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訪問介護は「1回ごとの出来高払い」、定期巡回・随時対応型は「月額の定額払い」です。この報酬体系の違いが、必要な体制・対象となる利用者・収益の安定性まで、ほぼすべての判断に影響します。先に結論を言います。ヘルパーを揃えて段階的に稼働を上げる形で始めたいなら訪問介護が現実的です。24時間365日の対応体制を最初から構築できる見通しがあり、特定の市区町村に密着して重度・独居の利用者を支えたいなら、定期巡回・随時対応型も選択肢になります。
この記事では、2つのサービスの仕組みの違いを整理したうえで、開業を考える方がどちらを選ぶかの判断材料をまとめます。
訪問介護は1回ごとの出来高払いで都道府県が指定するサービス
訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うサービスです。指定居宅サービスのひとつで、都道府県知事が指定・監督します。根拠法令は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)です。
報酬の仕組みはシンプルで、提供した時間区分とサービス種別に応じて単位数が決まります。訪問した回数・時間に比例して収入が積み上がる出来高型です。
訪問介護の人員基準
- 訪問介護員:常勤換算2.5人以上
- サービス提供責任者:利用者40人に対して1人(常勤・訪問介護員との兼務可)
- 管理者:1人(常勤・他の職務との兼務可)
法人格が必要で、個人事業主のままでは指定を受けられません。
訪問介護の基本報酬(令和6年改定)
令和6年度改定(厚生労働省告示第86号)の主な基本報酬は以下のとおりです。
| サービス種別 | 時間区分 | 単位数 |
|---|---|---|
| 身体介護 | 30分未満 | 163単位 |
| 身体介護 | 30分以上1時間未満 | 387単位 |
| 身体介護 | 1時間以上1時間30分未満 | 564単位 |
| 生活援助 | 20分以上45分未満 | 183単位 |
| 生活援助 | 45分以上 | 220単位 |
地域区分単価は10.00〜11.40円(1級地から7級地・その他に分類)です(厚生労働省告示・令和6年度適用)。
訪問介護の全国平均実績
令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算)によると、訪問介護事業所の全国平均の実績は以下のとおりです。
- 月平均収入:約316万円
- 延べ訪問回数:月853.3回
- 収支差率:9.6%
この数字はあくまで全国平均です。地域・稼働率・職員体制によって大きく変わります。開業初期は稼働が低い期間が続くため、収支が安定するまでの運転資金の見通しを立てておくことが重要です。
定期巡回・随時対応型は月額定額制の24時間対応サービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、2012年(平成24年)4月に創設されたサービスです。訪問介護と訪問看護を一体的・継続的に提供できる仕組みとして設計されています。
地域密着型サービスのひとつであり、指定・監督するのは市区町村です(都道府県ではありません)。サービスを提供できる利用者は、その市区町村に住む要介護者に限られます。
サービスの2つの柱
定期巡回・随時対応型は、以下の2種類の訪問を組み合わせて提供します。
- 定期巡回訪問:1日に複数回、計画的に利用者宅を訪問する
- 随時訪問:利用者や家族からの通報・連絡を受けて、必要に応じて対応する
24時間365日の対応が可能な体制が前提です。夜間も含めて随時呼び出しに対応できる仕組みを整えることが求められます。
一体型と連携型の2種類がある
事業所の形態には「一体型」と「連携型」があります。
- 一体型:訪問介護と訪問看護の両方を1つの事業所が自社で提供する。看護師等の配置が必要になる
- 連携型:訪問介護は自社が行い、訪問看護は別の訪問看護ステーションと連携協定を結んで提供する。自社に看護師等を配置しなくても開業できる
報酬は要介護度に応じた月額定額制
訪問介護が1回ごとの出来高払いであるのに対して、定期巡回・随時対応型は要介護度に応じた月額の定額報酬です。1か月間に何回訪問しても、原則として報酬は定額の範囲内になります。
訪問回数を増やしても収入は増えませんが、訪問スケジュールを効率的に組むことで1人当たりのコストを下げられる構造です。定額の中で収益を出せるかどうかは、訪問スケジュールの組み方と稼働率の管理にかかっています。
2つのサービスの主な違いを比較する
| 比較項目 | 訪問介護 | 定期巡回・随時対応型 |
|---|---|---|
| 指定・監督 | 都道府県 | 市区町村(地域密着型) |
| 報酬体系 | 出来高払い(1回ごと) | 月額定額払い(要介護度に応じた定額) |
| 対応時間帯 | サービス提供時間内(主に日中) | 24時間365日の体制が前提 |
| サービス内容 | 身体介護・生活援助 | 介護+看護の一体提供(一体型)または連携提供(連携型) |
| 開業エリア | 都道府県単位(広域展開可) | 市区町村内(他市区町村の利用者には提供不可) |
| 利用対象 | 要介護1〜5 | 要介護1〜5 |
| 想定利用者像 | 週数回の支援が必要な方 | 1日複数回・緊急対応が必要な重度・独居の方 |
| 体制の厚み | 時間内対応ができれば足りる | 夜間・緊急呼び出しへの常時対応体制が必要 |
| 法人格 | 必須(個人不可) | 必須(個人不可) |
訪問介護での開業が向いているケース
以下のような状況であれば、訪問介護を選ぶのが現実的です。
確保できるヘルパーが常勤換算2.5人以上の見通しがある
訪問介護の人員基準は常勤換算2.5人以上です。サービス提供責任者を含めて、この水準を満たせる見通しがあれば開業の第一条件をクリアできます。
人材の確保が比較的しやすい地域、または知人・元同僚のヘルパーを招集できる環境があれば、開業初期の人員要件を満たしやすくなります。
夜間の随時対応体制を最初から整えるのが難しい
定期巡回・随時対応型は24時間365日の対応体制が前提です。深夜・早朝に随時呼び出しに対応できる人員を最初から確保するのは、スタッフ数が少ない開業初期には難しい場面があります。
まず日中のサービス提供から始めて体制を整えたいなら、訪問介護での開業が理にかなっています。
稼働を段階的に増やして収益を積み上げたい
訪問介護は出来高払いのため、利用者が増えれば増えるほど収入が増えます。開業初月は稼働が低くても、利用者獲得のペースに合わせて収益が積み上がっていく構造です。
ケアマネジャーとの関係構築や口コミで利用者が増えるにしたがって、収入も比例して伸びていきます。
複数の市区町村をまたいで展開したい
訪問介護の指定は都道府県単位です。1つの指定で複数の市区町村にわたるエリアでサービスを提供できます。将来的に事業所を増やしたい・複数エリアで展開したいと考えている場合は、都道府県指定の訪問介護のほうが動きやすい場面があります。
定期巡回・随時対応型での開業が向いているケース
以下のような状況であれば、定期巡回・随時対応型が選択肢になります。
特定の市区町村に密着してサービスを展開する計画がある
定期巡回・随時対応型は市区町村内に限定されたサービスです。しかし、エリアを絞り込むことで移動距離が短くなり、1日の訪問件数を増やしやすくなります。効率的な巡回ルートを組める範囲に利用者を集めることが、収益を出す上での基本戦略になります。
重度の要介護者・独居の高齢者が多い地域に住所がある
定期巡回・随時対応型の主な利用対象は、1日複数回の訪問や夜間の緊急対応が必要な重度・独居の方です。こうした利用者が多い地域では、通常の訪問介護では対応しきれないニーズが存在します。そのニーズに応えるサービスとして、定期巡回は明確な役割を持ちます。
訪問看護ステーションと連携できる目処がある(連携型)
連携型で開業する場合は、近隣の訪問看護ステーションと連携協定を結ぶことが前提になります。すでに訪問看護ステーションとのつながりがある、または連携の見通しが立っているなら、連携型での開業が一体型よりも現実的な選択になります。看護師等を自社で抱えなくても開業できるため、初期の人件費負担を抑えられます。
開業コストと難易度の違い
訪問介護の開業費用の目安
訪問介護は設備要件が比較的シンプルです。事務所・相談スペース・手洗い設備の確保が基本で、大規模な設備投資は必要ありません。
主な費用の内訳は以下のとおりです。
- 法人設立費用:合同会社で約6〜7万円、株式会社で約20〜25万円
- 事務所の初期費用(敷金・礼金・内装):10〜50万円程度(地域・物件による)
- パソコン・プリンター・ファクシミリ等の備品:5〜15万円程度
- 介護記録・請求システムの初期費用(クラウド型であれば月額のみのケースが多い)
- 採用・研修費用
訪問介護の介護報酬は、国民健康保険団体連合会(国保連)を通じてサービス提供月の翌々月に支払われます。6月に提供したサービスの報酬は8月の入金です。この約2か月のタイムラグを埋める運転資金が必要になります。
定期巡回・随時対応型の開業費用の特徴
定期巡回・随時対応型は訪問介護に比べて体制が手厚い分、開業時のコストも高くなる傾向があります。
- 24時間の随時対応を支えるオペレーション機器(随時対応通信機器等)の導入が必要
- 夜間・深夜帯のスタッフ確保(夜勤体制・夜間専従者の確保・夜勤手当)
- 一体型の場合は看護師等の採用・人件費が加わる
24時間365日体制を作るためには、昼夜を問わず稼働できる人員が必要です。少人数でスタートせざるを得ない開業初期にこの体制を維持するのは、経営上の負荷が大きくなる可能性があります。
指定申請の手続きの違い
訪問介護の指定申請先は都道府県です。都道府県内であれば、1つの指定で複数の市区町村にわたるエリアでサービスを提供できます。
定期巡回・随時対応型の申請先は市区町村です。複数の市区町村でサービスを提供したい場合は、それぞれの市区町村に指定申請が必要になります。申請のたびに審査・書類準備が発生するため、展開のスピードは遅くなります。
どちらを選ぶかは体制の作り方と地域ニーズで判断する
訪問介護と定期巡回・随時対応型は、どちらも利用者の自宅に訪問して介護を支えるサービスですが、設計の前提がまったく異なります。
訪問介護は「訪問した分だけ収入になる出来高型」で、利用者を獲得しながら段階的に稼働を上げていく経営がしやすい仕組みです。指定申請の管轄が都道府県のため、提供エリアを広く設定できます。開業初期の体制づくりは比較的シンプルで、常勤換算2.5人以上のヘルパーが集まれば最低要件を満たせます。
定期巡回・随時対応型は「月額定額型」で、1日複数回・夜間も含めて密度高く関わるサービスです。重度・独居の利用者に手厚く対応できる強みがある一方、24時間の体制維持が最初から求められます。特定の市区町村に集中して、限られたエリアで効率的に巡回できる体制を作れるかどうかが、収益化のカギになります。
どちらが向いているかを判断するには、以下の点を確認することから始めてみてください。
- 確保できるヘルパーの人数と勤務時間帯(夜間対応ができる人材がいるか)
- 開業する市区町村・エリアの利用者ニーズ(要介護度が重い方・独居の方の多さ)
- 訪問看護ステーションとの連携の可能性(定期巡回・連携型を検討する場合)
- 開業から収支が安定するまでの運転資金の見通し(介護報酬は2か月遅れで入金)
- 複数の市区町村にわたるエリア展開を将来的に考えているか
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