保育所でのアレルギー対応は、子どもの命に直結するテーマです。食物アレルギーを持つ子どもが誤食した場合、アナフィラキシーショックを起こして数分で命に関わる状態になることがあります。
保育所がアレルギー対応研修を年1回以上実施することは、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」(内閣府・文部科学省・厚生労働省)に明示されています。この記事では、研修で何を取り上げるべきか・エピペン訓練の進め方・記録の残し方を整理します。
アレルギー対応研修の根拠
アレルギー対応研修の根拠は、保育所保育指針と内閣府・文部科学省・厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」です。
ガイドラインでは、施設として次の取り組みを求めています。
- アレルギー対応の管理体制の整備(責任者・役割分担の明確化)
- 職員全員へのアレルギー対応研修の定期実施(年1回以上)
- 緊急時対応(エピペン投与・心肺蘇生)の訓練の実施
- アレルギー疾患生活管理指導表の活用
また、安全計画(第6条の3・令和5年4月施行)の中でも、プール・水遊びとともにアレルギー対応が盛り込まれるべきテーマとされています。
研修で取り上げるべき5つのテーマ
① 食物アレルギーとアナフィラキシーの基礎知識
食物アレルギーは、特定の食べ物を食べたり触れたりすることで免疫反応が起き、じんましん・嘔吐・呼吸困難などの症状が出る状態です。
アナフィラキシーは、アレルギー反応が全身に急激に起こる重篤な状態で、血圧低下・意識消失を伴うことがあります。適切な対応をしないと命に関わるため、「何を見たら(どんな症状が出たら)アナフィラキシーと判断するか」を職員全員が理解しておく必要があります。
判断の目安として、「ビジョン(症状の組み合わせ)」を研修で使うと伝わりやすいです。皮膚症状(じんましん・顔の腫れ)だけでなく、呼吸器症状(ゼーゼーする・声がかすれる)や循環器症状(ぐったりする・意識がない)が加わったらアナフィラキシーとして対応する、という判断基準を共有してください。
② 誤食の防止手順
保育所でのアレルギー事故の多くは「誤食」です。正しく食事を用意していても、配膳の段階で取り違えが起きることがあります。
誤食防止のためにどの施設でも取り組まれている手順は次のとおりです。
- アレルギー対応食は専用のトレー・食器・ラップ(名前入り)で提供する
- 提供前に担任職員が「子どもの名前・メニュー・アレルゲン」を口頭確認する(ダブルチェック)
- 配膳するときに子どもの名前を呼んで本人に渡す(隣の子の食事と取り違えない)
- アレルギー対応食の子どもが他の子の食事に手を伸ばさない座席配置にする
研修では、実際の配膳の流れをロールプレイして確認すると、言葉の説明だけより身につきやすいです。
③ エピペンの使い方
エピペン(アドレナリン自己注射薬)は、アナフィラキシーが起きたときに医師が来るまでの時間を稼ぐための薬です。エピペンを処方されている子どもが在籍している場合、緊急時に保育士が投与することがあります。
保育士がエピペンを投与することは、医師法上の「医行為」には当たらないとされています。「人命救助のためにやむを得ない措置として、保護者から依頼を受けて投与する」という整理です。ただし、エピペンの使い方・投与するシチュエーションの判断・投与後の対応を事前に研修・訓練しておくことが前提です。
訓練では、エピペントレーナー(練習用・針なし)を使って実際に投与手順を体で確認します。太ももの外側に垂直に当てて、カチッという音がするまで押し込む手順を繰り返し練習してください。
④ 緊急時の初期対応と119番通報
アナフィラキシーが疑われたときの初期対応の手順を確認します。
- 症状を確認する(皮膚・呼吸・循環の3つ)
- エピペンを使用する(処方されている場合)
- 119番通報する(「アナフィラキシーが疑われます・エピペンを使用しました」と伝える)
- 仰向けに寝かせ、足を高く上げる(意識がある場合)または回復体位にする(意識がない場合)
- 意識がない・呼吸がない場合は心肺蘇生(CPR)を開始する
- 保護者・施設長に報告する
「誰が119番通報して、誰がエピペンを投与して、誰が子どもに付き添うか」という役割分担を事前に決めておくことが重要です。緊急時に考えているとパニックになります。
⑤ 生活管理指導表の活用
アレルギー疾患生活管理指導表は、医師が記載するアレルギーの診断書のようなものです。保育所はこの指導表に基づいて対応します。
研修では、指導表の読み方・更新のルール(年1回以上の更新を保護者に依頼する)・指導表に記載がないアレルゲンが追加されたときの対応手順を確認してください。
プールシーズン前のアレルギー対応確認
プール・水遊びは、アレルギーに関係するリスクが高いシーズンです。プールの消毒剤(塩素)は、皮膚炎やアトピー性皮膚炎を悪化させることがあります。また、花粉症の子どもは水遊び中に症状が出やすい場合があります。
プールシーズンの前には、在籍する子どものアレルギー疾患生活管理指導表を確認し、プールへの参加について主治医の意見が必要な子どもがいないかを把握しておくことが望ましいです。
記録の残し方
アレルギー対応研修の記録として残すべき内容は次のとおりです。
- 実施日・内容・参加した職員の氏名
- エピペン訓練を実施した場合は訓練実施記録(日時・参加者・訓練内容)
- 確認テストを実施した場合はその結果
エピペンが処方されている子どもが在籍している場合は、年度の始めに保護者と面談して使用許可の確認をし、その記録も残しておいてください。
まとめ
保育所のアレルギー対応研修のポイントをまとめます。
- 根拠はアレルギー対応ガイドライン。年1回以上の実施が必要
- 研修で取り上げるべき内容は5つ:基礎知識・誤食防止・エピペン・緊急対応・生活管理指導表
- エピペンが処方されている子どもがいる場合は、トレーナーを使った実技訓練が重要
- 「誰が何をするか」という役割分担を事前に決めておく
- 研修と訓練の記録を残す
アレルギー対応研修の資料・確認テスト・訓練記録様式を用意したツールがあります。ぜひ活用してください。


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