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就労移行支援の稼働率(定員対比の利用率)は、収支差率に大きく影響する指標です。福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)から、就労移行支援の稼働率の参考値と収益への影響を整理しました。
WAMの稼働率参考値は69.2%、7サービス最低
福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)では、就労移行支援の稼働率参考値は69.2%・年間営業日数266.5日です。
| サービス | WAM稼働率参考値 |
|---|---|
| 放課後等デイサービス | 87.8% |
| グループホーム日中型 | 86.0% |
| グループホーム包括型 | 85.7% |
| 生活介護 | 84.2% |
| 児童発達支援 | 80.8% |
| 就労移行支援 | 69.2%(最低) |
就労移行支援の稼働率は他のサービスより10〜20ポイント低い水準です。これは就労移行支援の利用構造が通所型サービスと根本的に異なることが理由です。
就労移行支援の稼働率が低い理由
就労移行支援の稼働率が低くなりやすい理由は、利用者が就職して退所するサービスの特性にあります。
- 利用期限が原則2年:利用者は最長2年で就職して退所するため、定員に対して常に「新規利用者の確保→支援→就職退所」のサイクルが回り続ける。新規利用者の確保が遅れると定員が埋まらない期間が生じる
- 就職活動期間中の外出・不在:利用者が就職活動(面接・職場見学)のために事業所を欠席する日が増える。就職が近づくほど通所日数が減る
- 試用期間中の減少:就職後の職場定着支援期間(6ヶ月)中は通所が減り、最終的に退所するまでの期間に稼働率が下がる
- 適合する利用者の選定に時間がかかる:アセスメント・見学・体験利用を経て正式契約になるまで、複数回のプロセスがある
これらの要因が重なることで、放デイ(87.8%)やGH(85〜86%)と比べて稼働率が20ポイント前後低い水準になります。
稼働率が収入に与える影響の試算
調査事業所の平均データ(定員14人・年収2,878万円・令和6年度)をもとに、稼働率変化の影響を試算します。
| 稼働率 | WAM参考値比 | 収入試算(年) | 収支差試算(年)※ |
|---|---|---|---|
| 80% | +10.8pt | 約3,323万円 | 約575万円 |
| 69.2%(WAM参考値) | ±0 | 約2,878万円 | 約130万円(R6実績) |
| 65% | ▲4.2pt | 約2,703万円 | ▲45万円(赤字) |
| 60% | ▲9.2pt | 約2,493万円 | ▲255万円(赤字) |
※収支差試算は人件費率64.2%・その他費用が固定という前提の簡易計算です。参考値です。
稼働率が69.2%から65%に下がると(定員14人なら0.6人分の減少)、収支が赤字に転落する計算です。就労移行支援は7サービスの中で稼働率の余裕が最も少なく、小さな変動で赤字になるリスクがあります。
就労移行支援の損益分岐稼働率の目安
令和6年度の全国平均データ(年収2,878万円・収支差率4.5%中央値)から逆算すると、就労移行支援の損益分岐稼働率は約65〜66%程度です。
定員14人・年間営業日数267日で計算すると:
- 損益分岐稼働率65%:14 × 0.65 × 267 = 2,430人日/年 ≈ 毎日9.1人
- WAM参考値69.2%:14 × 0.692 × 267 = 2,586人日/年 ≈ 毎日9.7人
毎日10人前後が通所している状態がWAM参考値の水準です。毎日9人を下回ると赤字に近づく計算です。「何人が毎日来ているか」という視点で稼働率を把握することが、日常的な経営管理の基本です。
就労移行支援の職員構成と人件費の特徴
就労移行支援の調査事業所(平均)では、職員1人あたり月給の参考値(WAM)は次のとおりです(令和6年度調査ベース)。
| 職種 | 常勤月給(参考) |
|---|---|
| 施設長・管理者 | 329,602円 |
| サービス管理責任者 | 315,305円 |
| 就労支援員 | 264,368円 |
| 職業指導員 | 239,860円 |
| 生活支援員 | 239,213円 |
就労支援員・職業指導員・生活支援員の3職種が直接支援を担います。このうちパート職員の月給は約13〜14万円です。常勤と非常勤の配置バランスが人件費率に影響するため、定員規模と利用者数に合わせた職員配置の最適化が重要です。
人件費率64.2%(全国平均)を超えている場合は、常勤職員の配置数が過剰になっていないか、または稼働率が低下して収入が減っているかのどちらかが多い原因です。
稼働率を高める現実的な方法
就労移行支援の稼働率を改善するには、「退所する利用者の補充スピードを上げる」ことが核心です。具体的には次の方法が考えられます。
- ハローワーク・特別支援学校との連携強化:就労移行支援を必要としている方の情報が集まる窓口と定期的な情報交換をする
- 体験利用の受け入れ増加:体験利用から正式契約に移行する確率を高めることで、新規利用者の確保サイクルを短縮できる
- 定員の見直し:現状の稼働率が60〜65%で定員が大きい場合、定員を縮小することで稼働率の見かけ上の数字を改善し、人件費コストとのバランスを取り直す方法がある
就労移行支援の稼働率と収支のまとめ
| 指標 | 全国水準(令和6年度) |
|---|---|
| 稼働率(WAM参考値) | 69.2%(7サービス最低) |
| 収支差率(中央値) | 4.5% |
| 人件費率 | 64.2% |
| 平均定員 | 14人 |
| 平均年収入 | 2,878万円 |
| 損益分岐稼働率目安 | 約65〜66% |
就労移行支援は稼働率の余裕が少なく、損益分岐稼働率と現状稼働率の差がわずかです。日常的な稼働率の確認と、退所者の補充計画が経営安定の鍵です。
月次で稼働率を記録し、「何人が毎日通所しているか」を把握することが就労移行支援の経営管理の基本です。稼働率が65%を下回る状態が続いている場合は、新規利用者の確保策と定員の見直しを同時に検討することが求められます。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標 2023年度決算分。試算値は当方が概算計算したもので、各機関が作成したものではありません。

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