飲食店の開業で公庫の融資を受けるには、数字の根拠と整合性が要る。創業計画書で何を示せばいいか。

飲食店の開業で公庫の融資を受けるには、数字の根拠と整合性が要る。創業計画書で何を示せばいいか。 飲食店の開業

飲食店の開業で公庫(日本政策金融公庫)の融資を申し込む場合、審査で見られるのは「事業の見通し」と「その根拠の整合性」です。売上の数字が高すぎたり、費用の根拠が曖昧だったりすると、修正を求められるか通らないことがあります。

公庫の「創業計画書」の書式では、9欄に「事業の見通し(月平均)」を記入します。以下では、この欄に何を書けばよいか、公庫の記入例と一次資料をもとに整理します。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター

公庫の創業計画書の「事業の見通し」で示すべきことは何か

公庫の「創業計画書」第9欄「事業の見通し(月平均)」では、①売上高、②売上原価(仕入)、③経費(人件費・家賃・支払利息・その他)、④利益(税引前)を記入します。

この欄を審査担当者が見る時に確認するのは、主に次の2点です。

  • 売上の根拠が現実的か:客単価×客数×営業日数として計算したとき、想定する席数・立地・回転数で達成できる水準か。
  • 費用の数字が整合しているか:業界の平均的な原価率・人件費率と比べて無理のない設定か。売上が多い割に人件費が少なすぎないか、逆に売上が少ない割に固定費が大きすぎないか。

公庫は融資を受けた事業者の返済を確認し続ける立場にあります。「計画が楽観的すぎる」と判断されると、融資を断られるか、融資額を減らされることがあります。

公庫の記入例(洋風居酒屋)が示す「軌道後」の数字

公庫が公表している「創業計画書 記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)」では、創業当初と軌道後の2つの月平均を記入する欄になっています。

公庫の創業計画書「記入例(洋風居酒屋)」の第9欄・月平均の数字
項目 創業当初(月平均) 軌道後(月平均)
売上高 248万円 322万円
売上原価 87万円(35.1%) 113万円(35.1%)
人件費 68万円(27.4%) 88万円(27.3%)
家賃 20万円(8.1%) 20万円(6.2%)
支払利息 1.5万円(0.6%) 1.4万円(0.4%)
その他経費 47万円(18.9%) 47万円(14.6%)
利益(税引前) 24.5万円(9.9%) 52.6万円(16.3%)

出典:日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」(2025年4月版)。括弧内の%は当方が計算した対売上高比率。

この記入例で注目すべきポイントがあります。原価率が創業当初・軌道後ともに35.1%と固定されているのに対し、人件費率は軌道後の売上増加に合わせてわずかに下がっています(27.4%→27.3%)。また、家賃と諸経費は固定費として変わらないため、売上が上がるほど利益率が改善しています。

この「売上が増えると固定費の比率が下がって利益率が上がる」という構造が、飲食店の収益改善の基本メカニズムです。

売上の根拠の書き方:客単価×客数×営業日数で計算する

公庫の審査で「売上の根拠」を求められた場合、最も説明しやすいのは「客単価×1日の客数×月の営業日数」という計算式です。

公庫の記入例(洋風居酒屋)の軌道後・月商322万円をこの式で逆算すると:

  • 322万円 ÷ 25日(月の営業日数) ÷ 2,500円(客単価)=約51.5人/日
  • 20席・2回転想定なら40人/日。3回転想定なら60人/日。「2〜3回転の中間(2.6回転)」という解釈になります。

「どの程度の客数を見込んでいるか」「なぜその回転数が見込めるか(立地・競合・告知)」を担当者に説明できる状態にしておくことが重要です。

月商322万円(軌道後)を達成するために必要な条件の試算(客単価・席数・回転数の組み合わせ)
客単価 席数 必要な回転数(月25日営業) 1日に必要な客数
2,500円 20席 約2.6回転 約51人
2,500円 30席 約1.7回転 約51人
3,000円 20席 約2.1回転 約43人
2,000円 20席 約3.2回転 約64人

試算は当方が計算。322万円 ÷ 25日 ÷ 客単価 ÷ 席数。回転数が業態・規模として現実的かどうかは立地・競合状況を加味して判断する。

費用の根拠の書き方:業界平均と照らし合わせる

原価率・人件費率は、公庫の「小企業の経営指標調査」で業態別の平均を確認できます。記入した数字が業界平均から大きく外れている場合は、その理由を説明できるようにしておきます。

  • 原価率が平均より高い場合:素材にこだわりがある(高品質路線)、仕入先が未確定で保守的に見積もっている、など。
  • 原価率が平均より低い場合:ドリンクの比率が高い、仕入先が確定していて安く仕入れられる、など。理由があれば説明できます。
  • 人件費率が低い場合:夫婦2人で運営する、家族が無償で手伝う、など。ただし「人件費ゼロ」という設定は事業継続性の観点で説明が難しくなることがあります。

「創業当初」と「軌道後」の2欄を使い分ける意味

公庫の創業計画書には「創業当初」と「軌道後」の2欄あります。この2欄に同じ数字を書くのは避けた方が無難です。

「創業当初」に楽観的な数字を書くと、「最初から計画通りに売上が立つのか」と問われます。一方、「軌道後」に控えめすぎる数字を書くと、借入金の返済余力があるか疑問が生じます。

公庫の記入例では、創業当初は軌道後の約77%(248万円/322万円)という水準で設定しています。開業後しばらくは売上の立ち上がりに時間がかかることを前提にした水準です。この「創業当初は軌道後の70〜80%程度」という考え方は、飲食業の実態として公庫も想定していると考えられます。

自己資金の水準:融資額との比率が審査に影響する

公庫の創業融資では、自己資金の水準が審査に影響します。公庫の創業融資では、自己資金の水準が審査において一つの判断材料となります。最新の要件については公庫のウェブサイトでご確認ください。

公庫の記入例では、自己資金260万円で融資1,000万円を前提にしています。融資額の26%が自己資金という比率です。自己資金が少ないと「この事業に自分のお金を入れる覚悟があるか」という観点で審査に影響します。

公庫の創業計画書・記入例の資金計画(設備資金+運転資金)
区分 費目 金額
設備資金 店舗内装・厨房設備・備品 970万円
運転資金 仕入・諸経費(立ち上がり分) 290万円
合計 1,260万円
自己資金 260万円
借入金(公庫) 1,000万円

出典:日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」(2025年4月版)。

収支計画書を先に試算してから、創業計画書に書き写す

公庫の創業計画書に記入する数字は、「書きながら考える」よりも「試算してから転記する」流れが効率的です。特に「事業の見通し」の欄は、費用の内訳をすべて積み上げて利益を計算してから記入します。

当方の「飲食店の開業 収支シミュレーター」では、客単価・席数・回転数・原価率・人件費率・家賃・諸経費などを入力すると、公庫の創業計画書「事業の見通し」の形式(創業当初・軌道後・計算の根拠文)で試算結果が出力されます。印刷してそのまま計画書に転記できる構成になっています。基本機能は無料です。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター

あわせて読みたい

出典

作成:fufumumu_design(ふふ)。確認日:2026年10月19日。試算は当方が行いました。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
飲食店の開業
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました