訪問看護ステーションの人員基準。常勤換算2.5人の意味と管理者の要件を整理する。

訪問看護ステーションの開業には、看護職員の常勤換算が2.5人以上必要です。常勤換算とは、非常勤スタッフの勤務時間を常勤の時間に換算して合計する計算方法で、2.5人分の時間数を満たせば全員が非常勤でも原則として要件を満たせます(ただし常勤が最低1人必要)。この記事では、常勤換算の計算方法から管理者の要件、PT・OT・STの扱い、申請から開業までの流れまでを整理します。

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常勤換算2.5人の計算方法

常勤換算は、各スタッフの1週間の勤務時間を、事業所が定めた常勤の勤務時間(多くの場合、週40時間)で割って合計します。

たとえば、常勤の勤務時間を週40時間と定めている事業所の場合、週40時間働く看護師は1.0、週20時間の看護師は0.5として計算します。

スタッフ 週の勤務時間 常勤換算値
看護師A(常勤) 40時間 1.0
看護師B(非常勤) 20時間 0.5
保健師C(非常勤) 40時間 1.0
合計 — 2.5(要件を満たす)

この例では3人のスタッフで常勤換算2.5人の要件を満たしています。

注意点として、常勤換算に算入できるのは、訪問看護に従事する看護職員(保健師・看護師・准看護師)のみです。事務員や理学療法士などは算入しません(後述します)。

常勤が最低1人いる必要がある

常勤換算で2.5人に届いていても、常勤のスタッフが1人もいない場合は要件を満たしません。指定基準では「看護職員のうち常勤1人以上」と定めています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第60条)。

つまり、最低限の構成は「常勤1人+非常勤(週60時間分)」です。非常勤だけで2.5人分の時間をそろえても、常勤の1人がいなければ指定を受けられません。

開業準備を進める段階では、常勤1人の確保を最初に考えておくことが大切です。

管理者は保健師か看護師の常勤専従

管理者の要件は、看護職員の2.5人要件とは別に定められています。管理者になれるのは保健師または看護師に限られ、常勤での勤務が必要です(准看護師は管理者になれません)。

「専従」とは、管理業務に専念することを指しますが、訪問看護の管理者については、事業所の運営に支障がない範囲で他の職務と兼務することが認められています。たとえば、同じ事業所で実際に訪問業務も行いながら管理者を兼ねるケースは多くあります。

ただし、別の事業所の管理者と兼務するといった、物理的に同時にいられない状態での兼務は原則として認められません。認められる兼務の範囲は自治体によって解釈が異なることもありますので、申請前に担当窓口に確認することをお勧めします。

PT・OT・STは2.5人の中に含まれない

訪問看護ステーションでは、看護師のほかに理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が訪問することがあります。しかしこれらの職種は、看護職員の常勤換算2.5人には含まれません。PT・OT・STは「適当数」として別途必要な人数を確保すれば足りるとされています。

PT・OT・STを雇う場合の収支への影響は、看護師の訪問と報酬体系が一部異なります。たとえば介護保険では、PT・OT・STによる訪問は1回294単位(30分が上限)で算定します。また、前年度のPT等による訪問が看護職員による訪問を上回る、または緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない場合は、PT等の訪問分から1回につき8単位が減算されます。

指定申請のタイミングと開業まで

指定申請は、事業所の所在地の都道府県(または政令市・中核市)に提出します。申請から指定(開業)までの期間は自治体によって異なりますが、申請の翌々月の1日が指定日になる仕組みを採っている自治体が多くあります。

たとえば3月末に書類を提出した場合、5月1日付けで指定を受けられる、というイメージです(あくまで一例です。実際のスケジュールは申請先の窓口でご確認ください)。

開設前の準備期間には、すでに看護師を雇用して人員要件を満たした状態にしておく必要があります。この期間の人件費は収入がない中で発生するコストになるため、開業資金の試算に含めておくことが大切です。

法人格については別の記事で詳しく説明しています。合同会社・株式会社・社会福祉法人など、どの形態を選ぶかは設立コストや資本金の扱いに関わります。

→ 訪問介護・訪問看護は、個人事業主でも開業できるか。

法人格が必要で個人事業主は開業できない

訪問看護ステーションの指定を受けるには、法人格が必要です。個人事業主(個人での開業)のまま指定を受けることはできません。法人の種類は問いませんが、介護・医療分野では合同会社や株式会社を使った開業が多くみられます。

また、介護保険の訪問看護ステーションとして指定を受けると、医療保険の訪問看護ステーションとしても「みなし指定」を受けたものとして扱われます(みなし指定)。つまり、介護保険と医療保険の両方で訪問看護を提供できるようになります。別々に申請する手間はありません。

人員基準を満たした後に確認しておくこと

人員要件を満たして開設できたとしても、その後も要件を維持し続ける必要があります。たとえばスタッフが退職して常勤換算が2.5人を割り込んだ場合は、速やかに補充するか、自治体へ報告が必要になります。

また、加算によっては人員要件が別途定められているものもあります。看護体制強化加算であれば常勤看護師を一定割合以上にすること、機能強化型管理療養費(医療保険)であれば常勤看護職員の数(機能強化型1: 7人以上、2: 5人以上、3・4: 4人以上)がそれぞれ求められます。

開業時点ではこれらの加算を算定できないケースが多いですが、将来の目標として把握しておくとスタッフ計画を立てやすくなります。

まとめ:常勤換算2.5人のポイント

  • 常勤換算は「各スタッフの週の勤務時間 ÷ 事業所の常勤時間」を合計する
  • 常勤換算2.5人に加えて、常勤のスタッフが最低1人必要
  • 管理者は保健師または看護師の常勤専従(要件の範囲で兼務可)
  • PT・OT・STは2.5人にカウントしない(別途「適当数」)
  • 指定申請から開業まで、申請の翌々月1日が指定日になる自治体が多い(要確認)
  • 個人事業主は不可。法人格が必要

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参照した資料
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令 第37号)第60条(看護職員の常勤換算・管理者要件)。数値は令和8年10月時点。実際の申請要件は申請先の都道府県・政令市・中核市の窓口でご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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