小規模多機能型居宅介護は「地域密着型サービス」のため、市区町村が指定を行います。市区町村は介護保険事業計画で必要な整備量を定めており、その量に達した地域では新規の指定申請を受け付けない「総量規制」の仕組みがあります。開業希望地域に新規参入できるかどうかは、市区町村が実施する「公募」の結果次第になります。
地域密着型サービスと市区町村指定の仕組み
居宅サービス(訪問介護・通所介護等)は都道府県が指定するため、参入規制は比較的少なく、事業所の要件を満たせば基本的に指定を受けられます。一方、小規模多機能型居宅介護を含む地域密着型サービスは市区町村が指定を行い、以下の点が異なります。
| 項目 | 都道府県指定(居宅サービス等) | 市区町村指定(地域密着型) |
|---|---|---|
| 指定権者 | 都道府県 | 市区町村 |
| 量的制限 | 原則なし | 介護保険事業計画で整備量を管理 |
| 参入のタイミング | 要件を満たせば随時 | 公募・審査があり、定員に達した地域では参入不可 |
| 他市区町村からの利用 | 居住地を問わず利用可 | 原則として市区町村内の住民のみ |
総量規制の仕組み
市区町村は3年ごとに介護保険事業計画を策定し、地域密着型サービスの整備目標量(必要な事業所数・定員数)を定めます。整備目標量に達した地域では、新たな指定申請を受け付けない「公募停止」または「指定拒否」の措置が取られます。
具体的には、以下のような状況が生じます。
- 「A市では令和7年度の整備目標が達成済みのため、次期計画(令和9年度〜)まで公募なし」
- 「B市では令和7年度に1か所の新規整備を公募予定」
公募があるかどうか・何か所の新規整備を計画しているかは、各市区町村によって大きく異なります。開業希望地域の市区町村担当課(介護保険担当)に問い合わせることが最初のステップです。
公募の流れ
市区町村が新規整備を計画している場合、一般的に以下のような流れで公募が行われます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 公募の実施 | 市区町村が公募要領・応募書類・審査基準を公表する |
| 応募書類の提出 | 事業計画書・法人の概要・資金計画等の書類を提出する |
| 書類審査・プレゼンテーション | 審査委員会で書類審査と(場合によっては)ヒアリング |
| 審査結果の通知 | 選定された事業所に結果通知 |
| 事前協議・指定申請 | 選定後に施設基準等の事前協議を経て指定申請へ |
| 指定 | 要件を満たせば市区町村から指定を受ける |
公募から開業まで、早ければ6か月〜1年程度かかります。公募の採点基準(法人の財務状況・地域とのつながり・経験・計画の実現可能性等)は市区町村が設定し、競合する応募があれば採点の高い事業者が選ばれます。
公募審査で評価されやすい要素
公募審査での評価基準は市区町村によって異なりますが、一般的に以下の要素が評価されます。
- 既存の介護・福祉事業の実績:訪問介護・デイサービス等を運営している法人は、小規模多機能への参入経験があるとみなされやすい
- 地域とのつながり:地域包括ケアシステムへの参画・民生委員・自治会等との協力関係
- 財務状況:安定した資金基盤があること
- 人材確保の見通し:計画作成担当者・看護職員等の採用・確保の見通し
- 施設整備の計画:物件の確保状況・改修計画の具体性
「事業の実績がない新規法人」での参入は審査で不利になるケースが多く、訪問介護や通所介護での運営経験を積んでから参入を目指す事業者も多くいます。
公募がない地域での参入方法
公募がない地域(整備目標が達成済み)でも、以下のケースでは参入できる場合があります。
- 既存の小規模多機能型居宅介護事業所が廃止・休止した場合の「後継者公募」
- 次期介護保険事業計画(3年ごと)での整備目標の見直しで公募再開
- サテライト型(既存の本体事業所の増設として認められる形)での参入
市区町村が次期計画(3年後)で整備目標を引き上げるかどうかは、高齢者人口の推移・既存事業所の稼働状況等によって判断されます。3年サイクルで公募の有無が変わるため、継続的に担当課に問い合わせることが必要です。
他市区町村の住民への対応
地域密着型サービスは原則として「事業所の所在する市区町村の住民」に提供するサービスです。他市区町村の住民が利用する場合は、利用者が居住する市区町村の同意が必要です(「他市区町村への指定申請」または「例外的な利用の承認」の手続き)。
広域で利用者を確保したい場合は、複数の市区町村でそれぞれ指定を取得するか、サテライト型の設置を検討することになります。
開業可能性を判断するための情報収集
希望地域への参入可能性を事前に判断するために、以下の情報を集めることをおすすめします。
- 市区町村の介護保険事業計画(公募の予定・整備目標量)
- 市区町村担当課への問い合わせ(現時点での公募状況・次期計画の見込み)
- 地域の高齢者人口・要介護認定者数の推移(市区町村の介護保険担当課のデータ)
- 既存の小規模多機能型居宅介護事業所の稼働状況(介護サービス情報公表システムで確認可)
小規模多機能型居宅介護の開業に向けた収支計画の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第78条の2・第78条の11(地域密着型サービスの指定)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 市区町村の介護保険事業計画(各市区町村の公表資料)
この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。
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