後見は本人が死亡したら終わるか|終了後にやること・登記抹消・死後事務

成年後見制度は「本人(被後見人)が死亡したときに終了する」という仕組みだ(民法第653条第1号準用・家事事件手続法第121条)。しかし後見が終了した後には「後見人としての終了手続き」が残っており、これを放置すると法律上の問題が生じる。後見が終わる場面と、終了後に必要な手続きを整理した。

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成年後見が終了する主なケース

成年後見が終了する主なケースを整理した。

  • 被後見人の死亡:被後見人が死亡すると後見は当然終了する(民法第653条第1号準用)。最も多い終了原因だ
  • 後見開始の審判の取り消し:被後見人の判断能力が回復した場合、家庭裁判所が「後見開始の審判を取り消す」審判を行うと後見が終了する(民法第10条)。ただし認知症は一般的に回復しないため、このケースは稀だ
  • 後見人の死亡・辞任・解任:後見人が死亡・辞任・解任された場合は、後見人としての地位が終了する。ただし後見自体が終了するわけではなく、新たな後見人が選任される必要がある
  • 被後見人の破産:被後見人が破産した場合、一定の範囲で後見が終了することがある

実務上最も多いのは「被後見人の死亡による後見の終了」だ。以下では、被後見人が死亡した場合の手続きを中心に整理する。

被後見人が死亡したら後見人がやること

被後見人が死亡した直後から後見人がやるべきことを時系列で整理した。

1. 緊急の対応(死亡当日〜数日以内)

  • 家庭裁判所への連絡・報告:後見人として担当している家庭裁判所に「被後見人が死亡した」という連絡を行う。家庭裁判所によって連絡方法(電話・書面)が異なるため確認が必要だ
  • 財産の保全(現状維持):被後見人が死亡した時点で後見人の「財産管理権・代理権」は終了する。後見人は葬儀の費用を立て替えることはあっても、原則として被後見人の財産を後見人の権限で動かすことはできなくなる(民法第873条の2参照)
  • 葬儀費用の支払い:被後見人の財産から葬儀費用を支払うことは「死後事務」として後見人がやむを得ない範囲で行える場合がある(民法第873条の2)。ただし相続人がいる場合は相続人との連絡が先決だ

2. 後見終了の登記申請(死亡後2週間以内が目安)

被後見人が死亡すると、後見は法律上当然終了するが「後見登記の閉鎖申請」を行う必要がある。

  • 申請先:東京法務局(後見登記は東京法務局が一元管理)
  • 申請人:後見人
  • 必要書類:後見終了登記申請書・被後見人の死亡を証明する書類(戸籍謄本)・後見登記事項証明書(現在のもの)
  • 手数料:収入印紙1,400円

この登記申請を怠ると、後見がまだ継続しているかのような登記が残り続ける。金融機関・不動産登記等の手続きで混乱が生じる可能性がある。

3. 管理計算(後見終了時の財産の精算)

被後見人が死亡した後、後見人は「後見中に管理していた財産の収支計算(管理計算)」を行い、後見中の財産状況を相続人(または相続財産管理人)に引き渡す義務がある(民法第870条)。

管理計算の内容として次のものが含まれる。

  • 後見が開始してから終了するまでの収入・支出の一覧(家庭裁判所への定期報告書が元になる)
  • 後見終了時の財産残高(現金・預金・不動産等)
  • 後見人が立て替えた費用の精算

管理計算は相続人への財産引き渡しの前提となる。管理計算後に相続人(または相続財産管理人)に財産を引き渡すことで後見人の責任が終了する。

4. 財産の相続人への引き渡し

管理計算が完了したら、後見中に管理していた財産(通帳・印鑑・不動産関係書類等)を相続人に引き渡す。

相続人が複数いる場合は「誰に引き渡すか」の問題がある。相続人全員が合意している場合はその合意に従う。合意がない場合は相続人全員に連絡して判断を求める、または弁護士に相談する。

5. 後見人報酬の付与申立て(未払いがある場合)

後見中の報酬が未払いの場合や、後見終了後の終了手続きに対して報酬を求める場合は、家庭裁判所に「後見人報酬付与の申立て」を行う(家事事件手続法第126条)。報酬は家庭裁判所が財産規模・業務量を考慮して決定する。

後見終了後の家庭裁判所への報告

被後見人が死亡して後見が終了した後も、後見人は家庭裁判所への最終報告が必要になる場合がある。家庭裁判所が「後見終了の報告書の提出」を求めてくることがあるため、指示があれば対応する必要がある。

最終報告書の内容として次のものが含まれる。

  • 後見が終了した日(被後見人の死亡日)
  • 後見終了時の財産残高・収支状況
  • 死後事務として行った内容(葬儀費用の支払い等)
  • 相続人への財産引き渡しの状況

家庭裁判所への最終報告が完了することで、後見人としての責任が正式に終了する。報告書の提出を求められた場合は速やかに対応することが重要だ。

後見人が受け取る「後見終了後の報酬」

後見が終了した後、後見中に受け取れていなかった報酬(未払い報酬)がある場合や、後見終了に伴う事務処理(管理計算・財産引き渡し等)に対して報酬を求める場合は、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行う(家事事件手続法第126条)。

報酬付与の申立ては「後見が終了してから一定期間内」に行う必要がある。放置すると時効によって請求できなくなる場合があるため、後見終了後は速やかに申立てを検討する必要がある。

家族後見人の場合は「無報酬または少額の報酬」で後見をしているケースが多いが、後見中に特別な負担がかかった(遺産分割対応・複雑な財産管理・訴訟対応等)場合は、報酬付与の申立てを行うことで適切な報酬を受け取ることができる。

後見人が死亡した場合の手続き

後見人が被後見人より先に死亡した場合、後見が終了するわけではなく「後見人の欠缺(けんけつ)」として後見人のいない状態になる(民法第845条)。この状態を放置すると、被後見人の財産管理が誰もできない空白期間が生じる。

対応として「新後見人の選任申立て」が必要だ。申立て権者は「後見監督人・被後見人本人・親族等」だ(民法第845条)。

法定後見の場合は家庭裁判所が速やかに新後見人を選任するプロセスが定められているが、任意後見の場合は「後継受任者の指定が契約に含まれていないと対応が難しくなる」ことがある。任意後見契約を設計する際は「後継受任者」の指定を含めることが推奨される。

後見人が解任される場合

後見人に不正行為・著しい不行跡・後見の任務に適しない事由があった場合は、家庭裁判所が「後見人の解任」の審判をする(民法第846条)。

解任の原因として代表的なのは次の通りだ。

  • 財産の使い込み:後見人が被後見人の財産を無断で自分または家族のために使用した場合
  • 報告義務の懈怠(けたい):家庭裁判所への定期報告を繰り返し怠った場合
  • 利益相反行為:後見人の利益のために被後見人に不利な行為をした場合
  • 被後見人に対するネグレクト・虐待:施設への面会を放棄するなど、身上監護義務を著しく怠った場合

後見人が解任された場合は、家庭裁判所が新後見人を選任する。解任された後見人が被後見人に損害を与えた場合は、損害賠償責任が問われる。

後見終了の登記が残っているとどうなるか

被後見人が死亡して後見が終了しても、後見終了の登記申請を行わなければ「後見登記の閉鎖」がされない。この状態が続くと次のような問題が生じる。

  • 金融機関での相続手続きに支障:金融機関が「被後見人の死亡後も後見登記が生きている」という状態を確認した場合、相続手続きの書類として後見終了の登記証明を求めることがある
  • 不動産登記での混乱:被後見人名義の不動産の相続登記を申請する際に、後見登記の状態が問題になることがある
  • 後見人が誤って財産を動かすリスク:後見登記が残っていると、後見人が「まだ後見人として有効」と誤解して財産に関与するリスクがある(法律上は死亡時点で終了しているが、記録上の問題)

被後見人の死亡後は速やかに後見終了の登記申請を行うことで、これらの問題を防ぐことができる。申請は法務局の証明書交付窓口または東京法務局(郵送申請も可能)で行う。

「死後事務」の問題

被後見人が死亡した後の「葬儀・納骨・住居の明け渡し・電気・ガス・水道の解約」等は「死後事務」と呼ばれる。後見人の権限は被後見人の死亡によって終了するため、原則として死後事務は後見人の権限に含まれない。

民法第873条の2では「後見人が死後事務を行える範囲」として次のものが認められている。

  • 被後見人の医療費・入院費・施設費の支払い(相続財産から)
  • 死体の引き取り・火葬・埋葬に関する契約(相続人の意思に反する場合を除く)
  • 電気・ガス・水道等の公共サービスの解約

これらは「急迫の事情がある場合に限る」という条件付きであり、後見人が死後事務を幅広く行える権限が与えられているわけではない。相続人が明確に判明している場合は、相続人に連絡して死後事務の対応を相続人に委ねるのが原則だ。

この記事のまとめ

  • 成年後見は被後見人の死亡によって終了する(民法第653条第1号準用)
  • 死亡後は「家庭裁判所への連絡」「後見終了の登記申請」「管理計算」「相続人への財産引き渡し」の順で手続きを進める
  • 被後見人の死亡後は後見人の代理権が終了する。財産を動かす際は相続人との連絡が必要
  • 死後事務(葬儀・解約等)は後見人の権限に含まれない。急迫の事情がある場合に限って民法第873条の2の範囲で対応できる
  • 後見終了の登記申請(東京法務局・手数料1,400円)を怠ると後見登記が残り続け、後の相続手続きに支障が出る

出典:民法第10条(後見開始の審判の取り消し)・第653条(委任の終了事由)・第870条(後見の計算)・第873条の2(成年後見人による死後事務)、家事事件手続法第121条(後見終了の登記)・第126条(報酬付与の申立て)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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