この記事ではクレーンの電気的制動方式「電磁ブレーキ」と「ダイナミックブレーキ(発電制動)」の仕組みと違いを解説します。バンドブレーキ・ディスクブレーキなど機械式ブレーキの種類は▶ クレーンのブレーキ種類(バンド・ディスク・シュー)をご覧ください。
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クレーンには「電磁(摩擦)ブレーキ」と「ダイナミックブレーキ(発電制動)」の2種類のブレーキが使われています。電磁ブレーキは停電時に自動でかかる摩擦式・ダイナミックブレーキは電動機を発電機として使う制動方式で、目的・動作原理・適用場面が異なります。原動機及び電気科目の頻出テーマです。
出典:安全衛生技術試験協会 クレーン・デリック運転士(限定なし)受験案内
電磁(摩擦)ブレーキ
電磁石(ソレノイド)の力を使ってブレーキの開閉を制御する方式です。クレーンの巻き上げ機(ホイスト)に広く使われています。
動作原理
- 電源ON(ブレーキ解除):電磁石に電流が流れ、磁力でブレーキシューを引き離す(ブレーキが解除されて電動機が動く)
- 電源OFF(ブレーキ作動):電磁石の磁力がなくなり、バネの力でブレーキシューが回転部に押し付けられる(摩擦で停止・保持)
電磁ブレーキの特徴
- 停電時に自動でブレーキがかかる:電源を切ると(または停電になると)バネ力でブレーキが作動するため安全
- 荷の保持に適している:電源を切った状態でも荷を確実に保持できる
- 巻き上げ機に不可欠:クレーンのホイストには電磁ブレーキが設置される
- 「バネでブレーキON・電磁力でブレーキOFF」が基本動作
ダイナミックブレーキ(発電制動)
電動機を発電機として機能させ、発生した電気エネルギーを抵抗で熱として消費させる制動方式です。
動作原理
- クレーンが減速・停止する際、電動機への電源を切る
- 電動機が慣性で回転を続けることで発電機として機能する
- 発生した電力を外部抵抗(制動抵抗器)で消費することで制動力を生む
ダイナミックブレーキの特徴
- 速度制御(制動)に使われる:電磁ブレーキほど荷の保持力は強くない
- 発電エネルギーを熱として消費する:回生ブレーキ(電力を回収)とは異なる
- 停車時の保持には不向き:発電ブレーキは制動に使い、保持には電磁ブレーキを併用する
回生ブレーキ(参考)
ダイナミックブレーキと似た方式ですが、発生した電力を外部抵抗で熱にするのではなく、電源に戻す(回収する)方式を「回生ブレーキ」といいます。省エネ効果が高く、インバータ制御と組み合わせて使われます。
3種類のブレーキの比較
| 種類 | 動作原理 | 停電時 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 電磁(摩擦)ブレーキ | バネ力でブレーキシューを押し付ける | 自動でブレーキON(安全) | 荷の保持・停止 |
| ダイナミックブレーキ | 電動機を発電機にして抵抗で制動 | 作動しない | 減速・制動 |
| 回生ブレーキ | 電動機を発電機にして電力を回収 | 作動しない | 省エネ制動 |
試験での出題ポイント
- 電磁ブレーキ:「電源を切るとバネ力でブレーキが作動・停電時に安全」
- ダイナミックブレーキ:「電動機を発電機として使い・抵抗で熱を消費する」
- 回生ブレーキ:「電力を電源に戻す・省エネ効果が高い」
- クレーンの巻き上げ機に使われるのは「電磁ブレーキ」
試験で問われるブレーキのポイントまとめ
クレーン・デリック運転士の試験では、ブレーキの種類・動作原理・使用場面を問う問題が出ます。次のポイントを覚えておくと得点しやすいです。
| ブレーキの種類 | 動作原理 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 電磁ブレーキ(ドラム式) | 電磁石の吸引力でブレーキシューをドラムに押し付ける。停電時にスプリングで締結 | 巻上装置・横行装置の停止保持 |
| ダイナミックブレーキ(発電制動) | 電動機を発電機として動作させ、発生した電流をエネルギーとして消費して制動 | 巻下げ時の速度制御・緩やかな減速 |
| バンドブレーキ | 帯状のバンドをドラムに巻きつけて摩擦制動 | 古いクレーン・一部の補助機構 |
| ディスクブレーキ | 円板(ディスク)をパッドで挟んで摩擦制動 | 近年の高精度クレーンの制動 |
試験でよく問われる比較:「電磁ブレーキ」は停電時に自動的に締結するフェールセーフ設計。「ダイナミックブレーキ」は電気を使って速度を制御するため、停電時には制動力がなくなることを覚えておく。
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本記事は安全衛生技術試験協会の受験案内および出題基準に基づきます。受験前に安全衛生技術試験協会の公式サイト(https://www.exam.or.jp/)でご確認ください。
クレーン巻き上げ機のブレーキシステム
実際のクレーンの巻き上げ機には、電磁ブレーキが標準装備されています。荷を保持する際の安全性(停電・非常停止時にも荷が落下しない)を確保するためです。ダイナミックブレーキはこの保持機能を補完する形で組み合わせて使われます。
組み合わせ使用の例
| 状況 | 動作するブレーキ | 役割 |
|---|---|---|
| 減速中 | ダイナミックブレーキ | 速度を落とす |
| 停止・保持 | 電磁(摩擦)ブレーキ | 荷を静止した状態で保持する |
| 停電時 | 電磁(摩擦)ブレーキ自動作動 | 荷の落下を防ぐ(フェールセーフ) |
インバータ制御とブレーキの関係
近年のクレーンにはインバータ制御が広く採用されています。インバータを使用することで電動機の速度をなめらかに変化させられるため、ダイナミックブレーキを使わなくてもソフトに減速できます。
インバータ制御のクレーンでも、停止・保持には電磁ブレーキが不可欠です。インバータは速度制御に優れていますが、電源が切れれば速度制御も失われるためです。
ブレーキの点検義務
クレーン等安全規則では、ブレーキを含む安全装置の定期点検が義務付けられています。
- 作業前点検:クレーンを使用する前に、ブレーキ・クラッチ・過負荷防止装置等の機能を点検する(クレーン等安全規則第36条)
- 月次定期自主検査:1か月以内ごとに1回、ブレーキを含む各部の異常の有無を検査する(第35条)
- 年次定期自主検査:1年以内ごとに1回、各装置の機能を確認する(第34条)
試験でよく問われる問題例
次のような選択肢問題が出題されます。正しい知識を整理しておきましょう。
- 「電磁ブレーキは通電中にブレーキが解除され、停電時にブレーキが作動する」→ 正しい
- 「ダイナミックブレーキは停電時にも制動力が働く」→ 誤り(電動機への電力供給が必要)
- 「クレーンの巻き上げ機には電磁ブレーキが必要である」→ 正しい(荷の保持に必要)
- 「回生ブレーキはダイナミックブレーキと同じ原理である」→ 誤り(回生ブレーキは電力を回収・ダイナミックブレーキは熱として消費)

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