認知症対応型グループホームの損益分岐点|入居率と月収支の試算

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の損益分岐点は、1ユニット9人の場合で入居率88〜95%(8〜9人)が目安です。1ユニット規模では常に満員に近い状態でないと黒字化が難しく、2ユニット以上の規模化で固定費を共通化することが経営安定の定石です。厚生労働省の実態調査(令和3年度)では全国平均の収支差率は3.9%です。

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認知症GHの報酬単価(2024年度)

認知症対応型共同生活介護の基本報酬は1日単位で計算されます(月額制ではありません)。ユニット数と要介護度によって単価が異なります。

要介護度 1ユニット型(Ⅰ)単価 2ユニット型(Ⅰ)単価
要介護1 761単位/日 739単位/日
要介護2 793単位/日 771単位/日
要介護3 816単位/日 793単位/日
要介護4 833単位/日 810単位/日
要介護5 851単位/日 827単位/日

出典:厚生労働省「2024年度介護報酬改定における改定事項について」

要介護度が上がるほど単価が高くなりますが、介護の手間も増えます。グループホームの入居者は認知症が主たる診断のため、要介護2〜4が多い傾向があります(全国平均:要介護3前後)。

損益分岐点の計算(1ユニット9人・要介護3の場合)

1ユニット9人・要介護3(816単位/日)・地域区分その他(11円)・稼働率別の月収入:

入居者数 稼働率 月収入(30日換算)
7人 78% 816 × 7 × 30 × 11円 ≒ 1,892,520円
8人 89% 816 × 8 × 30 × 11円 ≒ 2,163,360円
9人(満員) 100% 816 × 9 × 30 × 11円 ≒ 2,434,320円

固定費の目安(1ユニット・9人体制):

費用項目 月額目安
管理者・計画作成担当者(兼務) 30万〜40万円
介護職員(3:1基準・夜勤対応含め5〜7名) 150万〜210万円(社保込み)
家賃・建物維持費 10万〜25万円
食材費(入居者9人分) 12万〜18万円
水道光熱費・消耗品等 8万〜12万円
合計固定費 210万〜305万円/月

損益分岐入居者数(要介護3・11円):

  • 固定費210万円 ÷(816 × 30 × 11円/人)= 210万円 ÷ 269,280円 ≒ 7.8人 → 8人
  • 固定費305万円 ÷ 269,280円 ≒ 11.3人 → 12人

固定費を低めに抑えれば8人(89%稼働)から損益分岐可能ですが、固定費が高い場合は1ユニット9人では赤字になります。1ユニット規模での黒字化は難しく、2ユニット(18人)以上への拡大が必要になるケースが多いです。

2ユニット(18人)に拡大すると損益分岐が改善する理由

2ユニットに拡大することで、次のコストが共通化されます。

  • 管理者・計画作成担当者:1ユニットでも2ユニットでも1人で兼務可能(管理者人件費が共通化)
  • 建物・土地コスト:同一建物内に2ユニットを設置すれば、家賃・維持費の増加は建物面積分だけ
  • 送迎車両:2ユニットでも車両は共用可能(グループホームは基本的に住まいのため送迎なし)

2ユニット(18人)・要介護3・11円・稼働率85%の場合の月収入:

  • 793単位(2ユニット型Ⅰ・要介護3)× 18人 × 0.85 × 30日 × 11円 ≒ 4,006,000円/月

固定費(1ユニット追加分の人件費・家賃等)が追加で200万〜250万円かかっても、収支差は十分黒字化できる水準です。

空床期間が収益を直撃する構造

グループホームは入居型のため、空室(空床)が発生すると即座に収入が減ります。認知症の方の入居では、次の要因で退去が発生します。

  • 医療依存度の上昇(入院・特養への移行)
  • 死亡退去
  • 家族の都合(遠方への転居等)

次の入居者を探す期間(通常1〜4週間)が空床期間になります。入居者の紹介を継続的に受けるために、地域包括支援センター・ケアマネジャー・病院の相談員(MSW)とのつながりを日常的に維持することが重要です。

損益分岐を改善する主な加算

  • 認知症加算:認知症日常生活自立度Ⅱ以上の方に算定(月額700〜900単位/人)
  • 看取り介護加算:グループホームで看取りを実施した場合(780〜1,580単位、死亡前日〜死亡日)
  • 夜間支援体制加算(Ⅰ)(Ⅱ):夜間の体制に応じて算定(1日あたり50〜25単位)
  • サービス提供体制強化加算:介護福祉士の割合に応じて算定(月額640〜1,000単位/人)

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認知症対応型グループホーム以外の福祉・介護事業の収支情報は、福祉事業者向けツール一覧にまとめています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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