障害福祉7サービスの収支差率・稼働率・人件費率を一覧比較、経営状況の全体像

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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)および福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標(2023年度決算)をもとに、障害福祉7サービスの収支差率・稼働率・人件費率を一覧比較します。自事業所の立ち位置を把握するための参考データとして活用ください。

7サービスの主要指標一覧(令和6年度)

サービス 収支差率(平均) 収支差率(中央値) 稼働率(WAM) 人件費率 年収(平均)
放デイ 9.1% 2.7% 87.8% 64.4% 3,103万円
児発 7.8% 9.7% 80.8% 68.0% 2,213万円
GH包括型 6.9% 5.3% 85.7% 61.7% 3,990万円
生活介護 6.3% 7.9% 84.2% 69.1% 7,939万円
就労移行支援 6.0% 4.5% 69.2% 64.2% 2,878万円
GH日中型 5.1% 5.9% 86.0% 66.1% 5,803万円
短期入所 2.3% 2.8% (参考値なし) 69.2% 880万円

収支差率の平均が最も高いのは放デイ(9.1%)、最も低いのは短期入所(2.3%)です。ただし「平均」は一部の高収益事業所や赤字事業所に引っ張られやすいため、「中央値」と合わせて見ることが重要です。

収支差率「平均」と「中央値」の差が大きいサービス

放デイ(平均9.1% vs 中央値2.7%):平均と中央値の差が最大(6.4ポイント)です。一部の高収益事業所(収支差率20〜30%以上)が平均を引き上げており、多くの事業所は2〜5%程度で運営しているのが実態です。

就労移行支援(平均6.0% vs 中央値4.5%):平均と中央値の差は1.5ポイント。分布がやや均質で、全体的に低収益の状態です。

児発(平均7.8% vs 中央値9.7%):中央値が平均を上回る珍しいケースです。これは多数の事業所が平均より高い収支差率(9〜10%前後)を実現している一方、一部の大幅赤字事業所が平均を引き下げていることを意味します。

生活介護(平均6.3% vs 中央値7.9%):児発と同じく中央値が平均を上回っています。大規模な赤字事業所が平均を押し下げている構造です。

稼働率の横断比較から見る経営リスク

稼働率は収支差率に直結する指標です。各サービスの稼働率(WAM参考値)を確認します。

高稼働率グループ(85%以上):放デイ(87.8%)・GH日中型(86.0%)・GH包括型(85.7%)の3サービスは高稼働率を維持しています。

中稼働率グループ(80〜84%):生活介護(84.2%)・児発(80.8%)が該当。生活介護は稼働率84%台でも収支差率6.3%を確保しています。

低稼働率グループ(70%未満):就労移行支援(69.2%)は7サービス中で際立って低い。利用期限(2年)・就職実績への連動など、稼働率を維持しにくい構造的な要因があります。

人件費率と収支差率の関係

人件費率が低いほど収支差率が高くなる傾向がありますが、GH包括型(人件費率61.7%・収支差率6.9%)と放デイ(64.4%・9.1%)の比較が示すように、人件費率の低さが直接収支差率につながるわけではありません。

短期入所は人件費率69.2%(7サービス最高水準)で収支差率2.3%という「高人件費率・低収益」の状態です。この組み合わせは稼働率の低さ・収入規模の小ささ(880万円)が原因です。

人件費率水準 サービス 収支差率範囲
60〜64%(低) GH包括型・就労移行支援・放デイ 6.0〜9.1%
65〜68%(中) GH日中型・児発 5.1〜7.8%
69%以上(高) 生活介護・短期入所 2.3〜6.3%

人件費率が高い(69%以上)グループは収支差率が低くなりやすい傾向がありますが、生活介護は稼働率と収入規模で6.3%を維持しています。

自事業所の経営診断の手順

自事業所の収支差率・稼働率・人件費率を計算し、全国平均と比較することが経営診断の基本です。

ステップ1:自事業所の3指標を計算する
収支差率 = 収支差額 ÷ 年間収入 × 100
稼働率 = 実利用者数(延べ利用日数÷定員日数等)÷ 定員 × 100
人件費率 = 年間人件費 ÷ 年間収入 × 100

ステップ2:全国平均と比較する
自事業所のサービスの全国平均(上表)と比較し、どの指標が平均より良い・悪いかを確認します。

ステップ3:改善優先度を決める

  • 収支差率が全国平均より低い場合 → 稼働率・人件費率・加算取得の順に確認
  • 稼働率が全国平均より低い場合 → 稼働率改善が最優先(収入増が最大のレバレッジ)
  • 人件費率が全国平均より高い場合 → 費用削減(常勤・非常勤比率の見直し等)を検討
  • 全指標が全国平均並みなのに収支差率が低い場合 → 加算取得状況・その他費用の確認

収益性の高いサービスと低いサービスの特徴まとめ

収益性が高い(収支差率平均・中央値ともに安定):生活介護(中央値7.9%)・GH包括型(中央値5.3%)は平均・中央値ともに安定しています。大規模事業所での規模の経済と、加算体系が整備されていることが背景にあります。

収益性が高い(平均は高いが事業所間のばらつき大):放デイ(平均9.1%・中央値2.7%)・児発(平均7.8%・中央値9.7%)は事業所間のばらつきが大きい。うまくいっている事業所と苦戦している事業所の差が大きく、稼働率・加算取得状況の差が収支差率の差に直結しています。

収益性が低い・リスクが高い:短期入所(平均2.3%)は収入規模が小さく、改定リスクへの耐性が低いサービスです。就労移行支援(平均6.0%・稼働率69.2%)は稼働率が低く、就職実績との連動で収支が変動しやすい構造です。

自事業所のサービス種別・法人形態・規模を考慮した上で全国平均と比較することで、経営改善の方向性が明確になります。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標2023年度決算。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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