる月の扱い、改善計画の提出方法は、指定権者(都道府県・市)ごとに案内されています。所在地の指定権者の案内で確認してください。
研修では、廃止に向けた取り組みを職員全体で共有する
解釈通知は、委員会や研修の目的を「身体拘束等の適正化について、事業所全体で情報共有し、不適切な身体拘束等の再発防止や身体拘束等を行わない支援方法の検討につなげるためのものであり」と示しています。(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.65)
研修で伝えるべきことは、ペナルティの説明にとどまりません。落ち着かなくなるサイン(音・人の多さ・予定の変更・体調)を職員全員で共有し、拘束に頼る前にできることを事前に決めておくことが重要です。「行動障害のある人への支援」テーマ(短期入所の行動障害研修)も合わせて確認すると、具体的な対応手順を研修に組み込みやすくなります。
当方の法定研修・訓練キット(短期入所版)では、身体拘束の適正化テーマの研修資料・確認テスト・受講記録を作れます。虐待防止委員会との一体化の記録も管理できます。義務5テーマ+追加7テーマの計12テーマが1つのキットに入っています。
研修で確認すること
短期入所の身体拘束廃止研修で確認するべき項目を整理すると、次のようになります。
- 身体拘束の定義と、短期入所の夜間帯で起きやすい具体例
- 3要件(切迫性・非代替性・一時性)と、その判断が組織的に行われる手順
- 行ったときの記録事項(態様・時間・心身状況・理由)
- 個別支援計画への記載と本人・家族への説明
- 委員会での廃止に向けた検討の方法
- 廃止未実施減算(短期入所は1%)の条件
宿泊を伴う短期入所では、夜間帯の少人数体制での対応が必要になることがあります。緊急時にとるべき手順と連絡体制を、研修で確認し記録しておくことが、運営指導の際にも確認される内容です。
研修の記録・回数・運営指導での確認点については、短期入所の研修義務の一覧もあわせて参照してください。
この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)、高知市「令和7年度 集団指導資料」の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内もあわせて確認してください。作成:fufumumu_design


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