居宅介護支援は儲かるか|収支差率2.6%の実態と収益を上げるための条件

居宅介護支援(ケアマネ事業所)は儲かるか——結論からいうと、1〜2人体制では収支トントンかわずかな黒字が精一杯です。全国平均の収支差率は約2.6%(令和3年度・厚生労働省介護事業経営実態調査)で、主要な介護サービスの中でも低水準に位置します。しかし特定事業所加算(Ⅱ)以上を取得し、担当件数を最大化した場合は収益性が大幅に改善します。また他の介護サービスとの一体運営(訪問介護・通所介護等との複合経営)が、最も利益を出しやすい方法です。

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収支差率の全国平均データ

厚生労働省「令和3年度介護事業経営実態調査」より:

指標 居宅介護支援(令和3年度)
収支差率 2.6%
収入(1事業所・年額) 約1,748万円
総費用(1事業所・年額) 約1,703万円
収支差額(1事業所・年額) 約45万円
人件費比率 約75〜80%

出典:厚生労働省「令和3年度介護事業経営実態調査」

年間収支差額が約45万円(月約3.7万円)という水準です。ケアマネ1人の正社員給与が月28〜32万円程度であることを考えると、管理者ケアマネが1人の事業所では利益がほぼ出ない構造です。

主な介護事業との収支差率比較

サービス種類 収支差率(令和3年度)
訪問介護 6.4%
通所介護 5.9%
認知症GH 3.9%
居宅介護支援(ケアマネ) 2.6%
小規模多機能 1.9%

主な介護事業の中で収支差率が低い部類です。同一事業者が訪問介護を運営した場合の2.5倍の収益性があることを考えると、単独で居宅介護支援のみを運営するのは経営効率が低いといえます。

収益性が低い構造的な理由

理由1:担当件数の上限規制(逓減制)

ケアマネ1人あたりの担当件数は標準で40件までです(41件以上は報酬が逓減)。ICT活用・主任ケアマネ配置で45件まで逓減を免除できますが、それ以上の収入増は人員を増やすしかありません。訪問介護のように単純に利用者を増やすほど収入が増える構造とは異なります。

理由2:軽度者(要支援)は報酬単価が低い

介護予防支援(要支援1・2)はケアマネが担当する場合の報酬が要介護者の約10〜50%程度と低く設定されています。要支援の利用者比率が高いほど担当件数に対する収入が下がります。

理由3:他のサービス事業者のように規模を拡大しにくい

訪問介護・通所介護は利用者・職員を増やすほど収益が増えますが、居宅介護支援はケアマネの人員が収入の上限を決めます。ケアマネを増やせば収入は増えますが、採用難や給与コストが伴います。

儲かるケースとその条件

条件1:特定事業所加算(Ⅱ)以上を取得する

特定事業所加算は取得区分によって基本報酬に次の金額が上乗せされます(要介護1人あたり):

  • 特定事業所加算(Ⅰ):月505単位/件
  • 特定事業所加算(Ⅱ):月409単位/件
  • 特定事業所加算(Ⅲ):月309単位/件

ケアマネ1人・担当40件・加算(Ⅱ)取得・11円換算:40件 × 409 × 11円 = 月179,960円の加算収入です。加算取得前(基本報酬のみ)より月18万円の収入増になります。

特定事業所加算(Ⅱ)の取得要件は主任ケアマネの配置・24時間連絡体制・定期的な事例検討会の実施等です。

条件2:担当件数を最大化する(ICT活用で45件まで)

逓減制の緩和要件(ICT活用+主任ケアマネ配置)を満たし、45件まで逓減なしで担当することが収入最大化のポイントです。5件増えるだけで月収入が約6〜8万円増えます。

条件3:訪問介護・通所介護との一体運営

居宅介護支援事業所が訪問介護・通所介護等も運営する「複合型」が最も収益性が高い形態です。

  • ケアマネが自法人のサービスに適切に繋ぐことで、訪問介護・通所介護の稼働率が安定
  • 事務コスト・家賃を他サービスと共用できる
  • 法人全体の収益は大きく改善(居宅介護支援単体の収支は薄くても法人全体では黒字)

単独開業vs複合運営:月収支試算

ケアマネ2人体制(担当35件ずつ計70件)・特定事業所加算(Ⅱ)取得・月20日の場合:

  • 基本報酬(要介護3・居宅介護支援(Ⅱ)・1,006単位):1,006 × 70件 × 11円 = 773,620円
  • 特定事業所加算(Ⅱ):409 × 70件 × 11円 = 314,930円
  • 月収入合計:約1,088,550円
  • 月費用(人件費2人分580万+家賃10万+その他5万 ÷ 12):約80万円
  • 月収支:約+28万円(収支差率約25%)

加算取得+適切な担当件数の維持で、収支差率は全国平均(2.6%)を大幅に上回ることが可能です。

居宅介護支援を開業する現実的なメリット

収益性だけで判断すると魅力が薄く見えますが、次のメリットがあります。

  • 初期投資が最小(100〜150万円程度):車両・特殊設備不要で事務所さえあれば開業できる
  • 安定した月次収入:介護認定が更新される限り担当利用者からの収入が継続する
  • 介護保険制度の中心的役割:他サービス事業者との連携が自然に生まれ、事業拡大の起点になりやすい
  • 主任ケアマネ資格者のキャリア活用:資格を持つ人材が独立・起業する手段として現実的

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居宅介護支援以外の福祉・介護事業の収支情報は、福祉事業者向けツール一覧にまとめています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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