短期入所は宿泊日数が短くても、利用者が施設にいる間の安全管理義務は事業者にあります。入所時に皮膚の状態を確認し、宿泊中の体位変換を確実に実施することが、褥瘡の発生予防と責任の明確化の両方につながります。基準第49条(第145条で準用)の事故防止義務をふまえ、研修で確認すべき内容をまとめました。
褥瘡は皮膚への持続的な圧迫と摩擦が原因で短期入所でも発生リスクがある
褥瘡(じょくそう・床ずれ)は、皮膚が長時間圧迫されることで血流が途絶え、皮膚組織が壊死する状態です。骨の突出部(仙骨・踵・坐骨・肘・後頭部など)に発生しやすく、同じ体位での長時間の保持・栄養不良・皮膚の湿潤(失禁等)がリスク要因になります。
短期入所で褥瘡リスクが生じやすい理由を整理すると次のとおりです。
- 家庭での体位変換の頻度・方法を引き継いでいない(施設と家庭でやり方が違う)
- 自立度の把握が不十分で、夜間の体位変換の必要性を見落とす
- 宿泊日数が短いため「短い間だから大丈夫」という判断が生じやすい
- 入所時の皮膚状態の確認が不十分で、家庭発生の褥瘡を見落とす
入所時の確認不足によって、施設での宿泊中に発生したのか、それとも家庭ですでに発生していたのかが不明になるケースもあります。入所時の皮膚確認と記録は、施設の免責証明のためにも重要です。
褥瘡のステージはNPUAP/EPUAPの分類に基づいて確認する
褥瘡の重症度はNPUAP/EPUAP(国際褥瘡諮問委員会)の分類に基づいてステージで評価します。NPUAP/EPUAPは2019年に「NPIAP/EPUAP/PPPIA」として統合されていますが、実務では従来のステージ分類が広く使われています。
| ステージ | 皮膚の状態 | 対応 |
|---|---|---|
| ステージ1 | 圧迫を解除しても消えない発赤(皮膚は損傷していない) | 体位変換の頻度を増やす・圧力分散(クッション等)を強化 |
| ステージ2 | 表皮・真皮の部分的な組織欠損(水疱・浅い潰瘍) | 看護職・医師に報告・創傷被覆材の使用を検討 |
| ステージ3 | 皮下脂肪まで達する全層的な組織欠損 | 医師による処置・家族への報告・行政報告を検討 |
| ステージ4 | 骨・腱・筋肉に達する深い組織欠損 | 医療機関への緊急対応・基準第49条に基づく報告義務 |
| 疑似損傷(Unstageable) | 壊死組織で深さが評価できない状態 | 医療機関への対応・記録を詳細に残す |
| 深部損傷(DTPI) | 深部組織の損傷が疑われる暗紫色・暗赤色の変色 | 看護職への報告・注意深い経過観察 |
表はNPIAP/EPUAP/PPPIAの分類を参考に当方が整理したものです。
施設職員(介護職)は褥瘡の発見と報告を行います。処置(創傷被覆材の選択・外用薬の使用)は看護職または医師が担当します。「発見して報告する」という役割を明確にしておくことが重要です。
基準第49条の事故防止義務が短期入所でも褥瘡管理の根拠となる
基準第49条(第145条で準用)は、事故の発生防止・再発防止のための措置と、事故発生時の市町村・家族への報告・記録を義務づけています。(出典:基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索))
褥瘡の発生・悪化は事故として取り扱われる場合があります。特にステージ2以上に進行した場合は、市町村・家族への報告が必要か判断します。指定権者(都道府県・市)によって報告基準が異なるため、指定を受けた際に確認しておきます。
解釈通知(障発第1206001号)は、「利用者の心身の状況を的確に把握し、必要な援助を行わなければならない」としており、皮膚の状態の定期的な観察も含まれると解釈されます。(出典:解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日))
体位変換は2時間ごとが基本で圧力分散マットを使う場合は延長できる
体位変換の基本的な間隔は、一般的に「2時間ごと」とされています。ただし、圧力分散マット(エアマット・ウレタンフォームマット)を使用する場合は、圧力の分散効果によって体位変換の間隔を延長できることがあります。延長できる間隔の判断は、使用するマットの仕様・利用者の状態・看護職の判断によります。
体位変換の基本手順:
- 変換前にナースコール・センサーの位置を確認する
- 利用者に「体の向きを変えます」と声かけする
- 仙骨・踵など骨突出部への圧を一時的に完全に除圧してから向きを変える
- 体位変換後は新しい姿勢で骨突出部(特に側臥位では腸骨・大転子・膝の内側)に圧がかかっていないことを確認する
- クッション・枕を使って体位を安定させる
- 実施日時・体位の変更方向・皮膚の状態を記録する
骨突出部に直接圧がかかるとステージ1の発赤が30分〜1時間で発生することがあります。発赤を発見したら体位を変えて圧を解除し、経過を観察します。
入所時の皮膚状態確認は全身の主要部位を目視・触診で確認して記録する
入所時に皮膚状態を確認することで、施設での宿泊中に発生した皮膚トラブルと家庭ですでにあった状態を区別できます。この確認と記録は、後から「どちらで発生したか」を問われたときの根拠になります。
確認する主要部位:
- 仙骨・尾骨(最も褥瘡が発生しやすい部位)
- 踵・足首(長時間のベッド上安静で圧迫される)
- 後頭部(仰臥位での圧迫)
- 肩甲骨・肘・膝の外側(側臥位での圧迫)
- 坐骨・大転子(車いすでの長時間座位)
確認の際は、色の変化(発赤・紫・暗褐色)・皮膚の破損(水疱・びらん・潰瘍)・湿潤(失禁・汗)を記録します。異常を発見した場合は写真で記録し(施設のルールに従って)、看護職と家族に報告します。写真がない場合はイラストや文章で詳細に記録します。
栄養状態の確認と水分補給も褥瘡予防の一部である
皮膚の再生には蛋白質・亜鉛・ビタミンCなどの栄養素が必要です。栄養状態が低下している利用者は褥瘡の発生リスクが高く、治癒も遅くなります。短期入所の宿泊中は、食事の摂取量を記録し、著しく少ない場合は看護職または家族に相談します。
また、脱水状態では皮膚の弾力が低下し、圧迫・摩擦への耐性が下がります。水分補給の記録と確認も褥瘡予防の観点から重要です。
失禁による皮膚の湿潤も褥瘡のリスク要因です。失禁後は速やかにおむつ交換または清拭を行い、皮膚を清潔・乾燥した状態に保ちます。皮膚保護クリームの使用も有効です(看護職の指示に従って使用)。
褥瘡予防研修は年1回以上・発見時の報告手順の確認を必ず含める
褥瘡予防研修の法定義務回数は直接規定されていませんが、安全管理研修の一部として年1回以上の実施が適切です。研修では体位変換の実技(適切な力の入れ方・クッションの当て方)と、発見時に「誰に・何を・どのように報告するか」の手順確認を必ず含めます。
新入職員は、実際に利用者の皮膚確認・体位変換を行う前に、先輩職員の見本を見た上で実習を経ることが重要です。「褥瘡ができてから対応する」ではなく、「入所時に確認して、宿泊中に予防する」という視点を最初に伝えます。
事故発生後の報告手順については短期入所の事故報告・苦情対応研修もあわせて確認してください。
研修資料・確認テスト・記録様式は法定研修・訓練キット(短期入所版)でまとめて用意できます。
この記事は、障害者総合支援法に基づく基準(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日)の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。褥瘡のステージ分類については国際的な分類(NPIAP/EPUAP/PPPIA)を参考にしています。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内もあわせて確認してください。作成:fufumumu_design


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