20年間、営業組織のマネジメントをしてきました。
新人の採用から育成、管理職の研修、離職防止の仕組みづくりまで、組織の「人にまつわる問題」はほとんど経験してきたつもりです。
その中でずっと感じてきたことがあります。採用コストが膨らんでいく組織には、業界を問わず共通した「見落とし」があるということです。
営業会社でも、コールセンターでも、派遣スタッフを大量に抱える現場でも、採用がうまくいかない組織は同じパターンを繰り返します。
お金をかけて求人を出す。応募が来る。採用する。しばらくして辞める。また求人を出す。このループから抜け出せないまま、採用費だけが積み上がっていきます。
介護業界も、構造はまったく同じです。人手不足という追い打ちがある分、むしろ状況はより深刻かもしれません。
ひとつだけ先に結論を言っておきます。
採用コストが下がらない根本原因は、「給与が低いこと」でも「業界のイメージが悪いこと」でもありません。
施設の魅力が、求職者に届いていないことです。
この記事では、採用に悩む介護施設の方に向けて、採用コストが下がらない本当の理由と、今日から取り組める具体的な解決策をお伝えします。
第1章:採用1名にいくらかかっているか、計算してみました
まず、現実の数字を直視するところから始めたいと思います。
人材紹介会社を使うと、採用1名あたりの紹介手数料は年収の20〜25%が相場です。
介護職の平均年収は300〜400万円程度とされており(厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査)、1名あたり60〜120万円の費用がかかります。大手の紹介会社では120万円を超えることもあります。
求人媒体への掲載料は月額5〜30万円程度。年間で換算すると60〜360万円になります。掲載を止めると応募も止まるため、継続的な費用が発生し続けます。
| 採用方法 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 人材紹介会社 | 1名あたり60〜120万円 | 成果報酬型。採用が決まったときに費用発生 |
| 求人媒体(Indeed等) | 年間30〜100万円 | 掲載中は応募が来るが、止めると止まる |
| ハローワーク | 無料 | 掲載可能な情報量に限界あり |
| 採用LP | 制作費10〜15万円(一度だけ) | 一度作れば何年も使える採用ツールになる |
人材紹介で年間3名採用すれば、それだけで180〜360万円が消えます。求人媒体の掲載費と合わせると、年間500万円近くになる施設も珍しくありません。
ここで思い出していただきたいのが、営業組織での経験です。採用に費用をかけ続けていた時期、最初に着手したのはコストの「見える化」でした。何にいくら払っているかを整理しただけで、「これは構造から変えないといけない」という危機感が生まれました。介護施設でも、まず同じことをしていただきたいと思います。採用コストを正直に計算することが、すべての出発点になります。
第2章:求職者が応募しないのは、給与のせいだけではなかった
採用コストが高くなる根本には、「応募が来ない・来ても定着しない」という問題があります。では、介護職の求職者はなぜ応募をためらうのでしょうか。
公益財団法人介護労働安定センターの介護労働実態調査によると、介護求人への応募をためらう理由の上位はこうなっています。
1位が「給与が低い」で56.4%
2位が「休日が少ない」で45.3%
3位が「福利厚生が少ない」で35.2%
4位が「勤務地が希望と異なる」で33.7%
そして5位が「仕事内容がわかりにくい」で31.7%です。
こうした状況で、まず給与面の見直しを検討する施設が多いのも無理はありません。しかし冷静に考えてみてください。
1位〜4位の「給与・休日・福利厚生・勤務地」は、施設側がすぐに変えられないことがほとんどです。経営の根幹に関わる要素であり、現場の判断だけでは動かせません。
一方で、5位の「仕事内容がわかりにくい」はどうでしょうか。これは情報の出し方を変えるだけで解決できる問題です。施設の条件を変える必要はなく、「何をどう伝えるか」を変えれば良いのです。
これは営業でも同じことが言えます。「うちの商品は値段が高いから売れない」と思い込んでいる営業パーソンが、「価値の伝え方」を変えただけで成約率が改善するケースを、20年で何度も見てきました。採用もまったく同じ構造です。問題は「条件」ではなく、「伝え方」にあります。
第3章:求人票には書けないことが、介護職には一番大切だった
求人票に書けることには、構造的な限界があります。文字数制限、フォーマットの制限、そして何より「数字と条件しか書けない」という根本的な問題です。
介護職を選ぶ人が本当に知りたいのは、数字ではありません。「この施設で長く働き続けられるかどうか」という感覚です。
スタッフ同士の雰囲気はどうか。施設長はどんな人で、どんな考えを持っているか。新人へのフォロー体制は整っているか。長く働いているスタッフはなぜ続けているのか。入職前と後でギャップが生まれないか。
こうした情報は、求人票には書けません。だから求職者は不安を抱えたまま、応募を踏みとどまります。あるいは、とりあえず応募して「なんか思っていたのと違う」と感じ、数ヶ月で退職していきます。
採用コストを何度も支払うことになるのは、「採れないこと」よりも「合わない人を採ること」の方が大きな原因です。
採用に失敗して再び求人を出すコスト。研修や教育に投じた時間。早期退職による現場スタッフへの負担と士気の低下。これらはすべて、「最初にミスマッチを防ぐ」ことで避けられた損失です。
営業組織のマネジメントをしていた頃、採用コストを下げるために最初に取り組んだのは「早期退職の原因分析」でした。辞めた人の理由をひとつひとつ聞いていくと、ほぼ必ず出てくる言葉があります。「思っていたのと違いました」。入職前に伝えられていなかった情報が、退職の引き金になっていたのです。求人票だけでは、このミスマッチを防ぐことができません。
第4章:採用コストをゼロに近づける3つの具体的なステップ
ステップ1:ハローワークを「入口」として最大活用する
ハローワークへの掲載は無料です。費用がかからない以上、活用しない理由がありません。求人票の「その他特記事項」欄に採用LP(採用専用サイト)のURLを記載するだけで、「もっと詳しく知りたい」という求職者を自然に誘導できます。ハローワークを集客の入口として機能させ、採用LPが情報量を補う。この組み合わせが、最もコストパフォーマンスの良い採用の形です。
ステップ2:Indeed・Googleしごと検索の無料掲載を活用する
採用LPをWebに公開すると、Googleのクローラーが自動的にページをスキャンし、求人情報として認識することがあります。その結果「Googleしごと検索」に表示されるようになるケースがあります。これは完全に無料です。Indeedも自社のWebページがあれば無料枠で掲載できます。お金をかけずに複数の接点を持つことが、採用コスト削減の第一歩になります。
ステップ3:採用LP(採用専用サイト)で「施設の中身」を伝える
最も重要なステップがここです。採用LPとは、施設の魅力・スタッフの生の声・施設長のメッセージ・具体的な待遇情報をまとめた、採用専用の1ページWebサイトのことを指します。一度作れば何年でも使い続けられる採用ツールになります。重要なのは、ページを「作ること」ではなく「何を伝えるか」です。
第5章:採用LPで変わる3つのこと——「知ってもらえる」「応募してもらえる」「定着する」
変化1:「この施設で働くイメージ」が求職者に伝わる
成果が出ている採用LPに共通しているのは、「こんな方に来てほしい」というメッセージが明確であることです。「介護未経験でも大丈夫。丁寧に教えます」「子育て中の方も活躍中。シフト相談に積極的に対応しています」こうした言葉があると、求職者は自分を当てはめながら読み始めます。「誰でも歓迎」は誰にも刺さりません。ターゲットを絞ることで、その人への訴求力が格段に上がります。これも営業の基本と同じです。
変化2:施設長・スタッフの「顔」が見えることで安心感が生まれる
求人票に写真を載せることはできませんが、採用LPなら可能です。施設長の写真と一言メッセージ、スタッフの笑顔と「なぜここで働き続けているのか」というコメント——これがあるだけで、求職者の不安は大幅に解消されます。「施設長がどんな人か」「現場の雰囲気はどうか」は、応募を決める上で非常に重要な判断材料です。
変化3:給与・待遇を「具体的に」書くことでミスマッチが減る
「月給20万円〜」という表記は、求職者にとってほとんど意味をなしません。採用LPでは、例えば「夜勤手当:1回○○円」「介護福祉士手当:月○○円」「実際の手取りイメージ:月収約○○万円(新入職員の場合)」といった具体的な情報を丁寧に伝えることができます。透明性を高めることが、「合う人だけが応募する」環境を作り、早期退職を防ぐことにつながります。
第6章:採用LPを作る前に、整理しておく5つの質問
この5つに答えることができれば、採用LPに必要なコンテンツはほぼ揃います。
質問1:うちの施設で長く働いているスタッフは、なぜ続けているのか
これが採用LPの核心です。スタッフに直接聞いて、その言葉をそのまま載せることが、最も説得力のある情報になります。
質問2:どんな人に来てほしいか
「未経験でも一から教えたい」「子育てが落ち着いてきた方に長く働いてほしい」など、施設側がイメージする「来てほしい人」を具体的に言語化することが起点になります。
質問3:入職してから最初の3ヶ月で、新人をどうサポートしているか
先輩スタッフによるOJT期間・定期的な面談・相談できる環境——入職後の不安を先回りして解消できます。
質問4:施設長として、スタッフにどう向き合っているか
経営理念ではなく、「スタッフとどう向き合っているか」を等身大の言葉で伝えることが重要です。飾らない言葉の方が、読んだ人の心に届きます。
質問5:採用LP経由で応募してきた人に、最初に何を伝えたいか
採用LPを読んで応募した求職者は、すでに施設のことをある程度知っています。採用LPはあくまで入口であり、その後の面接対応とセットで効果が最大化します。
よくある質問
Q. 採用LPを作っても、応募が増えなければ意味がないのでは?
採用LPは「応募数を爆発的に増やすツール」ではありません。「応募の質を上げ、ミスマッチによる早期退職を減らすツール」です。採用コストは「採用費用を下げること」だけでなく、「定着率を上げて再採用の回数を減らすこと」でも大きく改善します。
Q. 施設の写真がないと作れませんか?
写真がなくても制作は可能です。介護・医療系のフリー素材を使って仕上げることができます。スマートフォンで撮影した写真で十分ですので、「まずは一枚だけ」から始めてみることをおすすめします。また、実際のスタッフ写真をイラスト風に加工してお使いいただくことも可能です。
Q. 制作にどのくらいの期間がかかりますか?
ヒアリングシートにご回答いただいてから、3〜5営業日で納品・Web公開まで対応しています。
まとめ:採用コストを下げるために、今日できること
介護施設の採用コストが下がらない理由は、施設の魅力が、求職者に届いていないことにあります。
介護労働安定センターの調査によると、求職者の3割以上が「仕事内容がわかりにくいから応募しない」という理由を持っています。この問題は、伝え方を変えることで解決できます。
そしてこれは、業界を超えた普遍の問題でもあります。20年間、営業組織で見続けてきたことと、介護施設の採用課題の構造は驚くほど似ています。採用コストが膨らみ続ける組織は、「条件を変えようとする」のではなく、「伝え方を変える」ことから突破口を開いていきます。
人材紹介に払う1名分(60〜120万円)と、採用LPの制作費(10〜15万円)を比べてみてください。お金をかけ続ける前に、まず「伝え方」を見直すことから始めてみてほしいです。
採用LPについてのご相談は、メールにてお気軽にどうぞ。メール完結でお答えいたします。

コメント