短期入所の開業後1年目の収支。稼働率が上がるまでの資金繰りの見通し。

短期入所の開業後1年目の収支。稼働率が上がるまでの資金繰りの見通し。 短期入所





短期入所の開業後1年目の収支。稼働率が上がるまでの資金繰りの見通し。

短期入所の開業後1年目の収支。稼働率が上がるまでの資金繰りの見通し。

短期入所の収支を試算できます。
▶ 短期入所 開業収支シミュレーター

短期入所は開業直後から利用者が満員になることはほとんどなく、開業から3〜6か月は稼働率が低い状態が続くのが一般的です。この期間は収入が人件費・家賃などの固定費を下回り、赤字運営になることが多く、開業前に運転資金を確保しておくことが重要です。この記事では、モデルケースを使って開業1年目の収支の見通しと資金繰りを整理します。

開業直後に稼働率が低い3つの理由

短期入所の新規事業所が開業直後に稼働率が低くなる主な理由は次の3つです。

1. 利用者(支援区分の認定・受給者証の発行)に時間がかかる

短期入所を利用するには、障害支援区分の認定と受給者証の取得が必要です。新規利用者が区分認定を申請してから受給者証が交付されるまで数か月かかる場合があります。開業直前から利用者候補と連絡を取り始めても、実際にサービス提供が始まるまでのタイムラグがあります。

2. 相談支援専門員・既存事業所からの紹介ルートの構築

障害福祉サービスの利用者は相談支援専門員(ケアマネジャーに相当)が作成するサービス等利用計画に基づいて事業所を選びます。開業直後は相談支援専門員への事業所説明・信頼関係の構築ができていないため、紹介が少ない状態が続きます。地域の相談支援事業所への営業活動(挨拶回り・説明資料の配布)から始める必要があります。

3. 利用者が慣れるまでの調整期間

初めて短期入所を利用する障害者・家族は、新しい施設への不安からキャンセルや短期間のみの試験利用から始まることが多く、定期的な利用が定着するまでに時間がかかります。

モデルケースの設定

以下の試算は、次の条件で設定したモデルケースです。実際の事業所の収支は条件によって大きく異なりますので、必ずシミュレーターで自身の数字を試算してください。

  • 事業形態:単独型(単独型第3号)
  • 利用定員:10名
  • 地域区分:その他(1単位=10円)
  • 想定する障害支援区分:区分5中心
  • 算定する加算:単独型加算・食事提供体制加算・処遇改善加算(Ⅰ)ロ
  • 1日1人当たりの報酬(概算):約13,700円(下記計算を参照)

1日1人当たりの報酬の計算(単独型・区分5・その他地域・処遇改善(Ⅰ)ロ):

  • 基本報酬(区分5):784単位
  • 単独型加算:320単位
  • 食事提供体制加算:48単位
  • 小計(処遇改善前):1,152単位 × 10円 = 11,520円
  • 処遇改善加算(Ⅰ)ロ(+19.3%):11,520 × 1.193 ≈ 13,742円

この金額は公費(障害福祉サービス費)と利用者負担(原則1割)の合計です。事業者が受け取るのは介護給付費の9割分+利用者負担分で、合計がこの金額に相当します。

稼働率別の月次収支(モデルケース)

月間収入の計算

稼働率 1日平均利用人数 月間利用人日(×30日) 月間収入(概算)
30% 3名 90人日 約124万円
50% 5名 150人日 約206万円
70% 7名 210人日 約289万円

月間固定費の目安

開業1年目の月間固定費の目安は次のとおりです。これもモデルケースであり、地域・物件・職員構成によって大きく変わります。

費目 金額(月額) 備考
管理者(兼任)の人件費 約30万円 他のサービスと兼任の場合は按分
サービス管理責任者の人件費 約28万円 常勤1名を想定
生活支援員の人件費 約50万円(2名×25万円) 最低人員配置の場合
人件費 小計 約108万円 社会保険料・賞与を除く目安
家賃・リース料 約15万円 物件規模・地域による
水道光熱費 約7万円 宿泊施設のため高め
消耗品・食材費等 約5万円 食事を外部委託する場合は別途
保険料・通信費等その他 約3万円
固定費合計(目安) 約138万円

稼働率別の月次損益

稼働率 月間収入 月間固定費 月次損益
30% 約124万円 約138万円 約▲14万円(赤字)
50% 約206万円 約138万円 約+68万円(黒字)
70% 約289万円 約138万円 約+151万円(黒字)

このモデルケースでは、稼働率が約33〜35%を超えると損益分岐点(月次収支のトントン)に達します。開業直後の3か月は稼働率30%前後、4〜6か月目で50%台に乗ることを目標に利用者開拓を進めることが多いです。

1年目の資金繰りのイメージ

開業直後の赤字期間が約3か月続く場合(月▲14万円×3か月)でも、赤字の累計額は約42万円です。ただし、開業時には設備投資(内装・備品等)・初期運転費・消耗品費なども発生しているため、開業前に確保すべき運転資金は最低でも500万〜1,000万円程度が目安とされます(定員規模・物件状況によって異なります)。

1年目の資金繰りを乗り切るためのポイントは次のとおりです。

  • 開業前に3〜6か月分の運転資金を確保する:稼働率が低い初期に固定費を支払い続けるための余裕資金
  • 日本政策金融公庫の創業融資を活用する:無担保・無保証で最大7,200万円(一般貸付)が利用できる。申し込みは開業8か月前ごろから検討を始める
  • 介護給付費の入金タイミングを把握する:サービス提供月の翌月に国保連へ請求し、翌々月に入金されるため、2か月分の収入を先払いで確保する必要がある

損益分岐稼働率の把握が重要

自事業所の損益分岐稼働率(月次収支がトントンになる稼働率)を事前に把握しておくことが重要です。損益分岐稼働率は、固定費÷1人日当たりの限界利益で計算できます。

上記モデルでは:138万円 ÷ 13,742円 ≈ 100人日/月 → 定員10名で100人日 = 稼働率33%が損益分岐点です。

損益分岐点については次の記事で詳しく解説しています。また、自身の数字(定員・人件費・地域区分等)を入力して試算するには、開業収支シミュレーターをご活用ください。

短期入所の収支を試算できます。
▶ 短期入所 開業収支シミュレーター

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出典:令和3年厚生労働省告示第523号(障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の報酬の算定に関する基準)・指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)。本記事の試算はモデルケースであり、実際の収支を保証するものではありません。当ページは法令の解説を目的としており、法的助言ではありません。最新の内容は指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。作成:2026年11月。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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