就労継続支援B型の職員配置基準、何人必要で、人件費はいくらかかるか。
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就労継続支援B型を開設・運営するにあたって、人件費は毎月の支出の中で最も大きな割合を占める固定費です。職員を1人増やすだけで月20〜30万円単位のコスト増になるため、「何人配置しなければならないか」と「適切な人員規模はどこか」を正確に把握することが、収支計画の土台になります。
この記事では、省令に定められた配置基準の読み方、常勤換算の計算方法、定員規模別の最低配置人数、月次人件費の試算例、サービス管理責任者の資格要件を整理します。
人員配置基準の根拠は省令第186条から第188条にある
就労継続支援B型の人員基準は、「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号。以下「基準省令」)の第186条から第188条に規定されています。
必要な職種は3つです。職業指導員、生活支援員、サービス管理責任者です。管理者は別途1人必要ですが、職員との兼務が認められているため、実質は3職種の配置が最低ラインになります。
| 職種 | 根拠条文 | 最低配置数 | 兼務 |
|---|---|---|---|
| 職業指導員 | 基準省令第186条第1項第1号 | 1人以上(常勤換算で生活支援員との合計が利用者数÷10以上) | 生活支援員との兼務不可・サービス管理責任者との兼務は原則不可 |
| 生活支援員 | 基準省令第186条第1項第2号 | 1人以上(同上) | 職業指導員との兼務不可 |
| サービス管理責任者 | 基準省令第187条 | 利用者60人以下で1人以上 | 直接支援業務との兼務:利用者数に応じた制限あり |
| 管理者 | 基準省令第188条 | 1人・常勤・専従 | 事業所の職務に支障がない場合は他の業務と兼務可 |
職業指導員と生活支援員については、それぞれ独立した職種として各1人以上の配置が必要なため、どれだけ小規模な事業所でも最低2人の確保が求められます。
「利用者数÷10以上」が職員の最低ラインを決める
基準省令第186条第1項は、「職業指導員及び生活支援員の総数は、常勤換算方法で、利用者の数を10で除して得た数以上とすること」と定めています。
この規定により、事業所の利用者数が増えるほど職員の配置数も増やす義務があります。計算式は以下のとおりです。
最低配置数(常勤換算)= 利用者数 ÷ 10(小数点以下は切り上げ)
ただし各1人以上の要件があるため、利用者が少ない場合でも職業指導員と生活支援員はそれぞれ最低1人ずつ必要です。
| 定員(人) | 稼働率80%時の利用者数 | 最低配置(常勤換算) | 実配置の目安 |
|---|---|---|---|
| 10人 | 8人 | 0.8以上 → 実質1人以上 | 職業指導員1人+生活支援員1人(計2人) |
| 20人 | 16人 | 1.6以上 | 職業指導員1人+生活支援員1人+非常勤0.6人分追加(計2〜3人) |
| 30人 | 24人 | 2.4以上 | 計3人構成(うち1人は非常勤可) |
| 40人 | 32人 | 3.2以上 | 計4人構成 |
| 60人 | 48人 | 4.8以上 | 計5〜6人構成 |
定員20人・稼働率80%(利用者16人)の事業所では、常勤換算1.6人以上が最低ラインです。職業指導員と生活支援員が各1人では1.0人分+1.0人分=2.0人分となり基準を満たしますが、欠勤・有給取得時に配置基準を下回るリスクがあります。実運用では3人体制(うち1人は非常勤でも可)で組むことが多いです。
常勤換算の計算方法
常勤換算は、職員の勤務時間の合計を「事業所が定める1週間の常勤の勤務時間数」で割ることで算出します。
常勤換算 = 当該職種に従事する全員の勤務時間の合計 ÷ 常勤職員の1週間の勤務時間数
例えば、事業所の常勤勤務時間が週40時間の場合:
| 職員 | 週の勤務時間 | 常勤換算値 |
|---|---|---|
| 職業指導員A(常勤) | 40時間 | 1.0 |
| 生活支援員B(週4日・1日6時間) | 24時間 | 0.6 |
| 生活支援員C(週3日・1日8時間) | 24時間 | 0.6 |
| 合計 | 88時間 | 2.2 |
この例では常勤換算2.2人となり、定員20人・稼働率80%(利用者16人)の「1.6以上」という要件を満たします。
常勤換算の計算で注意が必要な点は、職業指導員と生活支援員を「合算」して計算することです。ただし、職業指導員が0人・生活支援員が2人という構成は認められません。それぞれ1人以上の配置が前提のうえで、合計の常勤換算が利用者数÷10以上であることが必要です。
サービス管理責任者の配置数と資格要件
サービス管理責任者の配置数は、基準省令第187条で次のように定められています。
| 利用者数(前年度平均) | 必要なサービス管理責任者数 |
|---|---|
| 60人以下 | 1人以上 |
| 61人以上120人以下 | 2人以上 |
| 121人以上 | (60人を超えるごとに1人追加) |
定員20〜40人程度の一般的なB型事業所では、サービス管理責任者は1人で足ります。
サービス管理責任者になるための要件は、「相談支援従事者初任者研修(講義部分)」と「サービス管理責任者等研修」の修了が必要です。また、一定年数以上の実務経験(障害者の保健・医療・福祉等の業務従事)が求められます。実務経験の年数は従事する業務の種類によって3〜5年以上と異なります(「指定障害福祉サービス事業者等が行うべき障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づくサービスに従事する者の研修に関する基準」参照)。
開業前に「サービス管理責任者の候補者が研修修了済みかどうか」を確認することは、指定申請の要件確認として必須です。研修は都道府県が年数回実施しますが、定員が限られており受講まで数か月かかる場合があります。開業計画の段階から研修日程を押さえておく必要があります。
サービス管理責任者が直接支援業務(職業指導員・生活支援員の業務)を兼務できるかどうかは、事業所の利用者数によって異なります。利用者数が一定数を超える場合は専任が求められることがあるため、都道府県の指定権者に確認してください。
管理者は専従が原則だが兼務が認められる条件がある
管理者は基準省令第188条により、常勤・専従が原則です。ただし、「当該指定就労継続支援B型事業所の管理上支障がない場合は、当該指定就労継続支援B型事業所の他の職務に従事させることができる」とされています。
実務では、管理者が職業指導員や生活支援員を兼務しているケースが多くあります。ただし、兼務が「管理業務に支障がない範囲」かどうかは行政の解釈によって異なるため、指定申請時に都道府県・市区町村の指定権者に確認することをお勧めします。
定員20人・稼働率80%の月次人件費試算
定員20人・稼働率80%の事業所(利用者16人)を前提に、月次の人件費目安を試算します。給与水準は厚生労働省の賃金構造基本統計調査等を参考にした目安であり、実際の採用条件や地域によって異なります。
| 職種 | 人数 | 月給の目安 | 月額人件費(目安) |
|---|---|---|---|
| 管理者(兼職業指導員) | 1人(常勤) | 28〜32万円 | 約30万円 |
| 生活支援員A | 1人(常勤) | 22〜26万円 | 約24万円 |
| 生活支援員B | 1人(非常勤・週24時間) | 時給1,200円×24h×4.3週 | 約12万円 |
| サービス管理責任者(兼務) | 0.5人分(管理者等との兼務) | 上記管理者に含む | — |
| 法定福利費(社会保険料等・約15%) | — | — | 約8〜9万円 |
| 合計 | — | — | 約74〜76万円 |
この試算では、管理者がサービス管理責任者を兼務し、職業指導員の業務も担う最小構成を想定しています。実際には、利用者の支援ニーズや作業種別に応じて職員を1〜2人追加するケースが多く、月次人件費は90〜110万円程度になることもあります。
人件費は就労継続支援B型の月次支出の中で最大の費目です。定員20人・稼働率80%の場合、月次収入(訓練等給付費)は概算で70〜100万円前後になります(工賃月額区分と利用者の障害支援区分によって変動)。人件費だけで収入の80%前後を占める構造のため、稼働率の低下は即座に赤字に直結します。
人員を増やすと収支に直接影響が出る
就労継続支援B型の収支は、人件費の水準で大きく変わります。職員1人を非常勤から常勤に切り替えると月10〜15万円のコスト増になり、収支差率が数ポイント変動します。
一方、職員が少なすぎると、以下のリスクが生じます。
- 欠勤・有給取得時に配置基準を下回る:指定基準違反は行政指導・指定取消しの対象になります
- 支援の質が低下し稼働率が下がる:利用者の定着が悪化し、収入が減少します
- 職員の過重負担により離職率が上がる:採用・教育コストがさらに増加します
適切な人員規模は、定員と稼働率から逆算して決めることが基本です。「基準ギリギリで抑える」と、欠員が出た瞬間に基準違反リスクが生じます。最低でも常勤換算で基準の1.2〜1.3倍の人員を維持することが、安定した運営の目安です。
処遇改善加算は人件費を上乗せするための加算ではない
処遇改善加算は、職員の賃金改善に充てることを条件に報酬に上乗せされる仕組みです。加算を取ることで事業所の収入は増えますが、その分は職員の給与改善に充てる義務があります。処遇改善加算を「人件費を賄うための財源」と捉えることは誤りであり、加算の取得条件・計画書の作成・実績報告の提出が必要になります。処遇改善加算の計算方法については、別の記事で詳しく説明しています(就労継続支援A型・B型の処遇改善加算、何が必要で、どう計算するか。)。
人員計画は指定申請書類の中心になる
都道府県・市区町村への指定申請では、職種・氏名・資格・勤務形態・勤務時間を記載した「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」の提出が求められます。この書類で常勤換算が基準を満たしているかどうかを審査されます。
申請時点で「採用予定者」を記載することも認められていますが、指定を受けた後の開業日時点で実際に配置されていなければ指定基準違反になります。特にサービス管理責任者は研修修了が前提のため、開業日に向けて確実に研修を修了できる見通しを持って採用計画を立てる必要があります。
人員規模ごとの年間人件費の目安
事業所の規模別に、年間人件費の概算をまとめます。
| 定員 | 職員構成の目安 | 月次人件費(法定福利費込み) | 年間人件費(目安) |
|---|---|---|---|
| 10〜15人 | 職業指導員1+生活支援員1+サビ管(兼務)1 | 約55〜65万円 | 約660〜780万円 |
| 20人 | 職業指導員1+生活支援員2(うち非常勤1)+サビ管(兼務) | 約70〜80万円 | 約840〜960万円 |
| 30〜40人 | 職業指導員1〜2+生活支援員2〜3+サビ管(専任or兼務) | 約100〜130万円 | 約1,200〜1,560万円 |
定員20人の事業所で年間人件費が900万円前後になる場合、年間の訓練等給付費収入が1,000〜1,200万円程度なら収支差率はかなり厳しくなります。工賃の原資となる生産活動収入の確保と、加算の取得が収益性を左右します。
収支全体を数字で確認するには
職員配置の人数と人件費を入力したうえで、訓練等給付費収入・工賃・その他支出を合わせた収支全体がどうなるかを試算するには、開業収支シミュレーターが役立ちます。定員・稼働率・工賃月額区分・人件費を変えながら損益分岐のパターンを確認できます。
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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第186条・第187条・第188条。作成日:2026年10月。


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