飲食店が閉店する主な原因は「売上の計画未達」「原価・人件費の管理不足」「開業前の資金不足」の3つに集約されます。公庫の2024年度調査では飲食店の廃業率は比較的高い業種に位置づけられており、開業から3年以内の廃業が多い傾向があります。失敗の原因の多くは開業前の段階で「月商が損益分岐点を安定して超えられるかどうかの検証が不十分だった」ことに起因します。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター
飲食店の閉店・廃業の主な原因
飲食店の閉店・廃業につながる主な原因を整理します。
| 原因 | 具体的な内容 | 開業計画でどう対処するか |
|---|---|---|
| 売上の計画未達 | 想定した客数・客単価に届かない。競合の存在・立地の集客力を過大評価 | 損益分岐点を先に計算し、達成に必要な客数・客単価を逆算してから物件を選ぶ |
| 原価・経費の管理不足 | 廃棄ロス・仕入れコストの増加に気づかず、原価率が上昇し続ける | 月次の原価率・FL比率をPOSレジや台帳で管理する習慣を開業前から計画する |
| 開業資金・運転資金の不足 | 開業後に予想外の出費が重なり、損益分岐点に到達する前に資金が尽きる | 立ち上がり期(6〜12か月)の資金繰りを月次で試算して余裕をみる |
| 人材の確保・育成の問題 | オープン直後にスタッフが辞め、サービス品質が落ちて客離れにつながる | 採用と研修の計画を開業前から立て、開業後の早期離職リスクを見込む |
| コンセプトの不明確さ | 「誰に何を提供するか」が曖昧で、ターゲット客層が来ない立地・価格帯になる | ターゲット客層・競合の価格帯・立地の客層が一致しているかを開業前に確認する |
公庫の調査から見る飲食店の経営の厳しさ
日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」では、業種別の廃業率・経営の問題点に関するデータが公開されています。
同調査の関連データ(参考):
- 開業から3年後の廃業率は全業種で約3〜4割(業種・調査時点によって異なる)
- 開業後に「資金繰りが苦しかった」と回答した飲食業の事業者は過半数に達する年度が多い
- 開業時の最大の問題として「顧客の開拓」を挙げる割合が高い
※上記は公庫の調査をもとにした概括的な傾向です。最新の数値は公庫のウェブサイトで確認してください(日本政策金融公庫「新規開業実態調査」)。
「売上が計画を下回る」がどれだけ損益に影響するか
月商の計画達成率別の月次損益を試算します(公庫の記入例・洋風居酒屋の前提:固定費161.7万円・限界利益率65%・損益分岐点249万円)。
| 月商の達成率 | 月商 | 限界利益 | 月次損益 | 年間の累積損益(12か月) |
|---|---|---|---|---|
| 100%(計画通り) | 322万円 | 209.3万円 | +47.6万円 | +571.2万円 |
| 90% | 289.8万円 | 188.4万円 | +26.7万円 | +320.4万円 |
| 80%(損益分岐点前後) | 257.6万円 | 167.4万円 | +5.7万円 | +68.4万円 |
| 77%(公庫の立ち上がり期の想定) | 248万円 | 161.2万円 | −0.5万円 | −6.0万円(わずかな赤字) |
| 70% | 225.4万円 | 146.5万円 | −15.2万円 | −182.4万円 |
| 60% | 193.2万円 | 125.6万円 | −36.1万円 | −433.2万円 |
月商が計画の77%(公庫の記入例の「立ち上がり期」の想定)で、月次損益はほぼゼロです。これに生活費・税金が重なると、実質的な資金は毎月減り続けます。月商が計画の70%まで落ちると月に15万円超の赤字が続き、開業資金290万円(運転資金)は20か月で枯渇します。
開業失敗のリスクを減らす3つの確認ポイント
開業前に確認しておくことで失敗リスクを下げられる3つのポイントを整理します。
第1は「損益分岐点を達成するために必要な客数を逆算し、現実的かどうかを確認する」ことです。公庫の記入例の損益分岐点249万円は、客単価1,981円なら月間1,257人(1日48人・26日)が必要です。物件周辺のランチ・ディナーの通行量・競合の込み具合と照らし合わせて、達成可能な客数かどうかを開業前に検証します。
第2は「立ち上がり期6〜12か月の資金繰りを月次で試算する」ことです。開業直後は客数が計画を下回ることが多く、黒字化まで数か月かかります。公庫への融資申請書類では「月次の資金繰り表」を作成することが求められますが、ここで立ち上がり期の赤字の累積額を確認しておきます。
第3は「開業後に改善しやすいコスト構造を選ぶ」ことです。固定費が高いと売上が計画を下回ったときの損失が大きくなります。家賃・設備費は開業後に下げにくいコストです。一方、人件費は一部を変動費的(アルバイトのシフト調整)に使うことができます。開業時の固定費の水準を低く抑えることで、立ち上がり期の赤字を小さくできます。
「想定外の出費」に備えた予備資金の目安
開業後に発生しやすい「想定外の出費」をあらかじめ開業資金に含めておくことで、早期閉店のリスクを下げられます。
| 想定外の出費の種類 | 目安の金額 | 発生するタイミング |
|---|---|---|
| 厨房設備の故障・修理 | 1〜30万円(機器による) | 開業後1〜2年で発生しやすい |
| 追加集客費(開業直後の広告費) | 5〜20万円 | 開業後1〜3か月 |
| 初月のキャッシュレス入金遅れ(翌月払い) | 月商の30〜50%(翌月まで手元に来ない) | 開業1か月目 |
| スタッフの早期離職・追加採用費 | 1〜5万円/名 | 開業後1〜6か月 |
上記の想定外出費に対応するため、開業資金には「予備費(運転資金3か月分程度)」を組み込んでおくことが一般的に推奨されます。
月次の資金繰りシミュレーションは飲食店の開業 収支シミュレーターで確認できます。開業後の資金の推移については開業後の資金繰りで詳しく説明しています。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター
本記事の数値は公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)をもとに計算しています。廃業率の傾向は公庫「新規開業実態調査」をもとにしており、最新の数値は公庫の公式ウェブサイトで確認してください。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年11月確認。


コメント