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厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)では、児童発達支援(児発)の収支差率は平均7.8%・中央値9.7%です。中央値が平均を1.9ポイント上回っているのは障害福祉7サービスの中で特徴的です。通常は一部の高収益事業所が平均を引き上げる(平均>中央値)ことが多いですが、児発では逆の関係になっています。
平均と中央値の関係が示す分布の特徴
収支差率の分布において、平均と中央値の関係から以下が読み取れます。
平均>中央値の場合(多くのサービスで見られる):分布の右裾(高収益側)が長い「右裾重分布」。一部の高収益事業所(収支差率20〜30%以上)が平均を引き上げている。放デイ(平均9.1% vs 中央値2.7%)がその典型例です。
平均<中央値の場合(児発・生活介護):分布の左裾(低収益・赤字側)が長い「左裾重分布」。一部の大幅赤字事業所(収支差率▲10%以下等)が平均を引き下げている。多数の事業所は中央値(9.7%)に近い収支差率を実現しています。
7サービスの平均・中央値比較
| サービス | 平均 | 中央値 | 差(平均-中央値) |
|---|---|---|---|
| 放デイ | 9.1% | 2.7% | +6.4pt(高収益が平均を引き上げ) |
| 就労移行支援 | 6.0% | 4.5% | +1.5pt |
| GH包括型 | 6.9% | 5.3% | +1.6pt |
| GH日中型 | 5.1% | 5.9% | -0.8pt(赤字が平均を引き下げ) |
| 生活介護 | 6.3% | 7.9% | -1.6pt(赤字が平均を引き下げ) |
| 短期入所 | 2.3% | 2.8% | -0.5pt |
| 児発 | 7.8% | 9.7% | -1.9pt(最大の逆転) |
児発(-1.9pt)と生活介護(-1.6pt)は「赤字事業所が平均を引き下げている」度合いが大きいサービスです。
全サービスの平均・中央値の差で見る分布の特徴
7サービスを横断して平均と中央値の差を確認すると、各サービスの収支差率の分布の特徴が見えてきます。
放デイは平均9.1%・中央値2.7%で、差が+6.4ポイントと最大です。これは「一部の高収益放デイ事業所(収支差率20〜30%以上)が平均を引き上げている」ことを意味します。実際、稼働率87.8%以上・専門的支援加算取得・定員充足のトップ層事業所では20%超の収支差率を実現しているケースがあります。放デイの平均9.1%を「達成可能な標準水準」と見ると危険で、多くの事業所にとっての実態は中央値2.7%です。
一方、GH日中型は平均5.1%・中央値5.9%(-0.8pt)、短期入所は平均2.3%・中央値2.8%(-0.5pt)です。これらは平均と中央値がほぼ近い水準で、「分布が比較的均一」なサービスといえます。事業所によって大きな差が出にくい費用構造(定員規模・人員配置基準等)が安定した分布を生み出しています。
児発の中央値9.7%(>平均7.8%)という逆転は、赤字事業所(特に医療型)が一部存在しながら、多くの事業所が健全な収支を維持していることを示しています。自事業所が福祉型(一般型)の児発であれば、中央値9.7%を目標水準として設定するのが適切です。
児発で赤字事業所が発生しやすい構造
中央値9.7%(多数の事業所)の一方で、一部の事業所で大幅な赤字が発生し、平均を引き下げているのはなぜでしょうか。
医療型児発の高コスト構造:医療型(重症心身障害児対応)の児発は、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の常勤配置が必要です。これらの専門職の人件費率は75〜80%以上になることがあり、収支差率が大幅な赤字になる事業所があります。平均7.8%を大きく下回る赤字事業所が存在することで、全体平均が下がっています。
開設初年度・立ち上げ期の赤字:新規開設の児発は稼働率が低い状態(40〜60%程度)から始まります。この時期は人件費が先行して発生するため、赤字になります。特に医療型は人員配置が手厚いため、立ち上げ期の赤字幅が大きくなります。
定員が少なすぎる事業所:定員5人以下の小規模児発では、固定的な人件費(管理者・支援員の最低配置)が収入を上回るケースがあります。
中央値9.7%から読み取れる「標準的な児発の収益性」
中央値9.7%は「全体の半数以上の事業所が達成している水準」を意味します。児発の「標準的な運営」では9〜10%程度の収支差率を実現できていることを示しています。
児発の全国平均7.8%と比較して自事業所の収支差率が低い場合でも、中央値9.7%が「多くの事業所が達成している水準」である点を踏まえると、改善余地を確認することが有効です。
- 自事業所の収支差率が7.8%未満の場合:全国の半数近くの事業所より低い状態。稼働率・加算の確認が優先
- 自事業所の収支差率が7.8〜9.7%の場合:全国平均より良いが中央値には届いていない。加算取得や稼働率の微調整で改善余地あり
- 自事業所の収支差率が9.7%以上の場合:全国中央値以上を維持できている。現状の運営を続けながら、維持のために何が効いているかを確認する
医療型・福祉型という事業形態の違いを確認した上で全国平均・中央値と比較することが、正確な経営診断につながります。
放デイと児発の中央値の差から見る経営上の示唆
放デイの中央値2.7%と児発の中央値9.7%の差(7ポイント)は、両サービスの経営難易度の違いを示しています。放デイは事業所数が多く、競合が激しいため稼働率の確保が難しい事業所が多い一方で、一部の高収益事業所(専門的支援加算取得・稼働率90%超)が平均を引き上げています。児発はまだ競合が比較的少ない地域もあり、稼働率が安定しやすい傾向があります。
この2サービスを同法人で運営している場合、放デイの中央値2.7%と児発の中央値9.7%を組み合わせた全体の収支差率がどの水準にあるかを確認することで、重点を置くべきサービスが見えてきます。放デイの収支が中央値を大幅に下回っている場合、児発の収益で補填している可能性があります。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。

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