飲食店の売上の計画は、「客単価×席数×回転数×営業日数」の掛け算で組み立てます。日本政策金融公庫の「創業の手引+(飲食業編)」が示している算式で、創業計画書の記入例(洋風居酒屋)もこの式で、昼と夜、平日と週末を分けて売上を出しています。記入例の数字をそのまま使うと、創業当初の月商は248万円、1日の客数は平均で約37人、平均客単価は約2,570円、1席あたりの月商は約10万円です。
この記事では、公庫の手引と記入例の数字を使って計算の手順をたどり、回転数が0.1変わると月商がいくら変わるか、席が1つ増えるといくら変わるかまで計算します。数字はすべて公庫の公表資料から取り、計算は当方が行いました。
- 売上の算式は、客単価×席数×回転数×営業日数の4つの掛け算
- 回転数は「1席が1日に何回使われるか」の平均で、満席になった回数ではない
- 公庫の記入例は、昼・平日の夜・週末の夜の3つに分けて248万円を出している
- 夜の回転数が0.1変わると、記入例の店では月商が約29万円変わる
- 昼を伸ばすか、夜を伸ばすか。同じ「0.2回転」でも、月商の差は5倍
- 手引の例と記入例を並べると、店の形の違いが数字に出る
- 軌道に乗った後は創業当初の1.3倍、逆算すると創業当初は約77%
- 回転数と客単価の根拠は、勤務していた店の実績が一番強い
- 売上は低めに置く。開業者の約4割は、開業前の予想月商に届いていない
- 自分の店の売上を組み立てる手順
売上の算式は、客単価×席数×回転数×営業日数の4つの掛け算
公庫の「創業の手引+ 新たに飲食業を始めるみなさまへ」(平成30年4月)は、売上予測の算式を「客単価×席数×回転数」とし、次の例を載せています。客単価が昼800円・夜3,500円、30席、回転数が昼2回転・夜0.6回転、25日稼働です。
| 時間帯 | 計算 | 1日の売上 |
|---|---|---|
| 昼 | 800円×30席×2回転 | 48,000円 |
| 夜 | 3,500円×30席×0.6回転 | 63,000円 |
| 1日の合計 | 111,000円 | |
| 1か月(25日稼働) | 111,000円×25日 | 2,775,000円(手引の表記は約277万円) |
この例で分かるのは、昼は客単価が低くても回転数が高いので1日48,000円、夜は回転数が0.6でも客単価が高いので63,000円と、昼と夜で売上の作り方が違うことです。昼と夜を分けて計算するのは、このためです。
出典:日本政策金融公庫「創業の手引+ 新たに飲食業を始めるみなさまへ」2ページ(平成30年4月)。手引は「277万円」と表記しており、掛け算の結果は2,775,000円です。
回転数は「1席が1日に何回使われるか」の平均で、満席になった回数ではない
回転数は、満席が何回まわったかではなく、1日のうちに1つの席が平均で何回使われたかです。25席の店で昼の回転数が0.8なら、昼の客数は25席×0.8回転=20人です。満席(25人)にならない日も、空席のまま終わる席も含めた平均なので、回転数は1を下回ることのほうが普通です。
公庫の記入例(洋風居酒屋)は、夜の回転数を月曜から木曜は0.6回転、金曜と土曜は0.9回転としています。25席なら、平日の夜は15人、週末の夜は22.5人です。立地によって昼と夜、平日と週末の客数は大きく違うため、記入例のように分けて置くと、計画の根拠を説明しやすくなります。
公庫の記入例は、昼・平日の夜・週末の夜の3つに分けて248万円を出している
創業計画書の記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)の「事業の見通し」欄には、売上高の計算根拠が次のように書かれています。日曜定休で、月の営業日数は26日です。
| 区分 | 計算 | 月の売上 | 記入例の表記 |
|---|---|---|---|
| 昼(月〜土) | 900円×25席×0.8回転×26日 | 468,000円 | 46万円 |
| 夜(月〜木) | 4,500円×25席×0.6回転×18日 | 1,215,000円 | 121万円 |
| 夜(金・土) | 4,500円×25席×0.9回転×8日 | 810,000円 | 81万円 |
| 合計 | 2,493,000円 | 248万円 |
記入例の表記は万円単位で切り捨てているため、合計は248万円です。この売上から、月の客数と平均客単価、1席あたりの月商を計算すると次のようになります。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 昼の客数 | 25席×0.8回転×26日 | 520人/月 |
| 夜の客数(月〜木) | 25席×0.6回転×18日 | 270人/月 |
| 夜の客数(金・土) | 25席×0.9回転×8日 | 180人/月 |
| 月の客数の合計 | 970人/月(1日あたり約37人) | |
| 平均客単価 | 2,493,000円÷970人 | 約2,570円 |
| 1席あたりの月商 | 2,493,000円÷25席 | 約99,720円 |
| 1日あたりの売上 | 2,493,000円÷26日 | 約95,900円 |
平均客単価が約2,570円になるのは、客単価900円の昼が客数の半分以上(970人中520人)を占めるためです。売上の金額では夜が約81%(2,025,000円÷2,493,000円)を占めています。客数で見るか売上で見るかで、店の姿は違って見えます。
出典:日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」(2025年4月版)「9 事業の見通し(月平均)」欄。客数・平均客単価・1席あたりの月商は、記入例の数字から当方が計算したものです。
夜の回転数が0.1変わると、記入例の店では月商が約29万円変わる
算式が掛け算なので、どの数字がどれだけ売上を動かすかも計算できます。記入例の店(25席・26日営業)で、1つの数字だけを動かした場合の月商の変化は次のとおりです。
| 動かす数字 | 計算 | 月商の変化 |
|---|---|---|
| 夜の回転数が0.1増える(減る) | 4,500円×25席×0.1回転×26日 | 約29.3万円 |
| 昼の回転数が0.1増える(減る) | 900円×25席×0.1回転×26日 | 約5.9万円 |
| 席が1つ増える(昼0.8回転・夜0.7回転のまま) | (900円×0.8+4,500円×0.7)×26日 | 約10.1万円 |
| 営業日が1日増える(減る) | 2,493,000円÷26日 | 約9.6万円 |
| 夜の客単価が100円上がる(下がる) | 100円×25席×約0.69回転×26日 | 約4.5万円 |
夜の回転数0.1は、25席の店なら1日あたり2.5人の客数の差です。それだけで月商が約29万円動きます。この店の計画では、夜の客数の見込みが売上を最も大きく左右することが分かります。逆に、昼の回転数は0.1動いても約6万円で、売上への影響は夜の5分の1です。自分の店の計画でも、同じ計算をしておくと「どの数字を一番慎重に見積もるべきか」がはっきりします。
夜の回転数の月平均は、(0.6回転×18日+0.9回転×8日)÷26日=約0.69回転です。平日と週末を分けずに1つの回転数で計算するなら、0.7回転と置くと記入例とほぼ同じ売上になります。
昼を伸ばすか、夜を伸ばすか。同じ「0.2回転」でも、月商の差は5倍
売上を増やす打ち手を考えるときも、この算式が使えます。記入例の店で、昼の回転数を0.8から1.0に上げた場合と、夜の平日(月〜木)の回転数を0.6から週末と同じ0.9に上げた場合を比べます。
| 打ち手 | 計算 | 月商の増加 |
|---|---|---|
| 昼の回転数を0.8→1.0に上げる(1日5人増) | 900円×25席×0.2回転×26日 | 117,000円 |
| 夜の平日(月〜木)を0.6→0.9回転に上げる(1日7.5人増) | 4,500円×25席×0.3回転×18日 | 607,500円 |
| 昼の客単価を900円→1,000円に上げる | 100円×25席×0.8回転×26日 | 52,000円 |
| 定休日を増やして営業日を26日→22日にする | 2,493,000円×22日÷26日 | 約383,500円の減少(月商約210.9万円に) |
昼のランチを満席1回転まで伸ばしても月商は約12万円しか増えませんが、平日の夜を週末並みにすると約61万円増えます。客単価の差が5倍あるからです。この店の計画では、努力の向け先は平日の夜の集客だと数字が示しています。逆に、週休2日にして営業日を4日減らすと、月商は約38万円減ります。固定費(家賃・正社員の給与)は変わらないので、営業日を減らす判断は、この減少額と人件費の節約を比べて決めることになります。
どの打ち手が効くかは、店の客単価の構造で変わります。ランチ中心の食堂なら昼の回転数が売上を決めますし、夜だけの店なら客単価と平日の客数です。自分の店の数字で同じ表を作ると、「何を一番がんばるべきか」が決まります。
手引の例と記入例を並べると、店の形の違いが数字に出る
公庫の手引の例(30席・昼800円2回転・夜3,500円0.6回転・25日)と、記入例(25席・昼900円0.8回転・夜4,500円約0.7回転・26日)を、同じ指標で並べると次のようになります。
| 指標 | 手引の例(30席) | 記入例(25席) |
|---|---|---|
| 月商 | 2,775,000円 | 2,493,000円 |
| 1日の客数 | 78人(昼60人・夜18人) | 約37人(昼20人・夜約17人) |
| 月の客数 | 1,950人 | 970人 |
| 平均客単価 | 約1,423円 | 約2,570円 |
| 1席あたりの月商 | 92,500円 | 約99,720円 |
| 売上に占める夜の割合 | 約57% | 約81% |
手引の例は昼2回転のランチが客数の8割近くを占める「昼の店」、記入例は売上の8割が夜の「夜の店」です。1席あたりの月商は9〜10万円でほぼ同じですが、客数は2倍違います。客数が2倍なら、仕込みの量、ホールの人手、食器の数、回転を速くする席の配置など、店の作りも変わります。売上の計画は、金額だけでなく「1日に何人をさばく店か」まで出しておくと、人件費や厨房の設備の計画と結びつきます。
軌道に乗った後は創業当初の1.3倍、逆算すると創業当初は約77%
記入例は、「1年後又は軌道に乗った後」の売上を「創業当初の1.3倍(勤務時の経験から)」として322万円と置いています。原価率は当初と同じ35%、人件費は従業員1人増で18万円増、その他の諸経費は10万円増です。
この1.3倍を逆から見ると、創業当初の売上は軌道に乗った後の約77%(1÷1.3)です。計画を立てるときは、まず「軌道に乗った後にどれだけ売れる店か」を客単価×席数×回転数で置き、開業直後はその77%前後から始まると考えると、記入例と同じ組み立てになります。
77%という数字は記入例の1つの置き方で、立地や業態、宣伝の仕方で大きく変わります。開業前からSNSで知られている店と、看板だけで始める店では、立ち上がりの速さは違います。自分の店で何%から始まり、何か月で計画に届くかは、根拠と一緒に置く必要があります。
回転数と客単価の根拠は、勤務していた店の実績が一番強い
算式の4つの数字のうち、席数は物件の図面と座席の配置で決まり、営業日数は定休日で決まります。見積もりが難しいのは、客単価と回転数です。公庫の記入例は、原価率と1.3倍の根拠を「勤務時の経験から」と書いています。回転数と客単価も、同じ出どころで説明するのが最も強い根拠です。
公庫の手引は、事業経験について「勤務時代に任されていたこと(担当業務、役職等)や実績をきちんと答えられるか」を確認項目に挙げ、「普段から、勤務時代に取り組んだことを記録(記憶)し、自らのセールスポイントを客観的に説明できるようにしておきましょう」としています。勤務先の店の席数と1日の客数、平日と週末の差、ランチとディナーの客単価を覚えておけば、自分の店の回転数と客単価を「前の店では25席で平日の夜は15人前後だった」のように、実績から置けます。
勤務経験のない業態で開業する場合は、出店予定地の周辺の店を、時間帯と曜日を変えて見て回り、席数と入り具合を数えるのが現実的な方法です。手引は立地について「出店予定地は新規客(顧客ターゲット層)を獲得しやすい場所にあるか」「出店予定地近くの住民の特性やライフスタイルを把握しているか」を問いかけています。いずれの場合も、根拠を「式と数字」の形で書けることが大切で、「このくらい入るはず」という金額だけの売上計画は、読み手が確かめようがありません。
テイクアウトやデリバリーの売上は、席数×回転数の式に乗らないので、別に月の金額で置きます。店内の売上と分けておくと、原価率や包材の費用の違いも整理しやすくなります。
売上は低めに置く。開業者の約4割は、開業前の予想月商に届いていない
公庫の手引は、事業の見通しについて「売上高は低め、経費は多めといった具合に試算し、それでも経営が成り立つような収支計画であれば万全」としています。「予想売上高は過大になっていないか」「予想経費は過小になっていないか」も、確認の項目に挙げられています。
低めに置く理由は、数字で裏づけられています。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(公庫の融資先・全業種・回答2,165社)では、調査時点の月商を開業前に予想していた月商で割った「予想月商達成率」が100%以上の開業者は58.7%でした。つまり約4割は、開業前の予想に届いていません。50%未満だった開業者も10.5%います。
| 達成率 | 割合 |
|---|---|
| 50%未満 | 10.5% |
| 50〜75%未満 | 16.6% |
| 75〜100%未満 | 14.2% |
| 100〜125%未満 | 24.5% |
| 125%以上 | 34.2% |
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」12ページ 図-20(調査時点2025年8月・n=2,024)。飲食店だけの数字ではなく、全業種の結果です。
この分布は全業種のもので、飲食店だけを取り出した数字ではありません。それでも、予想どおりにいかない開業者が4割いるという事実は、売上の計画を「低めに置く」ことの意味を示しています。
自分の店の売上を組み立てる手順
記入例の組み立てを、自分の店に当てはめる手順は次のとおりです。
- 席数と、月の営業日数を決める(週1日定休なら26日前後、週2日なら22日前後)
- 昼と夜に分けて、客単価を置く(メニューの価格帯から、1人が平均していくら使うか)
- 昼と夜に分けて、回転数を置く(1席が1日に何回使われるかの平均。平日と週末で差が大きければ分ける)
- テイクアウトやデリバリーがあれば、別に月の売上を置く
- 掛け算して「軌道に乗った後」の月商を出す
- 開業直後はその何%から始まり、何か月で計画に届くかを置く(記入例は1÷1.3=約77%)
- 回転数を0.1、席数を1、営業日を1日動かして、どの数字が売上を一番動かすかを確かめる
このサイトで公開している「飲食店の開業 収支シミュレーター」は、この手順をそのまま入力欄にしたものです。客単価・席数・回転数・営業日数を入れると、計画の月商と1日の客数、平均客単価、1席あたりの月商が出て、公庫の創業計画書「事業の見通し」の形と計算の根拠の文章も表示します。初期値は記入例の「軌道に乗った後」の水準に合わせた例で、基本の機能は無料で使えます。
あわせて読みたい
- 創業計画書の「事業の見通し」、飲食店は4段で書く。公庫の記入例の数字と、計算の根拠の書き方。
- FL比率60%は公的な基準ではない。全国の飲食店の平均は、原価率35%+人件費率33%=68%。
- 飲食店の開業資金はいくら必要か。公庫の記入例1,260万円を、設備資金と運転資金に分けて読む。
- 飲食店の開業後、資金が減り続ける月は何か月あるか。立ち上がり77%の前提で、36か月を計算する。
出典
- 日本政策金融公庫「創業の手引+ 新たに飲食業を始めるみなさまへ」(平成30年4月):売上予測の算式と例(2ページ)、「売上高は低め、経費は多め」(10ページ)
- 日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」(2025年4月版):事業の見通しの計算根拠
- 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日):予想月商達成率(12ページ)
作成:fufumumu_design(ふふ)。確認日:2026年10月7日。記事中の客数・単価・感度の計算は、公表資料の数字をもとに当方が行ったものです。公庫の資料は、同公庫が作成したもので、この記事とツールは同公庫とは関係がありません。


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