小規模多機能型居宅介護の事業所は、省令(平成18年厚生労働省令第34号)の運営基準に基づき「運営規程」を作成する義務があります。運営規程は事業所の運営方針・サービス内容・費用・緊急時の対応等を定めた文書で、指定申請時に提出し、変更があれば届け出が必要です。この記事では、運営規程に記載が必要な項目と作成上の注意点を整理します。
運営規程とは何か
運営規程は、事業所の運営に関する基本的な事項を定めた内部規程です。省令(平成18年厚生労働省令第34号)では、指定小規模多機能型居宅介護事業者は運営規程を定めることが義務付けられています。
運営規程は以下の3つの目的を持ちます。
- 利用者・家族への情報提供(重要事項説明書の基礎となる)
- 職員が遵守すべき基準の明示
- 行政(指定権者)への報告・届け出の根拠
運営規程の内容は「重要事項説明書」に転記・要約される部分が多く、実質的に事業所のサービス内容を定める文書として機能します。
運営規程に記載が必要な項目
省令が定める記載事項は以下のとおりです。
| 記載事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 事業の目的・運営方針 | 利用者の自立支援・尊厳の保持に向けた方針 |
| 従業者の職種・員数及び職務内容 | 管理者・計画作成担当者・介護職員・看護職員の員数と役割 |
| 営業日及び営業時間 | 通いの営業日・宿泊の受け入れ時間・訪問の対応時間 |
| 登録定員及び通い・宿泊の定員 | 登録定員29人以下・通い定員18人以下・宿泊定員9人以下 |
| サービスの内容及び利用料等 | 通い・宿泊・訪問の各サービス内容・月額利用料・食費等 |
| 通常の事業実施地域 | 事業所が通常サービスを提供する地域(市区町村単位等) |
| 緊急時等における対応方法 | 利用者の急変時の手順・連絡先・受診の基準 |
| 非常災害に関する具体的計画(BCP) | 地震・火災等の発生時の避難・業務継続の手順 |
| 虐待防止のための措置 | 虐待防止委員会・研修の実施体制 |
| 苦情処理の体制 | 苦情の受付窓口・対応手順・記録の管理 |
| その他運営に関する重要事項 | プライバシーの保護・身体的拘束の禁止・感染症対策等 |
定員の記載:3種類の定員を正確に書く
小規模多機能型居宅介護の定員は3種類あり、すべてを運営規程に記載します。
| 区分 | 上限 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録定員(登録者数の上限) | 29人以下 | 利用者として登録できる最大人数 |
| 通いの定員 | 18人以下かつ登録定員の3分の2以下 | 1日に通いサービスを受けられる最大人数 |
| 宿泊の定員 | 9人以下かつ登録定員の3分の1以下 | 同時に宿泊できる最大人数 |
定員は事業所の実態に合わせて設定しますが、一度設定した定員を超える利用を行うことはできません。定員を変更する場合は変更届が必要です。
費用・利用料の記載:定額外の費用を明記する
利用料(介護保険の利用者負担分)は月額定額制ですが、食費・宿泊費・日用品代等は別途自己負担となります。これらの費用は運営規程に明記することが義務付けられています。
- 通いの食費(1食あたりの金額)
- 宿泊の宿泊費(1泊あたりの金額)
- 宿泊時の食費(1食あたりの金額)
- おむつ代(実費か定額かを明示)
食費・宿泊費は省令で上限額が定められていますが、事業所が実際に徴収する額を具体的に記載する必要があります。「実費」や「別途定める」という記載は避け、金額を明示するか、金額を定めた別の規程への参照を入れます。
緊急時対応:手順と連絡先を具体的に書く
利用者が急変した際の対応手順・連絡先・受診基準は、運営規程に具体的に記載します。「医師または看護職員に連絡する」という程度の記載では不十分で、以下の内容まで踏み込むことが求められます。
- 緊急連絡先のリスト(かかりつけ医・家族・救急連絡先)
- 救急搬送の判断基準(体温・血圧・意識レベル等)
- 夜間・休日の対応体制(宿泊スタッフの連絡手順)
- 医療機関への受診同行の手順
BCP(業務継続計画):令和6年4月から義務化完了
業務継続計画(BCP)は令和6年4月から完全義務化されました。運営規程にBCPの存在と対応方針を記載し、別途BCP本体の文書を整備することが求められます。
BCPに定める内容の骨格:
- 感染症(新型インフルエンザ等)発生時の業務継続手順
- 自然災害(地震・水害等)発生時の業務継続手順
- 人員不足時のサービス提供体制の調整
- 代替施設・代替スタッフの確保方法
運営規程の変更:届け出が必要な変更と不要な変更
運営規程の内容を変更する場合、変更の内容によって手続きが異なります。
| 変更の内容 | 手続き |
|---|---|
| 定員の変更 | 変更届(事前届け出が必要な場合も) |
| 営業日・営業時間の変更 | 変更届 |
| 利用料・食費等の変更 | 変更届(重要事項説明書の改訂・利用者への説明も必要) |
| 事業所の名称・所在地の変更 | 変更届 |
| 管理者・計画作成担当者の変更 | 変更届 |
| 内部手順の小さな変更(記録様式の変更等) | 届け出不要(事業所内での改訂のみ) |
届け出が必要な変更を放置した場合、実地指導での指摘・改善勧告の対象になります。人員配置や定員など指定の根幹に関わる変更は、必ず指定権者に事前相談することをおすすめします。
運営規程と重要事項説明書の関係
利用者・家族への説明に使う「重要事項説明書」は、運営規程の内容を基礎として作成します。重要事項説明書には、サービス内容・費用・苦情対応・解除の条件等を記載し、契約前に利用者・家族への説明と署名確認が義務付けられています。
運営規程を変更した場合は、重要事項説明書も同時に改訂し、既存の利用者・家族への説明を行うことが必要です。
小規模多機能型居宅介護の開業費用・収支計画の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について(通知)
この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント